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ネクサス・メモリア  作者: 境守凛
第三章 深紅の巡礼
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第三章 深紅の巡礼 3

 街を突っ切れないのなら、空を飛べばいい。それが鋼鉄の魔女の考えであり、エフィを連れてきたのもそのためだ。大任を託されたエフィは甲板の欄干に寄りかかっており、手にはスマホ。緊張や気負いといったものを少しも感じさせない、完全にリラックスした姿だ。巨大な弩級型を浮かせて移動させるなど、エフィには造作もないのだろう。


 流石は守護精霊。艦橋の窓からエフィを眺め、そう感心するルカは戦闘服ではなく騎士服を着ていた。甲板にいる鋼鉄の魔女、そして彼女の部下達も同様だ。


 フォビドは魔力汚染地帯だが、盈月狼(ルナ・ルプス)教団に聖域認定を外されたわけではない。加えてフォビドは救世の英雄シリウスが眠る霊廟でもあるのだ。その場所に、黒くてごつくて無愛想な戦闘服で向かうのは失礼だし無粋。そう主張するエフィに賛同する騎士は多く、鋼鉄の魔女は彼等の意見をすんなり受け入れた。騎士服も耐久性の高い生地で作られており、そこに防御魔具による魔力障壁、メイとエフィの加護がかけられる。ある程度の衝撃は耐えられるし、秋の夜山の寒さも加護があれば問題ないからだ。


「遅くなってごめんなさいっ」


 扉の開閉音と共にメイの声が聞こえた。彼女を出迎えるべくルカは振り向き――息をするのも忘れて紺碧色の瞳を見開いた。


 金糸と銀糸を丁寧に織り込んだ純白の衣、カチューシャ風に編み込んだ白銀の髪を飾るのは星のように燦めく小さな冠。精緻なデザインのイヤリングが、右耳で軽やかに揺れていた。


 導師の正装をルカは情報媒体で何度も見ている。だが間近で見るその姿はあまりに気高く、そして美しい。同じ空間にいるのを躊躇うほどの畏怖をルカは感じずにはいられなかった。それ以上に感じるのは、この導師の護衛騎士は自分なのだという喜び。しかもメイが右耳につけているのは正装用のものではない。ルカとお揃いのイヤリングなのだ。心の高揚が全身に広がって霊光(マナ)が沸き立ち、ルカはメイを見つめ続けることしかできなかった。


「ルカさん……? どうしました?」


 小走りでメイが近づいてくると、甘く柔らかな香りがルカの鼻腔を撫でた。昨晩と今朝のことを思い出してしまい、ルカは慌てて二つの出来事を頭から追い出した。


「あ、えっと……。正装、メイさんによく似合ってますね。つい見惚れちゃいました」

「えへへ、ありがとうございます。ルカさんも素敵ですよ」


 メイはふにゃっと笑い、かと思うと真顔でまじまじとルカを見つめた。どこか変なところが……とルカがひやひやしていると、メイの眉尻がしょんぼりと下がる。


「ごめんなさい。ルカさん、本当は護衛騎士の正装を着るべきなのに……」


 護衛騎士の正装は、導師の正装と同じく熟練の職人達によって丁寧に作られる。数日で完成するはずがなく、そもそもルカは一時的な護衛騎士。白を基調とした上品な騎士服を着ることはまだできない。緩く首を振り、ルカは左耳のイヤリングに触れた。


「僕にはメイさんが作ってくれたイヤリングがあります。だから、気にしないでください」


 金瞳をルカに向けたままメイは右耳のイヤリングに触れる。軽やかに揺れる装飾を確かめるように華奢な指が動き、静かに離れた。


「本当に?」

「はい。白い騎士服に相応しくなれるまで、このイヤリングを支えに頑張ります」

「イヤリングがないと、頑張れないんですか?」


 幼子のように小首を傾げるメイ。ルカは大慌てで否定した。


「あっ、いえ! イヤリングがなかったとしても、もちろん努力します……!」


 宣言し直してから、契約解消後にイヤリングは消えてしまうんじゃないかという恐ろしい想像をルカはしてしまった。消えたとしてもルカがやるべきことは変わらないのだが、それは寂しいし悲しい。


