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白銀が護りし緋の神子 ―金霞の五星―【完】  作者: おやまみかげ
白銀番外編

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7/83

*白銀劇場* 〜とある乙女の隠し事〜


 ※本編に直接関わるネタバレはありません。

 ほんのり47句の女子会に繋がります。

 51句まで読み終わっていると、ちょっと感慨深い?かも。

 

 

 これは、とある芸花魁(アイドル)が、ずっと閉じ込めてきた想いのお話――。




「朔夜! 見てみて!」

「うん? 何描いてんだ、今度は……」


 彼が相楽家にやってきて数ヶ月。

 今日も15歳の朔夜は、10歳の憩の相手をしていた。

 許可が下りない限り外に出られない少女は、外の世界を知る青年が大好きだった。


「あのね! お庭の桜の木を描いたの!」

「桜の木?」

「うん! ここにね、お兄様とお姉様と朔夜と私がいるの!」

「花見でもしてんのか?」


 嬉しそうに絵を見せる憩を、朔夜は優しい眼差しで見つめる。


「憩ちゃん、今日も朔夜くんにべったりね」


 そんな2人の様子を、(なごみ)は陰から覗き見ていた。


 朔夜くんに懐くのも無理ないわね。

 口は悪いけれど、なんだかんだ優しいもの。

 お兄様も私も忙しくて、あまり相手をしてあげられないし……。


 この頃、和は芸花魁(アイドル)として人気が出たばかり。

 この機を逃すまいと、午前中は芸事を、午後は仕事と動き回っていた。

 そうなれば、幼い妹はどうしても1人で過ごすことになる。

 憩が何よりも大切な彼女にとって、朔夜の存在はとてもありがたいものだった。


「でも、いいなぁ憩ちゃんは。

 お兄様からも朔夜くんからも大事にされて……」


 絵を描いただけで褒められて、喜ばれて。

 そこにいて、笑っているだけでみんなを笑顔にできて。

 憩ちゃんがいるだけで、みんなが幸せそうで――。


 ……私だって。

 

 本当は、もっとお兄様に甘えたい。

 本当は、もっと朔夜くんとお話したい。

 本当は、もっと思っていることを伝えたい。


「……憩ちゃんが羨ましい」


 気づいたときには、そんな言葉が口から出ていた。


「でも、私はお姉様だから……」


 お兄様と決めた。憩ちゃんを護るって。

 そのためならなんだってするって。そう、決めたの――。


 


「お姉様、どうされました?」


 心配そうに顔を覗き込むのは、16歳になったかわいい妹。

 何よりも大切で護りたい、目に入れても痛くない最愛の子。


「ごめんなさいね、少し考えごとをしていて」

「いえ! あのお姉様……。

 千歳さん、どちらが好みでしょうか……」


 2種類の袴を当てながら、恥ずかしそうに問われる。

 明日、憩は千歳と博物館へ行く約束をしていた。

 今はそれに向けて、作戦会議の真っ只中だった。

 

「うーん、博物館でしょう? 濃い色は合わないんじゃないかしら?」

「なるほど! では、これはやめておきます!」


 姉の助言を受け、憩は嬉しそうに服を選んでいる。

 

 どうして、こんなときに昔のことを……。

 明日、朔夜くんと甘味処に行くから?

 だから、あんなことを思い出してしまったのかしら……。


 妹を羨んでしまったあの日、和は自分の心に蓋をした。

 姉として、最愛の妹を護るために。

 その妹が想いを馳せる相手を好きにならぬように。

 

 だから、私は芸花魁(アイドル)として彼と接した。

 演じていれば、貴方は私の想いを知らずにいられるでしょう?

 だけど、憩ちゃんが千歳くんを選ぶのなら……。

 私が貴方を、朔夜くんを選んだっていいのよね――?


「憩ちゃん、私の服も選んでくれる? 明日、朔夜くんと甘味処へ行くことになったの」

「朔夜とですか?」

「そうなの。嫌だったかしら?」


 最愛の妹が、目をぱちくりとさせている。

 

 びっくり、させちゃったかしら……。

 憩ちゃんは気づいているものね。

 朔夜くんが、私に苦手意識を持っていることも。

 

「いえ! お任せください!」

「ありがとう! 私もかわいいって言ってもらいたいわ」

「お姉様なら、朔夜もきっとイチコロですよ!」

「ふふっ、そうだと嬉しいわ」


 明日、私の想いを伝えてもいいかしら?

 だけどその前に、私にはやらなきゃいけないことがある――。




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