「出会い」
第5章 • 第1部
僕の誕生日から、さらに半年が過ぎた。
その間に、僕はなんと中級の治癒魔法を一つ覚えた!
どうやら、僕には魔法の才能があるらしい。
あ、そうだ。
まだ説明していなかったな。
この世界の魔法には、いくつかのレベルがある。
初級。
基礎。
中級。
上級。
最上級。
「中級くらいで自慢するなよ」と思うかもしれない。
でも、ここで言っておきたい。
この世界では、初級、基礎、中級の魔法を使えるだけでも、平均的な年齢――つまり20歳くらいの人間にとっては、十分な実力なんだ。
つまり――
僕は20歳くらいの男より強いってことだ。
……まあ、本当ならもっと上を目指せるんだけどな。
僕はかなりの時間をラナのところで過ごしている。
彼女は今でも、僕に高度な魔力操作とドラゴン語を教えてくれている。
そして、ようやくラナがどうしてドラゴン語を知っているのかも分かった。
話はかなり単純だった。
ラナの曾祖父は、とんでもない女好きだったらしい。
なんと、5人も妻がいた。
そのうちの一人が半竜人だった。
つまり、ラナの曾祖母だ。
半竜人は人間よりも長く生きる。
だから、亡くなる前に彼女がラナへドラゴン語を教えたらしい。
……この野郎。
どうやったら5人も妻を持てるんだ?!
いや、分かってる。
ここは異世界だし、こっちにはこっちの価値観がある。
でも、それでも5人は多すぎないか?!
とはいえ、僕もこの世界で、一人以上の相手と付き合っている男女を何度も見たことがある。
どうやら、僕の家系もその例外ではなかったらしい。
僕たちの家系の始祖には、二人の妻がいたそうだ。
そういえば、最近知ったことがもう一つある。
どうやら、昔の僕たちは貴族だったらしい。
そして、姓も持っていた。
レイヴンハート。
ただ、その姓を失うことになった原因は――ロイの父親だった。
彼は書類を偽造したり、遊び回ったり、挙げ句の果てには――
貴族の爵位まで賭け事で失ったらしい。
……どうやったら爵位を賭け事で失えるんだよ。
まあ、そんなことはともかく。
話をラナに戻そう。
最近、僕はふと疑問に思った。
ラナの夫はどこにいるんだ?
そして、聞いてみたところ――
数年前、戦争で殺されたらしい。
そう。
僕が住んでいるエルディア王国では、かなり頻繁に戦争が起きている。
そして今も、隣の王国と戦争中だ。
幸い、僕たちの住んでいる小さな村には何も起きていない。
僕にとっては、それが一番大事なことだけどな。
第5章 • 第2部
ラナとの訓練のおかげで、僕は魔力の操作能力をかなり向上させることができた。
そういえば、ラナに教えてもらった技術についても話しておこう。
正確には、魔力の流れを見る技術だ。
その名も――鷹の眼。
これを使えば、人間や動物の体内を流れる魔力を見ることができる。
さらに、ラナはもう一つの技術も教えてくれた。
猟犬の嗅覚。
これを使えば、犬のように物の匂いを嗅ぐだけで、その匂いの持ち主の痕跡を追跡できる。
そして、この技術のおかげで――
僕はロイに頼み込んで、森への討伐に連れていってもらえることになった。
魔獣や魔物を探すためだ。
僕たちはロイの仲間たちと一緒に、森の中を5時間ほど歩き続けた。
そして、ついに――
僕は匂いを嗅ぎ取った。
「いた!」
僕たちはすぐに、その痕跡を追って走り出した。
「戦闘には参加するなよ。忘れるな。お前を連れてきたのは、魔獣の場所を見つけてもらうためだからな」
「分かった!」
……神様。
僕、こいつにとってただの探知犬じゃないよな?
僕たちは、ある洞窟へたどり着いた。
中から、何かを咀嚼するような音が聞こえてくる。
そこにいたのは――
人間と魔物を混ぜ合わせたような、まるで映画『Tusk』に出てくるセイウチのような化け物だった。
そいつは――
一人の騎士を食べていた。
「うっ……!」
僕はその場で吐いた。
そのせいで、化け物に僕たちの存在を気づかれてしまった。
「ヴィック、下がれ!」
ロイがすぐに僕へ命令した。
僕は木の枝へ飛び乗った。
正直、あの化け物の姿を見るだけで気分が悪くなる。
だから、できるだけそいつを見ないようにしていた。
すると、僕の視線は地面に倒れている騎士へ向かった。
……うっ。
さっきよりもさらに吐き気がこみ上げてきた。
それでも、なんとか吐かずに耐えた。
ロイたちはすぐに魔物へ攻撃を仕掛けた。
どうやら、こういう化け物と戦うのは初めてではないらしい。
特に驚いたのは――
ロイだった。
僕は、ロイがここまで上手く人を指揮できるなんて思ってもいなかった。
そして、その化け物――Mr. Tuskが洞窟の外へ出てきたとき、僕は気づいた。
洞窟の中には、ずっと小さな女の子がいた。
年齢は9歳か10歳くらい。
赤い髪をしている。
彼女はものすごく怯えていて――
恐怖のあまり、失禁していた。
……まあ、無理もない。
ロイも彼女に気づいた。
そして、すぐに僕へ指示を出した。
僕は何も言われなくても理解した。
――あの子を助けろ。
第5章 • 第3部
僕は木の枝から飛び降り、そのまま洞窟へ向かって走った。
幸い、ロイの仲間たちが魔物の注意を引きつけてくれていた。
そのおかげで、僕は魔物の横を通り抜けることができた。
魔物は僕に気づかなかった。
僕は女の子のところまで近づいた。
「だ、誰……?」
「シーッ」
僕は後ろを振り返った。
幸い、魔物には気づかれていない。
僕は女の子を抱き上げようとした。
でも――
忘れてはいけない。
彼女は僕より4~5歳も年上だ。
僕の力だけでは、とても持ち上げられない。
仕方なく、僕は身体強化を使った。
そして彼女を抱き上げ、そのまま木の枝のところまで運んだ。
彼女の服はほとんど破れていた。
身体にはたくさんの傷がある。
幸い、どれも致命傷ではなかった。
そして、最近覚えた治癒魔法を一度使うだけで――
彼女の傷は完全に治った。
「君、名前は?」
「グ、グレイス……グレイス・エヴァレイン……」
エヴァレイン?