「メイさん、このイヤリングって……」

「うん……? ああ、大丈夫ですよ。消えたりしませんから」


 ほっと息を吐くルカ。メイはくすっと笑った。


「貴方が来るのを楽しみに待っていますよ、ルカさん」


 ルカが正式に護衛騎士になるのを楽しみにしている、ということだろうか。それ以外に何かあるとは思えず、ルカは心を弾ませながらメイと艦橋を出た。


 界蝕光(エクリプス)に照らされる甲板を騎士達は忙しなく行き来しており、その片隅にドローン達がいた。いつも通り腹に機銃を持つドローンが大半で、機銃代わりに弾倉や包帯などを収めたケースを抱えたものは十機。全高五十センチほどの、十五機の走行魔具蜘蛛型も背中に同じものを背負っていた。


 そして甲板の中央。鋼鉄の魔女の傍に二人の騎士が佇んでいた。


厳めしい兜、二メートル越えの長身を守る黒鉄色の鎧。手に携えた長剣と大盾、何より背中の頑強なアームに支えられた多銃身機銃は人間に扱える代物ではない。それらを纏い身じろぎ一つしない二人の騎士を、鋼鉄の魔女は誇らしげに見上げていた。


 対魔獣魔具魔鎧(まがい)型。鋼鉄の魔女が最高傑作を自負する魔具だ。 


 魔鎧型は騎士達の頼もしい仲間になるべく開発された魔具だ。頑丈な鎧に守られた魔力核が破壊されない限り魔鎧型は決して倒れず、機銃の弾は魔力で作られるため弾切れを心配する必要はない。試験運用では五体の〈熊〉と大型の〈猿〉三体を数分とかからず撃破。魔鎧型だけの部隊を新設する計画が立ち上げられるほどの、優秀な魔具だ。


 だが、それ故魔鎧型は開発コストも維持コストも高い。魔鎧型だけならまだしも、彼等が使う武器もまた魔具なのだ。一式揃えるお金があれば、各支部に充分過ぎるほどの攻撃魔具と防御魔具を配備できる。馬鹿高い魔具よりも、それらを優先するべき。そういった声に圧され、魔鎧の騎士隊計画は頓挫した。


 現存する魔鎧型は二体だけ。魔力核を抜かれ、武器までも取り上げられた彼等は、長い間ゲラタム支部の支部長室を飾るオブジェとなっていた。


 その魔鎧型が、本来の姿を取り戻している。しかもこれから赴く危険な任務に同行してくれるのだ。頼もしい仲間に、騎士達も期待の目を向けていた。


 ルカもその一人だが――実は、数時間前にも魔鎧型を見ている。リュールから霊光を受け取り、鋼鉄の魔女に呼び出されて弩級型の倉庫を訪れたときに見たのだ。


『少年が地下倉庫を片付けてくれたのだからな! お礼に先行公開してあげよう!』


 そう言って鋼鉄の魔女が扉を開けると、広い倉庫には教本でしか見たことがない二体の魔鎧型がいた。彼等の傍には見覚えのある二つのコンテナボックス。蓋が開いており、緩衝材の上で人の頭ほどもある魔力核が赤々と輝いていた。


『右が壱號で、左が弐號だ。間違えると拗ねてしまうから、気をつけたまえ』


 呆然とするルカの目の前で鋼鉄の魔女が魔鎧型に心臓を与える。すると即座に目を覚ました彼等は手足をしっちゃかめっちゃかに動かし、二体で鋼鉄の魔女を抱えて走り回った挙げ句、勢いよく壁に激突した。様子はおかしかったが、魔鎧型の動きは久しぶりに起動させたとは思えないほど滑らかなものだった。軽く剣を振り、首を巡らせ騎士達を見遣る動きにも違和感はない。武器を下ろしてメイに敬礼するという芸当まで見せてくれた。


