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白銀が護りし緋の神子  作者: おやまみかげ


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9/17

四門の二つ名

*…*三連休特別更新*…*

「どこに行こうかなー!」

 白銀(しろがね)として、隊服に身を包んだ憩はご機嫌だった。

「どうせ食い物だろ、お前は」

「……そういう言い方するくせに、顔はニヤついてますよ」

「はぁ!? どこがだよ!!」

 朔夜と千歳は憩を挟むように歩いていた。

 漆黒の隊服を着た少女が、同じ隊服の青年に両脇を固められている。

 周りの視線は3人に集まっていた。

「あ! おだんご屋さん!!」

「おい!! 危ねぇから走んな!!」

 朔夜の静止も虚しく、数メートル先へ憩は走っていく。

「わぁー、美味しそう!!」

「キミ、こんなところで何をしているんだ」

 憩が声の主に目をやると、軍服姿の男たちが含みのある顔をしていた。

「何を、と申されましても。おだんごを見ておりました」

「はっ、だんごとは呑気な。その格好、特務部隊だろう?」

「そうですが。おだんごを買いたいので、もうよろしいですか?」

「チッ、だんごなどどうでもいい!! いいから来い!!」

 男は憩の腕をグイッと掴むと、その場から立ち去ろうとした。

「おい、陸軍様がこいつに何の用だ?」

 朔夜が男の手首を掴みながら問う。

 憩は状況が読めず、ただ朔夜を見つめることしかできなかった。

「その軍服……、貴様も特務部隊だな!!」

「御名答。んで、何の用だって聞いてんだよ」

 朔夜に凄まれ、男はジリっと1歩下がる。

 今にも牙を剥きそうな朔夜を見て、他の兵士が口を開く。

「……おい、もしかしてこいつ」

「……あぁ、やべぇのに手を出しちまったかもしれねぇ」

「おい!! こいつ知ってんのか!?」

 手首を掴まれた兵士が、仲間に助けを乞うような視線を送る。

「……西門の死神だろ、お前」

「西門の死神!? あの、冷酷無慈悲だと言われてる兵士か!?」

 男は憩から手を離すと、恐る恐る朔夜の顔を見る。その名の如く、死神のような冷たい目が男を射抜く。

「そこまで知ってんのか。なら話が早ぇ、さっさと失せろ」

 朔夜は男から手を離すと、その場から逃げるように去っていく兵士たちの背を見ていた。


「だから1人で先に行くなって言ってんだろ!!」

 朔夜は憩の腕についてしまった、真新しい痣を冷やしながら叱る。

 だんご屋の店先にあった長椅子に、憩と朔夜は腰をかけており、

 千歳は騒ぎが大きくならないよう、周りに説明して回っていた。

「……ごめんなさい」

「ったく、これで済んでよかったけどよ……。

 女が隊服着て歩いてたら目立つんだよ、気をつけろ」

「……うん」

 完全に落ち込んでしまった憩の頭を、朔夜がポンポンと撫でる。

 同じ陸軍とはいえ、特務部隊が対吸血鬼討伐部隊であることは伏せられている。

 要は陸軍(奴ら)にとって、特務部隊は何をやっているのか分からない異質の存在なのだ。

 そんな部隊に楚々(そそ)とした少女がいれば、ちょっかいもかけたくなるだろう。

「……(そま)さん、説明終わりました」

「助かる。ありがとな寒凪(かんなぎ)

「……いえ。憩、大丈夫?」

「はい。ご迷惑おかけして、申し訳ございません」

 憩は千歳に深々と頭を下げた。

「……同じ白銀なんだから、そんなこと気にしないで。

 元はと言えば、陸軍(あいつら)が悪いんだから」

 普段スンとしている千歳が、目尻を下げながら伝えた。

「ありがとうございます。あの、さっきの人たちが言ってた西門の死神って何ですか?」

「……杣さんの陸軍での通り名だよ」

「千歳様にもあるのですか?」

「寒凪は北門の掃除屋」

「……それ、気に入ってないのでやめてもらえません?」

「俺が死神を気に入ってるとでも思ってんのか?」

 2人はまた、バチバチと火花を散らしながら睨み合う。

「ねぇ、朔夜。お兄様と(れん)様にも、通り名があるの?」

 憩に袖を引っ張られ、朔夜の視線は千歳から憩へと移る。

「あぁ、白銀の奴らにはあるぞ。

 旭は東門の聖人、細小波(いさらなみ)は南門のゴミだな」

「……違うよ憩。本当は南門のスケベだよ」

「どっちも違えわ!!」

 3人の会話に割り入ったのは、漣本人だった。


「憩、陸軍に絡まれたって聞いたけれど、大丈夫だったかい?」

 旭が心配そうに憩に声をかける。

 千歳が説明して回った中に、相楽家の使用人がいたのだった。

「はい、朔夜が助けてくれました」

「そうか、いつも悪いね。ありがとう」

「いえ、痣が残ってしまって……」

 朔夜は冷やしていた憩の腕を旭に見せる。

「憩、分かっただろう? みんなが朔夜みたいに優しいわけじゃない。

 自分の身は自分で護るんだ。そのために護身術も習っているんだよね?」

「はい。同じ軍の方だったので、少し気を許してしまいました。今後はきちんと自衛します」

「うん、それでいい。相手が吸血鬼(奴ら)じゃないからって、油断は禁物だからね」

 こくり、と頷いた憩の頭を旭は優しく撫でる。

「んじゃあ、次は俺からだ!!

 俺の通り名をゴミとかスケベとか言ってた件について話そうぜ!!」

 漣は朔夜と千歳の肩をガッチリ押さえている。

「別にどうだっていいじゃねぇかよ、通り名なんて」

「……僕も杣さんに同意」

「おいおい、お前ら自分の通り名がひでえからって、嫉妬すんなよー!!」

 漣はガシガシと2人の頭を撫でる。

「やめろよ、気持ち悪い」

「……本当に距離感おかしい。うざい」

「はいはい、許してやんよ。かわいい後輩だからなー」

 そう笑うと、再び2人の頭を撫でる。

「お兄様、漣様の本当の通り名は何ですか?」

「……南門の噛ませ犬、だよ。

 漣本人は、南門の色男って言ってるからそう覚えてあげて」

 旭は漣に憐れんだ目を向ける。

「何だよ旭、俺が眩しすぎるってか!?」

「うん、そうだね。漣がいると明るくて楽しいよ」

「ほら、聞いたか!! やっぱり俺は色男だからな!!」

 漣は満足そうに朔夜と千歳を離す。

「クソほどうぜぇ。いこ、飯食いに行こうぜ」

「うん、お腹減った!」

「じゃあ、朔夜には悪いけれど、みんなでご飯に行こうか」

 旭が提案すると憩が嬉しそうに笑う。

「……杣さん、残念」

「うるせぇ、いこがいいならいいんだよ」

「杣は憩が1番だからな!! その心意気に免じて俺が奢ってやるよ!!」

「だってよいこ。何食いたいんだ?」

「トンカツ食べたい!!」

 憩はキラキラした目で朔夜を見る。

 先程までの落ち込んでいた様子はどこへやら、だ。

「んじゃ、支払いは任せたぜ、先輩」

「おいおい、一体いくらかかんだよ……」

 漣は財布を確認しながら、トンカツ屋へと向かうのだった。

火曜日も通常通り更新します!

次はあのキャラの紹介があるかも……!?

ブクマをしてお楽しみに⭐︎

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