*白銀劇場* 〜とある色男の悩み事〜
※本編に関わるネタバレ等はありません。
これは、白銀としての初任務を終えた翌朝のお話――。
俺の名前は細小波 漣! 誰もが振り向く色男だ!
今日は朝から会議ってことで、宿舎から本部に向かってる。
通りすぎる俺のことを、女の子たちがまじまじと見ている。
カーッ!! 最高だぜ!!
「なあ、俺たちめっちゃ見られてるぞ!」
「……細小波さんがそんな格好してるからでしょ」
隣で呆れたようにため息をつくこいつは、寒凪 千歳。
俺のかわいい後輩だ!
「やっぱこの方が、俺の色気が伝わるってことだな!」
「……バカなの? 引かれてるんだよ」
「惹かれてる!? 俺の色気にか!?」
漣の前向きな言葉に、千歳は再び大きなため息をついた。
この2人が異様に目立っているのには、きちんと理由がある。
漣の隊服の着こなしだ。
この男、隊服のボタンを鎖骨まで外し、胸元をアピールしているのだ。
――軍の歩く恥である。
「……また旭さんに叱られたいの?」
「お前が言わなきゃバレねえから大丈夫だろ!
それに、旭に会う前にちゃんと直すからよー」
「何を直すんだい?」
「何って、叱られる前に隊服をだよ!」
ヘラヘラしたまま顔を上げると、既に屋敷の前だった。
にっこりと微笑む、同期で親友で上官の旭が、腕を組んで立っている。
「おはよう、2人とも。
それにしても、漣のその格好はなんだい?」
「あ……、いや、その、これはさー」
やべえ、また叱られる!!
なんか、なんか上手いこと言わねえと――!!
「や、吸血鬼を誘き出そうと思ってよ!!」
よし! 上手いこと言えたぜ!!
ドヤ顔でポーズも決めれば、完璧だ!!
「へぇ、そうかい」
旭の雷が落ちた。
「ちぇー、上手いこと言えたと思ったのによー」
漣は深くソファに腰をかける。
頭の後ろで手を組むと、そのまま天を仰いだ。
旭はいいよなー。
仕事できて、頭もいいし、かわいい妹が2人もいてよー。
杣もいいよなー。
あいつ、口は悪いけど顔いいし、憩がベッタリだしよー。
寒凪もいいよなー。
すげえきれいな顔してるし、あいつも頭いいんだよなー。
……じゃあ、俺は?
俺にはなんもねえ。
こうやって目立ってねえと、誰も俺なんかを見てくれない。
わかってんだよ。
こんなことしてたって意味なんかねえことくらい。
大きなため息を1つだけつく。
色男に、ため息なんか似合わねえからな。1つだけだ。
そうして今度は、大きく大きく息を吸うと、ありったけの想いを叫んだ。
「あーあ! どこかに俺だけを見てくれる女の子いねえかなー!!」