「魔鎧型って、もう製造されないんですよね? 教団本部に配備したかったなぁ……」


 答礼を解き、メイは残念そうに呟く。魔鎧型は王立騎士団のために作られた魔具だ。いくら導師の頼みであっても、他国であるオルトゥスが購入するのは難しいはず。メイがそのことを理解していないはずがないが、ルカは彼女に合わせた。


「ドローンみたいに精霊に壊されちゃいませんか? 修理費、高いですよ」

「わたしには優秀な補佐官がいるんです。上手く遣り繰りしてくれますよ」


 意地悪な質問に、メイは自信満々の笑みで答えた。しかも即答だ。メイにそこまで信頼されているフロースはルカが目指す姿であり、越えなければならない大きな壁でもある。衛士から護衛騎士になるには、導師補佐官の試験に合格する必要があるのだ。


 そしてフロースは、メイが界蝕光を封印することに猛反対している。ルカはメイをフォビド頂上の塔まで護衛するだけではなく、フロースという最大の脅威にも立ち向かわなければならないのだ。


 導師を守るために、霊光の侵蝕を受け入れた守護精霊。狂気的な献身がフロースにどのような変化をもたらすのかを想像しただけで、ルカの胸にじわりと不安が広がった。暴走したリュールと激しい攻防を繰り広げていたときでさえ恐ろしかったのだ。あのとき以上の力を持ったフロースと渡り合えるのか。不安を少しでも誤魔化そうと、ルカは両拳を強く握りしめた。


 そんなルカの手を、華奢な手がそっと握った。柔らかな温もりが固く握った手を優しくほぐしていき、ルカはメイにされるがまま向かい合って手を繋ぐ。ルカを見上げる金瞳は導師のものではなく、幼さを残した少女のものだった。


「正直、わたしも不安でいっぱいです。魔獣は怖いし、界蝕光をちゃんと封印できるのかなって。わたしの霊光を取り込んで、すっごく強くなったフロースのことも怖いです」


 秘密をこっそり教えるような小声でメイが言葉を紡ぐ。握った手に少しだけ力が込められ、ほんの一瞬、強い怯えの感情がルカに伝わってきた。


 界蝕光を封印し、災厄を防ぐ。そんな重大な使命を担ったメイが感じるプレッシャーはルカが感じているもの以上に違いない。なのにメイはそれを押し隠して普段通りの姿でいようとしている。本当は、泣きたいくらい怖がっているのに。


「メイさん……」


 思わず名前を呼ぶ。するとメイは、陽だまりのように温かな笑みを浮かべた。


「けど、わたしにはルカさんがいます! だから大丈夫ですっ!」


 メイの言葉はルカを勇気づけるには十分過ぎるものだった。笑顔で頷き、ルカはメイの手を握り返す。不安や恐怖が完全に消えたわけではない。だがルカにはメイがいるのだ。彼女がいる限りルカの心が折れることは決してない。どんな困難にも真っ向から立ち向かうだけだ。


「メイさん。必ず貴女を守ると誓います」


 うん、と笑顔のまま頷くメイ。すると微風がメイとルカの髪を揺らした。


「お熱いとこ悪いけど、ぼくもメイに用があるんだ。退いてくれる?」


 軽い声と共にエフィが現れる。その言葉にルカが素直に従うと、


「メイ」


 愛しげに名前を呼び、エフィは導師の少女を強く抱き締めた。予想外のことにルカは驚き、嫉妬心が芽生えそうになったが、エフィの様子に暗い感情はすぐに消える。


 別れを惜しむような抱擁と、小さな声で呟かれた謝罪の言葉。メイとエフィはメイが生まれた頃――作られた頃からの仲のはずだ。フロースと同じように心配する気持ちがあるのは当然で、それでも使命を担う導師を送り出さなければならないことに苦痛を感じているのだろう。本当は一緒に山頂に――塔に同行したい。そう望んでいても、おかしくなはい。


