第4話 経験値棒
「・・・・・・今度はちゃんとしたミッションが来てくれるといいなあ」
そんな時は永遠に来ない。
そんなことを知らないシュロは1人そう願っていた。残念ながらこのミッションはセンシティブなものしか出てこないのである。
けど、実際このミッション有用であるのは事実だ。実際に成果が上がっていて収入が少し増えた。
で、まあ前まで魔物からドロップした宝物を買い取るセンターの職員さんは
「はい、買取ですか。はーい」
とかなんとか言ってちょっとやる気ない感じだったのが
「わ、こんなに倒してきたの! えらいね〜。飴ちゃんあげよっか!」
というふうに対応が劇的に変わった。ちょっと冷ための対応だったのがダダ甘の対応に変わったのである。センターにいる他の人たちもお菓子とかいっぱいくれるようになった。まあ、大体それはシュロの口には入らずにルラに与えられているけれども。
それもメリットといえばメリットである。魔道具の効果を浴びたことによるメリットだ。
ただ、もちろんデメリットもある。例えば──
「お兄ちゃーん」
「なに?」
「えっと、ちょっとあれを取ってほしいと思ったんだけど・・・・・・」
シュロを呼んでしまってから、気がついたみたいでルラの言葉はだんだん尻すぼみになっていく。
「おー、別にいいよ」
シュロも快諾してしまってから気づいた。
「・・・・・・あっ、届かない・・・・・・」
小さな女の子になったせいで、高いところにあるものが届かなくなってしまったのだ。
あと、普通に食べる量が減った。普通に小さな女の子は食べるくらいの量でお腹いっぱいになるようになった。そんな感じで、デメリットはそこそこある。まあ、最大のデメリットはなんかミッションがセンシティブなものしかないってところなのだが・・・・・・
まあ、その最大のデメリットを抜きにして次点で嫌なデメリットとしては、やっぱりあれが挙げられる。
「はあ、はあ・・・・・・お嬢ちゃんかわいいね・・・・・・僕とお菓子でも食べないかい?」
ニヤニヤしたいかにもな男性がシュロに向かってそう声をかけてくる。
(またかよ・・・・・・)
シュロはうんざりした顔をした。
そう、次点でキツいデメリットは、『そういう趣味を持った男性にめちゃくちゃ声をかけられるということだ。いや、むしろ見ようによっては一番キツいデメリットと言えるかもしれない。
シュロは女の子になってしまったものの、恋愛対象は未だ女性だ。男性から、そういう目で見られるというのはなかなかにキツいものがある。
今日も、妹と一緒に出掛けている時、怪しげな男性に声をかけられた。
「おや、かわいいお嬢ちゃんたちだね。おじちゃんと一緒にお菓子でも食べないか?」
ニヤニヤとして、向けられる視線からしてそういう目で見ていることは明白だ。
はあ、またか、とシュロはため息をつき毅然とした態度で断った。
「申し訳ないですけど、知らない人についてっちゃいけないってお父さんお母さんから教わってるので」
とりあえず子供らしい定型文で躱わす。しかし、そういうおじさんというのはしつこいものだ。
「そんなこと言わずにさ! 一緒に行こうよおじさんとさ!」
シュロが断っているというのに、おじさんはさらに食い下がってきた。
(やっぱりこういうおじさんはしつこいな・・・・・・)
シュロはちょっと困って、どうしようか、誰か通りがかりの人に助けを求めようか、とか考えていると・・・・・・
スッとルラがシュロの背後から出てきた。そのままおじさんの方へと近づいていき──
「えいっ!」
男の足を蹴りつけた。
「ぐおっ!?」
突然の衝撃に、男は足を押さえてうずくまる。
「逃げよ、お兄ちゃん!」
その隙に、そう言ってルラはシュロの手を引っ張って走り出す。シュロはルラに引っ張られるがままに走っていく。
(俺を助けてくれたのか、ルラが・・・・・・)
シュロは驚いて目を見開き、それからふっと微笑んだ。
(成長したもんだな、ルラ・・・・・・)
シュロが小さな女の子になっているということもあるが、兄を守れるくらいに成長したことも事実だろう。
それが喜ばしくもあり、寂しくもあるシュロだった。
