ナッコフとSF映画
コーラをコップに注ぎ、ポップコーンの袋を開けてから、拠点の灯りを消した。
モニターに映るのは近未来の映像で、ロボットと人間の戦争だった。
高性能AIが積まれたロボットは圧倒的な性能差で、人間の反乱軍を蹂躙していく。
軍とは名前がついているが、疲弊しすぎて寄せ集めの装備を使っているボロボロの状態だ。
もはや滅びを待つだけの人類。
しかし、そこに一人の救世主が現れた。
その男は反乱軍のリーダーとなって、ついにロボットたちを追いつめる逆転の戦況を作り出した。
「ご主人様みたいだワン」
「いや、この男は個の強さではない、我が友を思い出すような人を束ねる王の力だ。我などでは到底太刀打ちできない才能だ」
ナッコフは昔を懐かしむような表情をしながら、ポップコーンを袋から取って一口。
「む、このポップコーンとやら。程よい塩味とバターの風味が良いな。それに食べてもあまり音がしなくて、映画鑑賞に向いている」
「私も一口頂きます……美味しいワンッ!!」
「しっ! 静かに……何やら話の流れが変わってきたぞ」
勝利目前だった反乱軍だが、ロボットはタイムマシンを使ってリーダーが生まれる前に戻って母親を殺そうと計画をしたのだ。
「むぅ、何たる戦略……」
「たしかにタイムマシンという物があったら、無敵のご主人様でさえ無力化されてしまいますね。……あ、この過去に送り込まれたロボット、筋肉がシュワッとしてご主人様に似てますネッガ」
その後に様々な戦いがあり、過去に送り込まれたロボットは倒された。
映画が終わって部屋が明るくなり、ナッコフは興奮した表情を見せる。
「うおお!! なんて斬新な劇なんだ!! いや、映画というのだったな!! 面白すぎた!!」
「アクション、サスペンス、サイエンスフィクション、恋愛、演技、映像美、AI問題提起、たった二時間でここまでの凝縮したものを作るとは……やりますね、地球文明……」
いぬっちも、あまりの完成度に唸りを上げた。
そこにアシモンが声をかけてくる。
「どうでしたか? これで現在の地球の状態が理解できましたか?」
「ロボットは悪! アシモン、貴様もロボットだったな……!!」
ナッコフは映画に影響されたのか、義憤でアシモンを睨み付けていた。
「あっ、忘れていたのだ。僕のことは2を観ないと感覚的に理解できないのだ」
「ロボットの貴様が言うことなど――」
「2はもっと名作なのだ」
「……まず観るか」
こうしてディスクを入れ替え、再び部屋が暗くなった。
再び未来からロボットが送り込まれ、今度は子供時代のリーダーが狙われてしまう。
そこに現れたもう一体のロボット――それは人間の味方をするロボットだった。
今回は敵が液体金属の身体でさらに強力になり、母と息子の家族愛もあり、人間の味方をするロボットと子供の友情もある。
戦い方も戦略性が増え、最後は無敵と思われた液体金属の身体を凍らせたり、溶鉱炉に落としたりして倒していた。
そして、味方ロボットとの最後の別れでエンディングを迎える。
パッと部屋が明るくなり、そこには号泣するナッコフといぬっちがいた。
「うおおおおお!! アシモンお前良い奴だったんだなぁー!! 溶鉱炉で溶けてしまうなんて可哀想だぁー!!」
「従魔の座を狙う不届き者と誤解してしまっていましたワン……」
二人はアシモンに抱きついていた。
「似たような感じで人間の味方だけど、僕は溶けてないのだ。落ち着くのだ」
「アシモン、実は身体が液体金属というのもないか? アレは敵ながら格好良かった」
「それもないのだ。普通に金属のボディなのだ。生っぽい外見にしても、それだったら人間をそのまま使った方が効率が良いのだ」
アシモンはお腹をパカッと開いて、自前のモニターを映した。
「さて、この約四時間で暗号化されたデータの解析が終わったのだ」
「ふむ? つまり?」
「持ち帰ってきたデータから色々とわかったことがあるのだ。今日、人類が絶滅させられるのだ」
脳の理解が追いつかないが、アシモンはサラッと信じられないことを言ってきている。
「な、なんだってー!? ……あ、これ漫画にあったから言ってみたかったやつ。どうぞ、話を続けて」
「マザーAI――つまり悪のロボットの親玉が今日、人類を絶滅させる爆弾を完成させる予想が出たのだ」
「爆弾? 手榴弾とかいう地球の武器みたいな感じか? それでどうやって人類を絶命させるんだ。地球を吹っ飛ばすほどのデカさと威力なのか?」
「正確には爆弾は特殊なガスの拡散を早めるものなのだ。これが爆発したら、人類が生きられない大気に改造されるのだ。難しいことはわからなくてもいいけど、人類が絶滅するのだ」
ナッコフは思案げな表情をして、いぬっちはフンッと笑った。
「私たちは地球の住人でもないし、そもそも大気が変わったくらいで死ぬほどヤワでもないからな。助ける義理も無いだろう。そうでしょう、ご主人様?」
「う……む……。たしかに最初はその通りだったのだが……それだと鈴木や田中が死んでしまうことになる……」
「そ、それは……」
「同じメシを食い、サバイバルゲームを一緒にやった仲間だ。地球のことは知らぬが、彼らのことは助けたい。ダメか? いぬっち」
いぬっちは呆れたような溜め息を吐いた後に、優しく笑った。
「ふふ、ご主人様がそのようなことを仰ってくれる日が来るとは。私は嬉しいですよ。喜んでついて行きます」
「では、急いでくださいマスター。マザーAIがいる場所はショッピングモールの地下です」
「は?」