 だがエフィはゲラタムの守護精霊だ。彼にもゲラタムの民を守るという使命がある。この非常時にそれを無視することは、守護精霊として作られた以上できるはずがない。


「ありがとうエフィ。わたしのことなら心配しないで。大丈夫だから」


 エフィの頭を撫で、あやすように優しく言葉をかけるメイ。エフィは身じろぎ一つせずメイに抱きついていたが、やがてゆっくりと離れた。


 白緑色の瞳がルカを捉える。いつになく真剣な眼差しにルカは姿勢を正した。


「帰ったらいっぱい褒めてあげる。だから最後まで頑張ってね、ルカ」


 腰羽でルカの頬を優しく撫でながらエフィは甘い声で囁く。その顔には蠱惑的な笑みが浮かんでいた。一連の動作で老若男女問わず誰もがエフィの虜になるに違いないが、ルカにはそれほど利かない。メイさんの前でなんてことを……と、ちょっと気まずく感じる程度だ。


 とはいえ、これはエフィなりの励ましだろう。一応返事をする前にメイを窺うが、彼女にエフィの行動を気にしている様子はない。それはそれで複雑に思いつつ、ルカは頷いた。


「楽しみにしておきます」


 ふふっと声を出してエフィが笑う。彼は上機嫌な声で鋼鉄の魔女を呼んだ。


「いつでも行けるよ。準備はいい?」

「特務部隊は準備万端だ。メイ、君と少年は?」

「こっちも大丈夫だよ。けどエフィ、本当に一人で弩級型を動かせるの? わたしも手伝おうか……?」


 優しい提案をするメイ。エフィは片眉を上げた。


「ぼくは守護精霊なんだぜ。これくらい余裕に決まってるでしょ。それにさ、メイはフォビドでの大役があるんだ。こんなことに霊光使わなくていいよ」


 エフィが口笛を吹く。すると夜空から無数の白い羽根がふわりと舞い降りてきた。穢れから守り、祝福するかのように降りかかる羽根に紛れて風の精霊が次々に姿を顕し、やがて三十人の風の精霊が甲板に降り立つ。友好的に微笑み、手を振る彼等は全員顕現しているが、霊光の威圧感がルカを襲うことはなかった。騎士達も驚いてはいるものの、精霊に恐怖を感じている様子はない。そんな中、鋼鉄の魔女の閉じた瞳がエフィを見下ろした。