・・・・・・と、まあ不審者おじさんの魔の手から妹に護られる兄という逆転現象を起こしたあと。
2人が家に帰るやいなや、シュロの頭の中でピコーンと通知音がなった。ミッションが来たのだ。
「なんだ・・・・・・? 今度はなんだ・・・・・・?」
シュロは座布団を枕にして寝転がりながら、ウインドウを開いてどんなミッションが来たのか見る。
「今度はまともなやつがきてるといいんだけどな・・・・・・」
シュロはそう呟きながらミッションの内容を見た。そこに書いてあったのは──
『経験値棒レベルドレインスキルを使ってレベルドレインをしよう!』
という、内容だった。
「『経験値棒レベルドレインスキル』・・・・・・?」
聞いたことがない単語だ。そもそも、そんなスキルなんてシュロは持っていないはず・・・・・・
そんなシュロの思考を見透かしたかのように、下に注釈が書いてあった。
『※ミッション達成のために必要な経験値棒レベルドレインスキルはすでに配布してあります。ステータスウインドウからご覧ください』
ステータスウインドウを開いてみると、確かにそんなスキルが追加されていた。
「いつの間に・・・・・・」
スキルの使い方は、大体このウインドウ上にあるスキルの名前の部分をタップすればふわっと頭に浮かんでくる。ミッションの内容は、これを使えということみたいなので、シュロは早速それをタップして使い方を見た。
「え・・・・・・?」
そのスキルの使い方を見て、シュロは驚愕に目を見開くのだった。
◇
所変わって。
「くそっ! 失敗してしまった!」
いかにも不審者といったおじさんが路地裏で1人悔しそうに大声で喚いていた。
このおじさんは、先ほどシュロとルラに声をかけたおじさんである。2人に逃げられてしまったことをめちゃくちゃに悔しがっていたのだ。
「別に、俺はそんな怪しくないのにな・・・・・・本当にお菓子はあげようと思ってたわけだし、あとはまあ、ちょっと言葉責めとかしてもらえればそれでいいかなって思ってただけで・・・・・・」
しかし、足掻いても仕方がない。失われたロリは二度と戻ってこない。
「はー、仕方ないな・・・・・・前に買ったメスガキ系音声作品でも聞くか」
そう呟いて、男が自分の家へ帰ろうとしていた時のことだった。
「あ、いた。やっぱりまだこの辺にいたんだ」
声が聞こえた。軽やかで可愛らしい声だ。
「!」
その声に男がバッと振り向くと、そこにはシュロが立っていた。汚い路地裏には似つかわしくない、天使のような、それでいてどこか蠱惑的で小悪魔的な雰囲気を併せ持つ美しい女の子で、男は思わず見惚れてしまった。今のシュロは妹から借りた白いワンピースを着ていて、正統派で清純に綺麗だ。
男は一瞬見惚れてしまってから、それからハッとしてシュロに笑顔で問いかけた。
「やあ、お嬢ちゃん、また会ったね。僕に何か用かい?」
シュロは説明しにくそうに、そして顔を赤らめて少し恥ずかしそうにしながら
「えっと、なんて言ったらいいかな、ええと、説明しにくいことなんだけど・・・・・・」
そう言った。男は(かわいいなあ・・・・・・)と和やかな笑顔でそれを見守る。
やがて、シュロは
「えっと、まあ言葉で説明するよりジェスチャーでやった方が早いかな」
そう言って、OKと表現する時のような、人差し指と親指の輪っかのマークを作って、えぁっと舌を出した口の前でそれを振ってみせた。
そのジェスチャーは、明らかに──
「えっ!? まさか、それってフェ──」
男が目を輝かせて言うと
「違うから! そういう卑猥なことじゃないから勘違いしないように!」
顔を真っ赤にして否定されてしまった。明らかにフェから始まってラで終わるやつのジェスチャーだったのだが、どうやら違ったらしい。同人作品とかでよくあるロリビッチ的展開がついに自分の身にも降りかかったのかと思ったのだが・・・・・・
「経験値棒! 経験値棒でレベルドレインがしたいのであって、別にそういう卑猥なことしたいわけじゃないから!」
「経験値棒・・・・・・?」
男は聞き慣れない単語に首を捻った。
さて! ここで『経験値棒レベルドレインスキル』の仕様について説明しよう!
