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白銀が護りし緋の神子 ―金霞の五星―【完】  作者: おやまみかげ(・8・)
白銀番外編

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*白銀劇場* 〜憩ちゃんのマナー講座!?〜


 ※本編に関わるネタバレはございませんが、

 62句の前半と後半の間に挟まるお昼ごはんのお話です。




 これは、白銀のみんなが、お昼ごはんをただ食べるだけのお話――。




 晩餐会前日、最終確認を終えた8人は書斎で過ごしていた。

 若干しんみりとした空気が流れていたが、いつもの如く憩の明るい声が全てを打ち破った。


「あの、お兄様! 晩餐会はコース料理なのでしょうか? それとも、ビュッフェ形式ですか?」

「いこはまた飯の話かよ……」

「だってコース料理だったら、テーブルマナーがあるでしょ?」

「……たしかに、憩の言う通りだね」


 旭さん、和さん、憩。

 この3人は全く問題ないだろう、相楽の人間だし。

 細小波(いさらなみ)さんも一応五神族だから、教育は受けてるはず。

 杣(そま)さんも相楽で生活してたし、ぼたんさんと夕梨(ゆうり)さんは女学校に通ってた。

 

 そうなると問題は、僕だけ……?


「立食形式だそうだよ。コースだと、交流が狭まるからね」

「そうなのですね! 千歳さん、楽しみだね!」

「……そうだね」


 嬉しそうな憩とは対照的に、千歳は内心焦っていた。


 立食とはいえ、最低限のマナーはあるだろう。

 ……どうしよう、憩に迷惑をかけてしまうかもしれない。

 

「じゃあそんな憩のために、今日の食事は立食形式にしようかな」

「マジかよ!! 面白そうだな!! 俺、マナー自信ねえから助かるわー」

「俺もだな。普段、使わねぇし」


 旭の言葉に乗っかる漣(れん)と朔夜。

 それが何を意味しているのか、千歳にはわかっていた。


 旭さん、気を回してくれた。 

 それに……、2人とも優しい嘘つきだ。

 

 僕が、僕だけが恥をかかないようにしてくれてる。

 恥じてないでちゃんとしないと。


「……憩、マナー教えてくれる?」

「私でいいの?」

「……うん、憩がいい」

「わかった! お昼ごはん、楽しみだね!」

「……そうだね」


 先程の不安そうな表情ではなく、心から笑っている千歳のその顔に、男性陣も自然と顔が綻んだ。




「憩、それはダメだよ」

「も、申し訳ございません……」


 8人はビュッフェ形式で昼食を取っていた。

 サラダ、肉料理、魚料理、加えてサンドイッチやデザートなどの軽食も揃い、練習には最適の環境だったのだが――。


「憩、それもマナーが悪いよ」

「こ、これでもダメですか……?」


 自らの皿にこんもりと料理を盛る憩を、旭が注意していた。


 これでは、千歳にマナーを教えるどころではない。

 まずは本人の食欲を制限するところからだ。


「いいかい、憩。晩餐会はご飯を食べるのが目的ではないんだよ。人との繋がりを深めたり、普段お目にかかれない人たちと交流するために行われるんだ」

「……はい、申し訳ございません」

「食べたい気持ちはわかるけれど、せめてその1/4にしようね」


 旭の言葉に、憩は下唇を噛む。

 兄の言うことに納得はしているものの、その量ではとても足りないからだ。


「いこ、晩餐会はこんなに料理出てこないんだぞ。お前が腹いっぱいになるまで食ったら、他の奴ら食う分ねぇよ」

「みんなの分がなくなるほど食べないもん!!」

「じゃあ、その量はなんだよ」


 朔夜は憩の後ろに置かれていた皿を指さす。

 少女は顔を真っ赤にしながら彼の言葉を否定していたが、10枚ほどの大皿にこんもりと料理が盛られていた。

 まるで、これがビュッフェです。と、言われても納得してしまうほどに。


「こ、これは千歳さんと食べるの!!」

「……えっ? 僕?」

「憩、千歳を巻き込まないんだよ」


 妹を注意しつつも、旭は内心嬉しかった。

 今までの憩なら、兄の言葉に不満があっても、それを表に出すことはなかったからだ。

 

「まあ、いいじゃねえかよ! どうせ明日は食いたくても食えねえんだからさー」

「え? どうして、漣さん」

「俺らは四門だからさ、政治家だのなんだのに挨拶しなきゃなんねえんだよ。それが終わったと思ったら他の隊士たちが来るし、食ってる暇あんまねえんだよなー」


 夕梨の質問に答えながら、漣は面倒臭そうにガシガシと頭をかく。


 料理は美味えけど、前回もビフテキ2枚しか食えなかったなー。

 目の前に料理があんのに食えねえから、憩には相当キツイだろうな。


「なるほど。そうなると、同伴している私たちもですね」

「あら、そんなの放っておいて食事すればいいじゃない」

「いいわけねぇだろが……」


 話をまとめるぼたんに対して、我が道を行く和(なごみ)。

 明日、和のお守りをするのは朔夜だ。

 もう既に、頭が痛くてたまらない。


「ごはん……」

「だからご飯を食べに行くわけではないと言ったよね。それに、憩も白銀に所属しているということは、特務部隊の一員なんだよ?」


 ……お兄様の言う通りだ。

 いつも、みんなが優しくしてくれるから忘れちゃうけど、私も特務部隊の一員なんだ。

 総司令の孫で、東門の妹で、北門である千歳さんのペアなんだから。ちゃんとしないと。


 憩は旭の目を見つめると、にっこりと微笑んだ。

 

「そうでした! 私も特務部隊の一員です。肝に銘じて参加いたします」

「うん、いい子だね。じゃあ、今日は好きなだけ食べていいよ」

「本当ですか!?」


 旭の言葉に、憩は目をキラキラと輝かせながら飛び跳ねる。


「その代わり、きちんと千歳にマナーを教えること」

「わかっています! 千歳さん、ご飯食べよう?」

「……そうだね、食べようか」


 美味しそうにご飯を頬張る憩の横で、千歳は少しずつマナーを教わっていた。


 

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