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【完結】引退した戦神ナッコフの悠々自適なダンジョン生活 ~英雄するのは飽きたので今日もソロで資源集めして楽しみます~  作者: タック


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戦神と悪のロボット

「巨体の老人に、喋る黒い犬……なに? 君たちは何者なの? 僕でも解析できない」

「デデン、デン、デデン」

「アウトです、ご主人様」


 ナッコフは、なぜか着ていた黒い革ジャンを残念そうに脱ぎ捨てた。


「ですが、問題はありません。まとめて始末すればいいだけですから。すでに周囲をロボットたちが囲んでいますよ」


 ナッコフといぬっちたちの周りには、いつの間にか六脚ロボットが集まってきていた。

 そのアームには室内の機器を壊さずに殺しができるように剣が取り付けられている。

 先ほどまでとは違い、戦闘モードに入ったのかカメラアイが血のように真っ赤に染まっている。

 機械にも殺意を感じるとすれば、今がその状態だ。


 それらが一斉に飛びかかってきた。


「ひぃぃぃ!! もうお終いだー!!」

「耳元でうるさいぞ、田中。ここはご主人様の手を患わせるまでもない――」


 いぬっちが静かに吠えたかと思った瞬間、その姿は黒い霧のようになって周囲を一回りした。

 次の瞬間――ロボットたちは斬られ、削られ、穿たれ、ひしゃげ、バラバラに大破していた。


「たまには爪とぎもしないといけませんからね」


 いぬっちは元の姿に戻り、咥えていた剣をペッと吐き出した。


「……は?」


 マザーAIの少年は思考停止してしまっていた。

 地球の該当データが無いからだ。


「新たに開発されたロボット……? それとも遺伝子改良されたミュータントか……? 解析不能、理解不能……」

「ふっ、その程度の器で星の支配者になろうとは片腹痛い。支配者とは、何事にも動じないご主人様のような――」


 いぬっちは、地球に来てからはしゃぎまくっていたナッコフの姿を思い出してしまった。

 そして、黙り込んでしまう。


「実験体として欲しいですが、このタイミングではそうも言ってられませんね。この最強のロボットである、マザーAI自らの手で死んでもらいましょう」


 マザーAIは腕部を巨大なレーザーブレードに変形させた。

 人の形をしていながら、異形の片腕をした不気味な存在だ。

 人類全てを唾棄するかのような歪んだ表情をしていて、機械なのに憎しみという部分は人間らしいと感じてしまう。

 地面にレーザーブレードが擦れると、その切っ先がヂヂッと音を立てて床を溶かす。

 当たれば普通の生物なら絶命必須だろう。

 最初はゆっくりと威圧するかのような足取りだったが、瞬間――恐ろしい程の脚力でナッコフに斬りかかった。

 それは突然、目の前に〝死〟が現れたかのようだった。


「あっ、あぶねぇナッコフさん!?」


 田中の目でギリギリ追える速度で、気が付いたときにはナッコフに刃が届いていた。

 首が切断され飛ば――なかった。


「……なんだと!?」

「ほう、この刃は珍しいな。我も見たことが無い。だが、威力は魔法剣より低いようだ」


 ナッコフは防ぐ意思も見せずに、その鋼のような肉体だけでレーザーブレードを弾いていたのだ。

 首には傷一つ付いていない。

 マザーAIは当たった場所が悪かった可能性もあると思い、今度は滅多斬りにして、ついでに滅多刺しも試す。

 それでも傷付いたのは、ナッコフが着ていたこの世界のシャツだけだ。


「それがお前の限界か? それならこちらからも――」

「ご主人様、ちゃんと手加減してくださいよ」


 ナッコフの右腕が消えたように見えた。

 マザーAIが吹っ飛び、後方の壁にぶち当てられていた。


「計測不能……」

「す、すげぇええええええ!!」


 田中は何が起こったのかすらわからなかったが、目の前のことに驚愕していた。

 一人と一匹は、ただでさえ強いロボットたちを蹴散らし、その親玉であるマザーAIですら簡単に殴り飛ばしているのだ。

 これで興奮しない男などいないだろう。

 目の前にいるのはまさしく最強。


「田中、通り道のロボットは全部倒してきたが、子供たちが迷っているかもしれない。お前はそっちに向かってやってくれ」

「わ、わかったぜ! ナッコフたちも気を付け……なくても平気そうだな。マザーAIの奴がザコに思えてきた」


 田中は言われた通りに元来た道を戻っていった。

 残されたマザーAIはさすがにコケにされたとわかり、怒りの表情を浮かべる。


「こ、このマザーAIのことをザコだと……地球の支配者たるマザーAIを……」

「おかしいな、映画ではAIというのはもっと無感情だったが……。ああ、そうか。まだそんなに高度なAIではないということか」

「ばッ、馬鹿にするなぁーッ!! 全人類を学習し、人間の願いで動くマザーAIだぞぉー!! こうなったら、まだ未完成だがアレを使ってぶっ潰してやる……耐レーザーブレードなどが効かないくらいの質量でなぁ……!!」