それは普通のレベルドレインスキルと違って、スキルによって可視化された経験値、『股間に屹立する黒光りする棒』として可視化された経験値を舐めてそこからドビュっと出てくる経験値液を飲み込むことでレベルをドレインするという仕様のスキルなのだ!
「・・・・・・いやあの、それってフェ──」
「いや違うから。レベルドレインだから」
「でも、股間に屹立する黒光りする棒って、そんなの明らかに肉ぼ──」
「経験値棒だから! 経験値棒って言ったら経験値棒なの!!」
そういうことらしい。なら、なぜさっきフェ・・・・・・素振りみたいな淫猥なジェスチャーをしてしまったのか、謎だ・・・・・・。
と、に、か、く! とシュロはおじさんに詰め寄った。
「とにかく! 協力して! どうしてもそれでレベルドレインしなきゃいけないから!」
「い、いやそんな急にレベルドレインしろと言われたって──」
男は言いかけてはっと気がついた。これは、ひょっとしたらご褒美ではないかと。ロリっ娘からレベルドレインしたいと頼まれるなんて、こんな機会そうそうない。
だから男は一瞬で手のひらを返して
「いいよ!」
そう言った。この世界では、レベルってけっこう大事なもののはずなのだが・・・・・・
一方、頼んだとはいえこうもあっさりと快諾されて、シュロはちょっと引いていた。
「うわ、本当にロリコンなんだ・・・・・・」
「くっ」
その引いてる感じもちょっと興奮するおじさんなのであった。
・・・・・・
まあ、そういうことで路地裏で2人は経験値棒レベルドレインをすることになる。シュロがスキルを発動すると、レベルを可視化した黒光りする方が股間に顕現した。
「ん?」
「あ、これはその、えっと・・・・・・」
レベルを可視化した経験値棒というものは、その人のレベルがどのくらいかによって大きさが変わってくるものだ。
つまり、レベルが高いほど経験値棒が大きく、低いほど小さくなるということで──
「ええ? ちっちゃいなあ・・・・・・」
「ぐう・・・・・・!」
シュロが正直な感想を口にすると、男は悔しそうな表情をした。このおじさんは意外にもレベルが低かったみたいである。まあ、シュロも正直言ってレベルが高いわけではないのだし、この男のことをとやかく言えたものではないのだが
(・・・・・・ちょっとからかってやろうか)
シュロはそう思った。元々このおじさんはお菓子で釣って小さな女の子を自分について行かせようとしていたのだ。シュロだって連れ去られかけたのだし、少しぐらい揶揄ったっていいと思う。
そしてシュロは、イタズラっぽい笑みを浮かべてその経験値棒をつんつんと突いて言った。
「えー? おじさんの経験値棒ちっちゃ〜い。レベルひく〜い。こんなのでおれ・・・・・・私と遊ぼうとしてたのー?」
「くうっ・・・・・・」
「こんなレベルじゃちっちゃすぎてスライムにすら届かないんじゃないのー? 小学生だってもうちょっとおっきいんじゃない?」
シュロはぷぷぷ、という顔をして指尺で小さいというジェスチャーをした。
「こんなんだよこんなん! お子ちゃまレベルじゃん!」
シュロはここぞとばかりに煽る。そして、当のおじさんはというと
「くうう・・・・・・!」
なんかちょっと悦んでいた。
「なんで悦んでんの? きも・・・・・・」
「くううっ!!」
