第十七話 キザ男とバカ女
その日、いつものように隆志がびっくり屋で昼飯を食べていると、外からゴゴゴゴゴーと爆音が聞こえ、窓の外を見ると大型のアメ車がびっくり屋の前に横付けされていた。車から出てきたのは、真っ白なスーツ姿の男と紫のボディコンスタイルの女だった。
そのカップルはそのまま何か話しながら店の扉を開いた。
「こういう小汚い店が美味いんだぜー」と男が自慢げに話しかけている。
「やだー、なんだか臭そう」と女が後ろに続いて入って来た。
それを聞いていたはぁ~爺が、「はぁ~、今なんて言った?」と男に向かって行く。
「小汚いって言ったんだよー」
「それはわかってる、そこじゃない」と、はぁ~爺が切り返した。
「なんなんだ、この爺は?」
「ほんとね、なんだかこなき爺みたいだし、気味悪いかも」と女が続けた。
「じゃから、もう一回言ってみんしゃい」
「汚い店を汚いって言って何が悪いんだよ、この爺」と反キレの男である。
はぁ~爺が言い返す。
「汚いのはわしもわかっとるわい、その後だよ。美味いと言ったな?」
「なんか文句でもあるんかい?」
「美味いかどうかはわからんぞい、なんにしやすか?」とはぁ~爺がニヤニヤしている。
「気味悪いから、出ようよー」と女が引き気味になってしまった。
「よーし、食ってやろうじゃないかー」と男がテーブルに腰掛けた。
女は一瞬戸惑っている様子だったが、男の前に座った。
「キャ、うけるー、ニラレバ定食とかあるんだぁ」とメニューを見ながら女が笑っている。
「そうだな、普通はレバニラだよな」と男が言うと、「逆にしただけじゃん」と女が返す。
そして、メニューを見ながら、キャッキャッ笑ったり、ひそひそ話を続ける二人であった。
それを見ていた隆志は、どうみてもバカップルだなぁ、キザ男とバカ女だと内心呟いていた。
突然「じじいー」とキザ男が発した。
「はぁ~、じじいとはなんじゃ」はぁ~爺がテーブルに歩みよった。
「じじいをじじいと呼んで何が悪いのよ」ふて腐れ気味にバカ女が言い返した。
「まぁ、そーじゃが」と素直なはぁ~爺。「ところで、なんにするんじゃ?」
「俺はステーキ定食だぜ、ビッグな男になるからよー」キザ男が訳のわからない事を言う。
「じゃ、私はオムライスね、ケチャップでハートマークを描いてね」とバカ女も続けた。
「ははー、承りました」とはぁ~爺が厨房へ向かった。
「へい、おまちー」とはぁ~爺がステーキ定食をテーブルに置く。
「なかなか、いかすじゃねーかよ、じーさん」ステーキの厚さに満足したのか満足気なキザ男。
続いて「おねーちゃんの分ね」とはぁ~爺がオムライスをテーブルに置く。
「キャ、かわいいー、ハートマークが素敵だわー」とこれまたバカ女も満足気な様子である。
急に無口になり、ひたすら食べ進めるバカップルであった。
あっという間に皿の上の料理をたいらげると、キザ男がバカ女に向かい
「どうだ?、美味かったか?」と聞いた。
「そうねー、悪くはなかったかしら」とバカ女。
「ステーキも肉厚で食べがいがあったぜ、ビッグな俺にピッタシだ」
「オムライスもハートマーク入りだったし、私も嬉しかった~」
会計を済まし、出口へ向かうバカップルが何か話している。
「なっ、言った通りだったろ?」
「えっ、なにが?」
「だからさー、小汚い店が美味いって話だよ」
「ほんとねー、びっくりしちゃった」
店の外へ出た二人は、店の看板を見て「あーーー」と叫んだ。
そこには『びっくり屋』と書いてあった。




