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第百四十三話 銀河の常識、ヒカリの非常識

「しかし何度来ても、スケールがバグってんなあ……」


トキオが空を見上げながら肩をすくめる。視界には、星の海がどこまでも広がっていた。


「ようこそ、再び。我らが多様性と無限を受け入れる場所へ」


そう言って出迎えたのは、哲学肌の住人・アルファ・ケンタウリだった。


「広ッ! いや知ってたけど、やっぱ“荘”って名乗っちゃダメだろ!」


「“銀河”という単位を集合住宅に当てはめたのは、メタファーの力だ」


「また出たよ理屈の星!」


アルファ・ケンタウリは得意げに説明を続ける。


「ギンガ荘は、太陽系以外の星々――恒星、巨星、連星、銀河そのものまで、様々な存在が集う共生拠点。

我々の交流目的は“知識と文化の恒星間伝播”にある」


「言い方が固ぇよ! 要は『情報交換とおしゃべり』だろ!」


「おしゃべりもまた宇宙を満たす振動だ」


「どこまで哲学にするんだよ!?」


トキオは呆れつつも、目の前に広がる光景には少し圧倒されていた。


空間が歪むほどに大きなリビング。

超新星クッションでうたた寝するベテルギウス。

重力ゼロエリアでホバリングしながら読書するアンドロメダ。

筋トレしてるリゲルの筋肉が周囲の小惑星を引き寄せていた。


「……常識が違うってこういうことか……」


「君たち“ヒカリ荘”は、空模様を調える日常に重きを置く。

だが我々は、“時空の深奥”に向かう探求者なのだよ」


「なにそれかっこいい……いやでもなんか、ちょっとだけうらやましいなぁ」


「文化的格差ではない。視点の違いだ。

たとえば、君の“ツッコミ”はギンガ荘には存在しない概念だ」


「なんで!? ツッコミなき世界とか、怖い!」


「我々の会話は、言語ではなく“光”や“周波”で行うこともある。

ツッコミという“即時的反応”は、ある意味では地球的文化の極致だろう」


「いや、解説しなくていいから!」


それでも、トキオは嬉しかった。

ヒカリ荘の常識が通じない世界で、自分の存在が“おもしろがられている”という事実。


「よーし、じゃあ今度ここで“銀河漫才”やるか!?」


「ツッコミ文化輸出計画……ふむ、面白い」


新しい知見、新しい友達、新しいボケ。

ギンガ荘は、そんなすべてに満ちていた。

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