シュロが素で引くと男はさらに悦んでしまった。なんなんだよこいつは。
まあ、いい。とにかくシュロは少し屈んで、男の股間にある経験値棒に顔を近づけた。
「すんすん・・・・・・くっさあ♡」
「え・・・・・・経験値棒って臭いの?」
「え、わかんない。でもなんか臭かったから・・・・・・」
「何由来の匂いなんだそれ・・・・・・?」
まあ、とにかくくっさい経験値棒を舐めることになった。
「ちっちゃいから、口に含みやすいね」
「うう・・・・・・」
追撃のひと煽りをかましてからシュロは、はむっと経験値棒を口に含む。男の経験値棒に、シュロの口内の柔らかで温かな感覚が伝わる。どうやら、経験値棒には感覚もあるらしい。
「えっと、こんなのやったことないんだけど・・・・・・こんな感じでいいのかな?」
そう言って、シュロは舌で丁寧に、当然に拙いながらも舐め回していく。経験値棒の、亀頭、裏筋・・・・・・経験値棒の亀頭裏筋ってなんだよ。亀頭と裏筋まであったらそれはもうあれなんだよ。
まあとにかく、亀頭と裏筋をシュロの湿っていて柔らかい、小さくて温かい舌が心地よく撫で回していく。そしてシュロは、ちゃんと出来てるかどうか不安なので、上目遣いで男の表情を見守っている。
物理的な心地よさに、自分のものをしゃぶらせているという征服感、それにこんな清らかでかわいらしい女の子にそんなことをさせているという背徳感。それらが、男の背筋をぞくぞくさせるほどの快感となって脳みそのてっぺんまで貫いた。
(なんか・・・・・・ちょっと面白いかも)
そして、快感に悶える男を見て、シュロは自分が大の男をそんなふうにさせることをちょっと面白いと感じ始めていた。危ない扉を開きかけている。
シュロは、わからないながらもとりあえず(こういうふうにすればいいのかな・・・・・・)と思うことをやっていく。拙いながらも、それが男に興奮を与えていく。
「ちょ、経験値棒じゃない方の棒まで屹立させないで・・・・・・」
「いや、これは屹立しても仕方なくない?」
・・・・・・まあそんなこんなで。しばらく、その路地裏にはぴちゃぴちゃ、じゅぽじゅぽという音が鳴り響いた。
そして、ついに──
「うっ!」
「!」
その瞬間が来た。男が頂点に達してシュロの口内に経験値液が発射されたのだ。
シュロは吐き出すことなくそれを飲んだ。今回のミッションでは現場で手に入れた経験値、レベルがそのまま報酬となるのだ。
シュロはそれを飲んで、それからうえーっという表情をした。
「うえぇ・・・・・・生臭い・・・・・・まずい・・・・・・」
白濁した大量の経験値液を飲んで。
男はレベル1になってしまったのだろう。経験値棒はさらに小さくなってしまっていた。
「うわ、もっとちっちゃくなっちゃったねー。こんなの、スライムに届かないどころか、(スライムに攻撃が)挿入ってることすら気がつかないんじゃなーい?」
「うう・・・・・・」
「ざっこ〜♡」
「うう・・・・・・」
やっぱり男はどこか嬉しそうだった。
そして
「ありがとう! お小遣いあげるよ!」
「え・・・・・・? あ、どうも・・・・・・」
シュロはお小遣いをもらってしまった。3万円。
帰路にて。
(なんか、はたから見たら完全に路地裏でえっちなことしてお金をもらった図だよな、これ・・・・・・)
そう考えたシュロは、少しだけ穢されたような気分になるのだった。




