↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀が護りし緋の神子 ―金霞の五星―【完】  作者: おやまみかげ(・8・)
白銀番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/83

*白銀劇場* 〜とある泡雪が溶ける音〜


 ※第3折を読了前提の回です。

 ※62句に関する重大なネタバレが含まれます。

 ※また、体調に不安のある方は観覧をお控えください。

 ※ネタバレを避けたい方は、直ちにブラウザバックをしてください。

 







 














 ※本編に関わる重大なネタバレを含んでおります。ご注意ください。

 62句、正装で行った午後のダンス練習を描いたお話です。




 これは、とある少女との出会いによって、心が溶けた青年のお話――。





 

 午後の暖かい日が差し込むホールで、千歳は憩と踊っていた。

 薄紅のドレスに身を包んだ少女は、眩しいくらいに綺麗で愛おしい。


 ……かわいい。何度見てもかわいい。

 憩のような子が、僕を好きでいてくれるなんて。

 

 小さな手、揺れる金色の瞳、憩が動くたびに立つ香り――。

 ダンスなんかより、千歳の意識はそちらに集中していた。

 だからこそ、少女の顔がほんのりと淡く染まっていることに、今の今まで気づけなかった。


「……憩、顔赤いけど大丈夫?」

「だ、だ、大丈夫!!」

「……本当? 体調、悪くない?」


 ダンス練習をしているのだから、ホールにはクラシックが流れている。

 千歳は自分の声が通りにくいことも、小さいことも理解していた。

 だからこそ、きちんと憩に届くよう、耳元まで顔を寄せて声をかけた。


 ……すごく、いい匂いがする。

 それに、今日の憩は――。


「……あ、踊れてるね」

「えっ……?」


 少女は驚いたような声を上げる。

 練習中、千歳は散々憩に足を踏まれ続けていたが、今日は問題なくステップを踏めていた。


「……たくさん練習してたもんね」


 僕が1番近くで見てきた。

 誰もいない早朝のホールで、一緒に練習したこともあった。

 夜遅くまで、旭さんや和(なごみ)さんと練習してたことも知ってる。

 それなのに……。

 

 せっかく踊れているというのに、憩の顔は曇っていた。


「……どうしたの?」

「私、変なのかもしれない……」

「……変? ちゃんと踊れてるよ?」

「そ、そうじゃなくて……」


 ……視線が泳いでる。

 何か言いにくいことがあるときの、憩の癖だ。

 

「……憩、大丈夫だから教えてくれる?」

「き、嫌いになったりしない……?」


 ……そんなの、なるわけがない。

 むしろ、どんどん好きになってるのに。

 

「……しない。僕、憩のこと大好きだから」


 その言葉に、憩の金色の瞳が大きく見開く。

 安心したかのように、少女は静かに口を開いた。


「わ、私……、踊ってるのにダンスのこと頭になくて……。

 その……、ち、千歳さんがかっこいいとかその、近いなってことしか考えてなくて……」


 ……何それ、かわいすぎない?

 憩はそうやって、いつも無自覚に僕を煽ってくる。

 どれだけ我慢してるか、少しわかってほしいくらいなのに……。

 

 千歳は再び憩の耳元に顔を寄せた。

 今度は少し、意地悪をしようと思いながら――。


「……そんな風に思ってくれてたの?」

「で、あ、だ、だから近いの……!!」

「……うん、近づいてるから。嫌?」

「い、い、嫌じゃないけど……、その……」

「……緊張する?」


 どんどん赤くなっていく憩の反応を、千歳は少し楽しんでいた。


「き、緊張する!!」

「……そっか、嬉しい」

 

 そう伝えると、憩が顔を僕に向けた。

 

「……顔、真っ赤」

「ち、千歳さんが意地悪するから!!」

「……ごめん、かわいくてつい」


 ……本当にかわいすぎる。

 桜の妖精なんて、かわいいものじゃないかもしれない。

 桜の天使……? いや、桜の女神か……?


 そんなことを考えてると、憩が口を開いた。


「私、千歳さんのことが誰よりも大好き」


 ……は? 何それ。

 誰よりも、僕のことが大好き……?

 総司令よりも? 旭さんよりも?

 和さんよりも? 杣(そま)さんよりも?

 細小波(いさらなみ)さん……には負ける気はしないけど。

 ぼたんさんよりも? 夕梨(ゆうり)さんよりも?


 僕が、憩の1番てこと?

 何それ、何それ、何それ。

 嬉しいなんて言葉じゃ表せない。


 だって、僕も憩のこと――。

 

「……ありがとう。僕も憩のことが、誰よりも大好きだよ」


 至近距離で想いを伝え合う、まだまだ青い小春たち。

 

 ホールに流れていたクラシックが、静かに2人を包み込んでいた――。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。