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白銀が護りし緋の神子 ―金霞の五星―【完】  作者: おやまみかげ
白銀番外編

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5/83

*白銀劇場* 〜とある色男の悩み事〜


 ※本編に関わるネタバレ等はありません。


 これは、白銀としての初任務を終えた翌朝のお話――。




 俺の名前は細小波(いさらなみ) (れん)! 誰もが振り向く色男だ!


 今日は朝から会議ってことで、宿舎から本部に向かってる。

 通りすぎる俺のことを、女の子たちがまじまじと見ている。

 カーッ!! 最高だぜ!!


「なあ、俺たちめっちゃ見られてるぞ!」

「……細小波さんがそんな格好してるからでしょ」


 隣で呆れたようにため息をつくこいつは、寒凪(かんなぎ) 千歳。

 俺のかわいい後輩だ!


「やっぱこの方が、俺の色気が伝わるってことだな!」

「……バカなの? 引かれてるんだよ」

「惹かれてる!? 俺の色気にか!?」


 漣の前向きな言葉に、千歳は再び大きなため息をついた。


 この2人が異様に目立っているのには、きちんと理由がある。

 漣の隊服の着こなしだ。

 この男、隊服のボタンを鎖骨まで外し、胸元をアピールしているのだ。

 ――軍の歩く恥である。


「……また旭さんに叱られたいの?」

「お前が言わなきゃバレねえから大丈夫だろ!

 それに、旭に会う前にちゃんと直すからよー」

「何を直すんだい?」

「何って、叱られる前に隊服をだよ!」


 ヘラヘラしたまま顔を上げると、既に屋敷の前だった。

 にっこりと微笑む、同期で親友で上官の旭が、腕を組んで立っている。


「おはよう、2人とも。

 それにしても、漣のその格好はなんだい?」

「あ……、いや、その、これはさー」


 やべえ、また叱られる!!

 なんか、なんか上手いこと言わねえと――!!


「や、吸血鬼(奴ら)(おび)き出そうと思ってよ!!」


 よし! 上手いこと言えたぜ!!

 ドヤ顔でポーズも決めれば、完璧だ!!


「へぇ、そうかい」


 旭の雷が落ちた。




「ちぇー、上手いこと言えたと思ったのによー」


 漣は深くソファに腰をかける。

 頭の後ろで手を組むと、そのまま天を仰いだ。


 旭はいいよなー。

 仕事できて、頭もいいし、かわいい妹が2人もいてよー。

 (そま)もいいよなー。

 あいつ、口は悪いけど顔いいし、憩がベッタリだしよー。

 寒凪もいいよなー。

 すげえきれいな顔してるし、あいつも頭いいんだよなー。


 ……じゃあ、俺は?

 俺にはなんもねえ。

 こうやって目立ってねえと、誰も俺なんかを見てくれない。


 わかってんだよ。

 こんなことしてたって意味なんかねえことくらい。


 大きなため息を1つだけつく。


 色男に、ため息なんか似合わねえからな。1つだけだ。


 そうして今度は、大きく大きく息を吸うと、ありったけの想いを叫んだ。


「あーあ! どこかに俺だけを見てくれる女の子いねえかなー!!」


 

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