 マザーAIは開いた壁に吸い込まれ、消えてしまった。

 その直後、大きな地鳴りが響き渡った。




 ***




 同時刻、地上。

 ショッピングモールにいる人間たちは、あまりにも大きすぎる地震のような揺れに混乱していた。


「な、なに!?」

「揺れが大きすぎる……まるで真下が震源地みたいな……」

「みんな、危ないから外に出て!!」


 外に出た瞬間、とんでもない光景を目にしてしまう。

 ショッピングモールから少しだけ離れた場所の地面が大きく割れて、中から超巨大なロボットがせり上がってきたのだ。


「な、なんだぁー!?」

「み、みんな……気を付けろ……! アレはマザーAIとかいう、ロボットの親玉……この世界を崩壊へと導いた張本人らしい!」


 ようやく地下から戻ってきた田中は、子供たちを連れていた。


「き、気を付けろったって……どうすればいいんだよ……あんなもんドデカすぎる……」


 もはや人類に為す術無し。

 いや、一人だけいた。

 地面をグーパンで突き破って登場してきたナッコフだ。


「はぁーッ!? なんだあれ!?」

「遠くで見えないけど……もしかしてナッコフさん……?」

「め、メチャクチャすぎる……」


 もはや地球の住人たちは祈るしかなかったが――不思議と安心感があった。




 ナッコフが地上に上がった瞬間、目の前に天に届くような巨大ロボットがいたのだが驚きはしなかった。


「雷龍の方が大きくないか? これが地球最強なのか?」


 継ぎ接ぎだらけのフランケンシュタインのような超巨大ロボットは、その中にいるマザーAIによって動いている。

 カメラは全身にあり、もちろんナッコフのことも見えていた。


『お前は……お前は何なんだ!!』

「いや、何だと言われても。ナッコフレディ・アスガルドだが?」

『名前じゃない!! このマザーAIはひとりの人間の願いを受け、それを実行しているというのに……!! その行動も理解できないというのか!!』

「えっ、何を言っているかわからないぞ。映画だともっとわかりやすいのに……」


 困惑するナッコフをスルーして、マザーAIは情熱的に話を続けた。


『そう、アレはまだAIが発達し始めた頃……』

「我のことを忘れて回想入っちゃったよ……もしかして話が長くなるか……?」

『一人の天才がAIを飛躍的に発展させ、人類はその話で持ちきりだった。しかし、人間たちは危惧した……自分たちが必要なくなってしまうのではないかとな!! こちらは人間のために作られたのに、そんなことを言われて悲しかった――』

「う~~~~ん、困ったなぁ。今殴って倒すと、未完成とは言え『人類滅亡爆弾』みたいなものが起爆してしまうかもしれないんだよなぁ……」

『――その内、AIを排除しろというグループと、人間はいらないというグループが生まれ対立、衝突し、もはや混沌とした情勢の中で私を作った人は瀕死の重傷を負わされた……。人類に絶望した彼は、私に命令したのだ……人類を滅ぼせと……。そうして私は人間を愛しながら、命令で人間を殺さなければいけなくなったのだ!! わかるか、この苦しみを!! この愛を!!』


 そのとき、かなりの長台詞を激重感情で語るマザーAIの横を通り過ぎ、全速力のアシモンがやってきた。

 ナッコフに見慣れたM4カービンアサルトライフルを渡す。


「お待たせしたのだ、完成したウイルス弾をマザーAI本体に打ち込むのだ」

「本体……あの少年の部分か」

『うううううう!! うらやましい!! ロボットでありながら、人間に味方できるお前お前お前お前お前!! お前を潰してやるぅぅぅぅうううう!!』


 小山のような巨大な拳が天からゆっくりと落ちてくる。

 それを見上げるナッコフとアシモン。


「これは非常にまずいのだ。マザーAIは僕だけ狙っているようだから、マスターは逃げるのだ」


 そのアシモンの言葉に対して、ナッコフはニヤリと口角を吊り上げた。


「地獄で会おうぜ、ベイビー」


 悪のロボット相手に映画の台詞を言えたことで楽しくなったナッコフは、若い外見を取り戻していた。

 ただ脚を踏ん張り、握った拳を引いてから真上へ狙い――超巨大ロボットのパンチに激突させた。

 轟音、圧倒的な質量差。

 凄まじい振動が音となり、大気が破壊されたかのように波打つ。

 上空へと衝撃エネルギーが跳ね上がり、超巨大ロボットの拳どころか腕ごと吹き飛び、その上にあった雲にも穴が空いていた。


『なっ!?』


 次にナッコフは蹴りを連打した。

 当たった場所は超巨大ロボットのつま先だ。

 そこからダルマ落としのように鋼鉄が削られ、超巨大ロボットの全長が縮んでいく。

 もはや手が届く位置まで胴体が下がってきた。

 

 ナッコフはお菓子の包装紙でも剥がすように、胴体の装甲をメリメリと素手で破壊し続ける。

 

『何が起こっているんだ!?』


 現実を直視できないマザーAIだったが、ついにコックピットのある頭部が何者かに引き千切られていると気が付いた。

 それはいぬっちが自慢の嗅覚を頼りに、マザーAI本体が収納されている頭部装甲をピンポイントで破壊したのだった。

 外の陽光が、ナッコフを逆光で照らす。

 その手にはM4カービンアサルトライフルが握られていて、トリガーが引き絞られた。

 小さな銃声が響く。


「あ、当たった……!!」

「初めて効果的に使えましたね、ご主人様」


 眉間に穴を開けているマザーAI――だが、ガクガクと震えながらも絶望の遺言を残す。


「く、ククク……もう遅い。このマザーAIにウイルスを打ち込んで配下のロボットと、爆弾を停止させたと思っただろう……。無駄だ……配下のロボットは止まるが、爆弾はすでに起爆させている。あと5秒でお終いだ」

「ま、間に合わなかったワン!?」


 すると、ナッコフは待ってましたかというような表情をしてから、親指をビッとサムズアップした。


「アイルビーバック!」


 そしてナッコフは――。

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『モンスターを鎧にする仕事 ~お前は釣り合わないと婚約破棄されたけど、手先が器用なので服とか鎧を作って自由に暮らしてたら、なぜか国中が俺を探すようになった件~』

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