その姓なら、聞いたことがある。
確か、かなりの名家だったはずだ。
それに――かなり高慢な一族だったような気もする。
でも、この子はとても怯えている。
「大丈夫。全部うまくいくよ。父さんとみんななら、すぐにあいつを倒せるから……」
「うん……」
僕はロイたちのほうを見た。
どうやら、かなり上手く戦えているらしい。
魔物は動きが鈍い。
そして、ロイたちはそこを上手く利用している。
最初は、僕たちが勝てそうだと思っていた。
しかし――
仲間の一人が攻撃を受けた。
ロイにとっても、僕にとっても予想外だった。
ロイが一瞬だけそちらに気を取られる。
その瞬間――
Mr. Tuskがロイへ襲いかかった。
「父さん!」
僕は反射的に腕を伸ばした。
その直後――
僕の手から巨大な岩の塊が飛び出した。
それは魔物に直撃した。
魔物はすぐに僕へ標的を変える。
その隙を――
ロイは逃さなかった。
一瞬で距離を詰めると、たった一撃で魔物を真っ二つに斬り裂いた。
耳をつんざくような叫び声が響く。
それは、とても気味が悪くて恐ろしい声だった。
ロイは最後の一撃を加え、魔物を完全に倒した。
一方、僕は自分の手を見つめていた。
そして――
思わず笑ってしまった。
僕は嬉しさのあまり、木の枝の上で飛び跳ねた。
ついにできた!
僕は――
無詠唱魔法を使えたんだ!
僕はすぐに腕を伸ばし、もう一度同じ魔法を使おうとした。
しかし――
何も起こらなかった。
……あれ?
そのとき、ロイが僕のところへやってきた。
「戦闘には参加するなって言っただろ……。いや……」
ロイは少し黙ってから言った。
「……ありがとう」
僕は驚いた。
ロイから感謝されるなんて、予想していなかった。
でも――
ものすごく嬉しかった。
「この子、グレイス・エヴァレインだよ!」
僕は、後ろに立っていた女の子を指差した。
「エヴァレイン? なんでこんなところにいるんだ? 確か、あの家は王都に住んでいるはずだが」
「わ、私は……エレアノールの街にある剣と魔法の学院に入りたくて……。それで、森を通って行こうとしたんです。でも、私の使用人たちが、この……化け物に襲われて……」
学院?
それは興味深い。
しかも、僕たちの村から近い街にあるらしい。
……僕も、そこに入りたいな。
「そうか。心配するな。俺たちが送っていってやる」
「うん……ありがとう」
僕たちが帰ろうとしたとき、僕はロイが地面から何かのバッジのようなものを拾うのを見た。
ロイはそれを見て、どこか奇妙な表情を浮かべた。
そして、そのままポケットに入れた。
その日の夕方、グレイスは馬車で街へ送られていった。
そして僕は――
ロイが誰かに手紙を書いているのを見つけた。
僕が読めたのは、たった一つの名前だけ。
――「ガレン」
どうやら――
僕は近いうちに、叔父さんに会うことになりそうだ。
第5章 • 第4部
ガレンがやってきたのは、それから3か月後だった。
正直、もっと早く来ると思っていた。
……まあ、この世界は中世みたいなものだ。
時間がかかるのも当然か。
それはともかく――
僕はガレンと話す暇すらなかった。
彼は到着すると、すぐにロイとどこかへ行ってしまった。
僕は二人の後をつけようとした。
でも――
かなり早い段階で見つかってしまった。
それから約8時間後。
二人はようやく戻ってきた。
……いったい、何を話していたんだ?
その後、二人はロイの部屋へ入っていった。
何かを話し合っている。
僕はこっそり聞き耳を立ててみた。
でも――
何を言っているのか、まったく聞き取れなかった。
ただ――
どうやら、二人は言い争っているようだった。
それから約2時間後。
二人が部屋から出てきた。
ロイは――
いつになく真剣で、どこか不安そうな顔をしていた。
そしてガレンは、そのままどこかへ去っていった。
その日――
ロイは一言も話さなかった。