「エフィ。これくらい余裕だと言っていなかったか?」

「うるさいなぁ。あいつら、手伝いたいってしつこいんだもん」


 むっと頬を膨らませるエフィに、一人の風の精霊がくすくす笑いながら近づいてきた。


「拗ねないでよエフィ。滅多にない機会なんだ。ぼく達にも一枚噛ませてよ」


 そっぽを向くエフィに肩を竦めると、風の精霊はルカ達に向き直った。


「こんばんは、導師。それに絆霊者(ネクサス)と魔女も。君達を手伝えるなんて光栄だよ」

「こちらこそ。みんなを怖がらせないように霊光を抑えてくれてありがとう」

「エフィに怒られたくないからね。あの子、怒るとすっごく怖いし」


 わざとらしく肩を震わせる風の精霊。エフィが「あとで覚えとけよ」と低い声を発した。


 エフィが夜空に羽ばたく。風の精霊達が追随すると、ふわりふわりと舞い続ける羽根が形を崩し、霊光粒子となって弩級型に浸透した。


 霊光の刺激を受けた弩級型が待機状態から目を覚ます。足元から伝わる鈍い駆動音と、鋼鉄の魔女が深く息を吸う音。ルカは気持ちを切り替えた。


「特務部隊の諸君! 我々の任務は、フォビド山頂に向かう導師様と護衛騎士殿の露払いを務めることだ! 諸君も知っての通り、救世の英雄シリウスの霊廟でもあるかの聖域は魔力汚染地帯となり、今や凶暴な魔獣共の巣窟となっている。変異した個体もいることだろう。危険極まりない任務だということを肝に銘じてほしい。だが恐れることはない! 我々には創世の獣を継ぐ者、そして守護精霊エフィの加護がある! 鋼鉄の名の下に集いし勇士達よ! その身に宿る力を余すことなく発揮せよ――!」


 咆哮が――仲間を信じ、必ずや任務を遂行するという強い意志が宿った誓いの咆哮が、輝く闇夜に響き渡った。





 精霊は魔力の影響を受けないが、聖域の影響は強く受ける。二十年前からフォビドは精霊を拒むようになっており、あの山脈を住処にしていた精霊達は全員ゲラタムの街に移動している。住み続けることも近づくことも不可能というわけではないが、とにかく落ち着かないのだ。エフィはそれを静かに眠りたいシリウスの意思のように感じていた。だから弩級型を運べるのは麓までだと鋼鉄の魔女に伝えており、目的地には到着済み。エフィ達の役目は終わりだ。


 あとは、このデカブツを地面に下ろすだけ。だけなのだが――


(……こいつでフォビドを登るんだっけ)


 本当に馬鹿でかい魔具だ。こいつの走行音がどれだけうるさいか、そして通った道がどうなるかをエフィはよく知っている。仕方ないのはわかっている。だが、うるさい音を立てて山道をぐちゃぐちゃにしながら救世の英雄シリウスの霊廟に向かうなんて、そんなのあまりにも失礼だし無粋だ。


 それに、フォビドに向かう彼等にはもっと相応しい移動方法がある。エフィなら――この場に集う風の精霊達なら、それができる。


「エフィ?」


 船首に立つ鋼鉄の魔女が訝しげに呼びかけてくる。側にいるメイとルカも不思議そうにエフィを見上げていた。彼等を一瞥し、エフィは弩級型の船尾に向かう。きょとんとしている同族達に一瞬だけ意識を繋ぐと、彼等は無邪気な子供のように顔を輝かせて追随してきた。


「いいね、サプライズだ!」


 メイと話していた精霊が弾んだ声を上げる。彼を適当にあしらい、エフィは右手に集う風の精霊達の霊光(マナ)を弩級型に向けて吹きかけた。白い羽根の形をしたそれが船尾に触れると、弩級型は宙に浮いたまま前進を始めた。


 予想外の出来事に甲板にいる誰もが驚き、エフィの名を呼んでいる。そのことにある種の快感を覚えつつ、エフィは鋼鉄の魔女の閉じた瞳を見つめた。船首から走ってきたにもかかわらず彼女は呼吸一つ乱していないが、顔に困惑が浮かんでいる。エフィは長い付き合いの友人にとびきりの笑顔を向けた。


「エフィ! 君、一体何をした!?」

「あはっ! 驚いてくれた? ぼく達からのサプライズだよ」

「驚いたとも! だが、このままだと弩級型は――」

「安心してよ。駅の辺りで止まるはずだから」

「止まるはず!?」 


 素っ頓狂な声を上げたのはメイだ。意外にも息を切らしていない彼女と違って、側に立つルカの呼吸は少し荒い。そんなんじゃ保たないよと、エフィは心の中で呟いた。


「エフィ……! なんで事前に言ってくれなかったの!」

「サプライズの意味、知ってる?」


 メイが何か叫んでいるが、エフィは聞こえないふりをした。周囲の同族達も「え、なに?」とか「聞こえな~い」などと言っている。遠く、ルカがメイをなだめているのが見えた。


 哮る巨獣を駆り、白翼に導かれた英雄を、エフィは静かに見送った。

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