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白銀が護りし緋の神子 ―金霞の五星―【完】  作者: おやまみかげ(・8・)
白銀番外編

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11/83

*白銀劇場* 〜とある歌姫が選ぶ場所〜


 ※第3折を読了前提の回です。

 ※62句に関する重大なネタバレが含まれます。

 ※また、体調に不安のある方は観覧をお控えください。

 ※ネタバレを避けたい方は、直ちにブラウザバックをしてください。


 






 














 ※本編に関わる重大なネタバレを含んでおります。ご注意ください。

 62句、正装で行った午後のダンス練習を描いたお話です。




 これは、鳥籠を脱した少女が、自らの居場所を見つけたお話――。





 

 午後の暖かい日が差し込むホールで、憩は千歳と踊っていた。

 大礼服に身を包んだ彼は、いつも見ている優しい彼とはまるで別人のように凛々しい。


 どうしよう……。

 千歳さんがかっこよすぎる……。


 触れる手、絡み合う視線、時折感じる息づかい――。

 まだ恋を理解していない少女には、全ての刺激が強すぎた。


「……憩、顔赤いけど大丈夫?」

「だ、だ、大丈夫!!」

「……本当? 体調、悪くない?」


 ダンス練習をしているのだから、ホールにはクラシックが流れている。

 千歳は自らの声が憩にきちんと届くよう、耳元まで顔を寄せて話していた。


 ち、ち、近い……!!


 もはや踊っていることなんて二の次だ。

 憩の頭の中は、目の前の千歳のことでいっぱいだった。


「……あ、踊れてるね」

「えっ……?」


 言われて初めてそれに気づく。

 必死に彼に合わせようとしていたときは、全く踊れなかった。

 でも今は、千歳の足を踏むことなく憩はステップを踏めていた。


「……たくさん練習してたもんね」


 何度足を踏まれても、1度も怒ることなく練習に付き合ってくれた彼。

 そんな大好きな人が、目の前で優しく微笑んでいる。


 ……違う。

 私は今、ダンスのことなんて少しも頭になかった。

 ずっと、千歳さんのことしか考えてなかった。

 私、変なのかもしれない……。


 せっかく踊れているというのに、憩の顔は曇っていた。


「……どうしたの?」

「私、変なのかもしれない……」

「……変? ちゃんと踊れてるよ?」

「そ、そうじゃなくて……」


 どうしよう、言った方がいいのかな……?

 千歳さん、不思議そうな顔してる……。

 だけど、嫌われたらどうしよう……。


「……憩、大丈夫だから教えてくれる?」

「き、嫌いになったりしない……?」

「……しない。僕、憩のこと大好きだから」


 真っ直ぐに目を見つめ、ストレートに想いを伝える千歳。


 ……千歳さんなら、大丈夫。


 憩は静かに口を開いた。


「わ、私……、踊ってるのにダンスのこと頭になくて……。

 その……、ち、千歳さんがかっこいいとかその、近いなってしか考えてなくて……」


 しどろもどろになりながら、少女は必死に伝える。

 そんな憩の言葉を聞いて、千歳は再び耳元に顔を寄せた。


「……そんな風に思ってくれてたの?」

「で、あ、だ、だから近いの……!!」

「……うん、近づいてるから。嫌?」

「い、い、嫌じゃないけど……、その……」

「……緊張する?」


 な、なんか千歳さんがおかしい!!

 すごく、その……、意地悪な気がする……!!


「き、緊張する!!」

「……そっか、嬉しい」


 えっ……? 嬉しいの……?


 その言葉に、憩は顔を向ける。

 至近距離で、千歳と目が合った。


「……顔、真っ赤」

「ち、千歳さんが意地悪するから!!」

「……ごめん、かわいくてつい」


 目を細めて微笑む彼の顔があまりにも優しくて、憩は思わず言葉を紡ぐ。


「私、千歳さんのことが誰よりも大好き」

「……ありがとう。僕も憩のことが、誰よりも大好きだよ」


 至近距離で想いを伝え合う、まだまだ青い小春たち。

 

 ホールに流れていたクラシックが、静かに2人を包み込んでいた――。


 

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