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白銀が護りし緋の神子 ―金霞の五星―【完】  作者: おやまみかげ
白銀番外編

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4/83

*白銀劇場* 〜とある青年の宝物〜


 時系列で言うと第1折開始より前になります。

 3句とほんのり続くお話。51句も読んでいると尚更……。


 ※本編に大きく関わるネタバレはございません。



 これは、とある青年の宝物に関するお話――。




 今日もあちぃな……。


 17歳の朔夜は、遠征で南領に来ていた。

 元々東領の山奥出身である彼にとって、南の太陽が容赦なく降り注ぐこの地での訓練は、想像以上に厳しいものだった。


(そま)! お前、大丈夫か?」

「うるせぇ、別に平気だよ」

「本当かー? キツかったら無理せず言えよ!」


 この頃、既に南門になっていた19歳の(れん)が青年の肩を叩く。

 そんな上官の手を、朔夜は払い除けた。


「うぜぇ。俺に構うんじゃねぇよ」

「はいはい、悪かったなー!

 そういや、お前に手紙来てたぞー」


 漣は然程(さほど)気にもせず軽く受け流すと、手紙を手渡す。

 綺麗な和紙の包みには、几帳面な字で朔夜の名前が書かれていた。


「相手はどうせ憩だろー!?」

「うるせぇ! テメェに関係ねぇだろ!!」


 捨て台詞を吐くと、手紙を懐に仕舞い込む。


 部屋に戻ったら読もう。


 それだけを楽しみに、朔夜は午後の訓練に食らいついた。




 1日を終え、朔夜はようやく手紙の包みを開ける。

 そこには、几帳面な字が綴られていた。


【朔夜へ

 お元気ですか? 私はまた1つ、詩を覚えました。

 舞の稽古は嫌いだけど、ちゃんと毎日やっています。

 私も稽古頑張るから、朔夜も頑張ってね。

 早く帰ってきてくれたら嬉しいな。】


「あいつ、毎回稽古嫌いだって書いてるな」


 いこからの手紙は、毎週必ず届く。

 稽古のこと、食べた甘味のこと、叱られたこと。

 どうでもいい報告ばかりがいつも書かれてる。


 そして、早く帰ってきてくれたら嬉しいな。

 これも毎回同じように書かれていた。


 ただ、『早く会いたい』と書かれていたことは1度もない。

 きっと、言ってはいけないと、なんとなくわかってるからだろう。


 俺は1度も手紙を返さなかった。

 いや、返せなかった。

 俺の方が会いたくてたまらなかったから。


 もらった手紙を丁寧に広げると、針と糸を用意する。

 中心がずれないよう、慎重に事を進めなければならない。


「よし……、これでいいな」


 今日もまた、大切な宝物が1つ増えた。


 朔夜は丁寧に製本した手紙を懐へとしまう。

 少しだけ増したその重みを感じながら、眠りについた。



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