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秘密の日記

第6章 • 第1部


さらに一週間ほどが過ぎた。


僕はララに、自分の英雄的な活躍について話してやることにした。グレイス・エヴァレインという女の子を救った話だ。


ところが、ララは嫉妬したらしく、僕のことを女たらし呼ばわりした挙げ句、金持ちの女にすぐ飛びついたとか何とか言い出した。


……え、本当にそんなふうに思ってるのか?


僕はただ自慢したかっただけなのに、まさか怒らせるとは思わなかった。


そもそも、嫉妬する理由なんてあるか?


もしかして、僕のことが好きなのか?


いやいや、まさか……。


……いや、でも。


最近のララは、どうにも様子がおかしい。


やたらと僕にくっついてくるし、僕を褒めるような甘い言葉を口にすることも増えた。


そして一昨日のこと。


僕たちは草原に寝転がって、のんびり星を眺めていた。


すると、突然――


「ヴィックは、子供が何人欲しい?」


……は?


何の話だ?


「どういうこと?」


「だから、子供が何人欲しいかって聞いてるの。私は三、四人くらい欲しいな」


「質問の意味は分かったけど、なんでそんなことを知りたいんだ?」


「うーん、なんとなく気になっただけ。気にしないで」


「そうか……」


……やっぱり、何かがおかしい。


最近のララは、怪しいどころの騒ぎじゃない。


そういえば、少し前の彼女の誕生日に、僕はララにノートをプレゼントした。


彼女はよくそのノートに何かを書いたり、絵を描いたりしている。


でも、僕には絶対に見せてくれない。


こっそり覗こうとすると、すぐに逃げ出して、ノートを胸に抱きしめるのだ。


……これはもう、何かあるに決まっている。


よし。


何が書いてあるのか、突き止めてやる。


第6章 • 第2部


翌朝、僕は早起きすると、すぐにララの家へ向かった。


本人に直接問い詰めるつもりだった。


……ただし、一つだけ考慮していなかったことがある。


この時間、ララはいつも寝ているのだ。


……はぁ。


僕は諦めて帰ろうとした。


そのとき、ふとテーブルの上に目が留まった。


……あれは!


例のノートじゃないか!


僕は近づいて、ノートを手に取った。


頭の中では、声が二つに分かれて言い争っていた。


――開くべきか、開かないべきか。


……僕、もしかして統合失調症なのか?


いや、そんなことはどうでもいい。


ララは当然、僕に中身を見られたくないはずだ。


でも、開いたところで何が起こる?


ただのノートだぞ?


……よし。


僕はノートを開いた。


どうやら、彼女はこれを日記として使っていたらしい。


毎日の出来事が書かれている。


……なんだ、そういうことか。


恥ずかしかっただけなのかもしれない。


そもそも、日記なんて個人的なものだ。見せたくないのも当然だろう。


……僕は一体、何を想像していたんだ?


僕は日記を閉じて、元の場所に戻そうとした。


そのとき――


あることに気づいた。


……待て。


ここに書かれているのは、ララの一日じゃない。


僕の一日だ。


ララは、僕が過ごした毎日を細かく記録していた。


それも、信じられないほど細かく。


彼女がその場にいなかったときの出来事まで書かれている。


……正直、ゾッとした。


前世だったら、間違いなくヤバいストーカー扱いされていただろう。


……いや、待てよ。


よく考えてみれば、文字どおり四六時中僕のそばにいる人間なら、僕が異世界から来た人間だと気づいていてもおかしくない。


それは困る。


本当に困る。


……気は進まないけど、ここに何が書かれているのか、全部読むしかないか。


僕は日記を持ち帰り、すぐに家へ向かった。


自分の部屋に閉じこもり、読み始める。


最初の数ページを読んだところで、あることに気づいた。


「……僕の一日って、かなりワンパターンだな」


いや、冗談じゃない。


他人から見たら、まるで同じ一日を繰り返しているみたいだ。


毎日毎日、同じことを繰り返す僕を見て、よく飽きなかったな……。


そんなことを考えながら、さらにページをめくっていく。


すると、途中から内容が変わった。


ララは僕を褒めちぎり、どれだけ僕が好きなのか、どれだけ僕を尊敬しているのかを書き連ねていた。


……いや、待ってくれ。


僕、そこまで惚れられるようなことをした覚えはないんだけど?


さらにページをめくる。


どうやら、ラナは娘に、いわゆる……かなり際どい話までしているらしい。


ラナが夫を亡くしてから、まだ数年しか経っていないのは知っている。もしかすると、そういう欲求が溜まっているのかもしれない。


……いや、事情は分かる。分かるけどさ。


それを自分の娘に話すのか?


僕は恐る恐る、次のページをめくった。


そこには――


……なんというか、かなり大人向けの絵が描かれていた。


「うっ……!」


危うく吐きそうになった。


それでも、僕は読み進めた。


どうやらラナは、この手の話を娘と頻繁にしているらしい。


ページをめくるたびに、絵の内容がどんどん過激になっていく。


足フェチに始まり、BDSM、さらには女体化した男性向けのストラップオン、挙げ句の果てには、知らない女の子を交えた三人での行為まで……。


……もう無理だ。


僕は日記を閉じた。


唯一の朗報は、どうやらララは僕の正体に気づいていないらしい、ということだ。


……それだけは本当によかった。


だが、この日記は処分したほうがいい。


誰かに見られたら大変なことになる。


僕は日記を持って外へ出た。


すでに夕方だった。


焚き火を起こし、その中に日記を放り込む。


……頼むから、僕の記憶も一緒に燃えてくれ。


いや、ララが僕を好きになったのかもしれない、というのは分かる。


でも、あの子はまだ子供なんだぞ……。


僕は焚き火のそばに座り、最後のページが燃え尽きていくのを眺めていた。


そして、今見たものをすべて忘れられるよう、心の底から願った。


「ヴィック、私のノート見なかった? ほら、前にプレゼントしてくれたやつ……」


背後からララの声が聞こえ、僕は飛び上がりそうになった。


僕は振り返らないことにした。


「……いや、見てないよ」


「そっか……。本当にどこかに落としちゃったのかな……。ごめんね。せっかくプレゼントしてくれたのに、なくしちゃったみたい」


……ごめん?


ごめんで済むと思ってるのか?!


こっちは精神的なトラウマを植えつけられたんだぞ!


もう本をまともに見ることすらできない。ページを見るたびに、あの絵が脳裏によみがえるんだ!


「……そういえば、そのノートには何が書いてあったの? 秘密じゃなければ教えてよ」


「ひ、秘密だ! ぼ、僕はもう帰るよ! 遅いし、ララも家に帰ったほうがいい!」


「うん……」


僕は立ち上がり、服についた土を払い落とした。


それから焚き火を消し、家へ帰った。


家に着くと、アンナが出迎えてくれた。


「ご飯、食べる?」


「いや……ちょっと気分が悪いんだ」


……あんなものを見たあとで何か食べたら、間違いなく吐く。


「治癒魔法を使おうか?」


「たぶん大丈夫……。ねえ、母さん。記憶を消す魔法ってあるの?」


「さあ……。たぶん、ないと思うけど。どうして?」


「いや、なんでもないよ……。もう寝るね。おやすみ」


僕は二階の自分の部屋へ上がり、ベッドに横になった。


ふと壁に目を向けると、そこにはララが僕の誕生日にくれた絵が飾ってあった。


……やっぱり、これも片づけておこう。


僕にはどうやら、セラピーが何回か必要らしい。

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