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白銀が護りし緋の神子  作者: おやまみかげ
第2折 カフェーという闇

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17/40

17句 茨の道


「憩、これはどう? 似合うと思うんだけれど」

「こちらもかわいいデザインですね!」

「だろう? まるで憩のために作られたようだね」

 

 (れん)以外の白銀の面々は、今晩着用する衣装の調達へと来ていた。

 前回の潜入で、1階はごく一般的なカフェーということがわかったため、全員で潜入することにしたのだ。

 

「……旭さん、憩に甘すぎ」

「仕方ねぇんだよ。

 いこが自由になって1番喜んでるのは、旭と(なごみ)だろうからな」

「……外に出ることが、危険だとしてもですか?」

「あいつは脱走常習犯だからな。

 常に側にいる今の方が、むしろ安全だろ?」

 

 朔夜は楽しそうに服を選んでいる兄妹を眺める。

 旭のこんな嬉しそうな顔は、見たことがなかった。

 

「見て見て朔夜! これとこれならどっちがかわいい?」

「うん? いこならこっちが似合いそうだな」

 

 憩が持ってきたワンピースの、シンプルな方を指さす。

 

「それに、このリボンとこの靴合わせたらかわいいと思うぞ」

「……ナチュラルにコーディネートしてるし」

「朔夜はセンスがいいね。

 憩、このリボンと靴も買うかい?」

「いいんですか!?」

「もちろん。

 その代わり、これから任務頑張るんだよ?」

「はい! ありがとうございます!」

 

 憩は嬉しそうににっこりと笑う。

 

「旭、そのリボンと靴は俺が買います」

「だってさ。朔夜に買ってもらうかい?」

「朔夜、いいの……?」

「当たり前だろ? 俺が選んだしな」

 

 朔夜は旭から、リボンと靴を受け取る。

 

「ありがとう!

 朔夜は何か欲しい物はないの?」

「別にねぇよ、気にすんな」

「あ! ねぇ、これは?」

 

 憩はネクタイを手に取ると、朔夜に見せる。

 

「潜入、スーツでしょ? 似合うと思う!」

「……そのネクタイ、(そま)さんが選んだリボンの色とお揃いだね」

 

 千歳のその言葉に、憩の頬が淡く染まる。

 

「その、私とお揃いは嫌……?」

「なっ、嫌じゃねぇよ……。ありがとな」

 

 憩に釣られ、朔夜の頬も淡く染まる。

 

「さて、必要な物も揃ったし、そろそろ戻ろう。

 潜入について、もう少し話も詰めないといけない」

「……そうですね、一応待ってる人いるし」

 

 4人は会計を済ませると、漣の待つ屋敷へと歩みを進めた。



  

 一方その頃、漣は書斎の資料整理を旭から命じられていた。

 テストで不合格だった罰だ。

 

「あーあ。俺も買い物行きたかったなー」

 

 ぶつくさ言いながらも手は動かしていた。

 調子に乗りやすいだけで、やるときはきちんとやるのだ。

 だからこそ、旭にも叱られる。

 

「にしてもよー、いつ終わんだよ……。

 相楽の爺さん、ちゃんと資料まとめとけよなー」

「本当にそうよねぇ。

 お祖父様には、きちんと伝えておくわぁ」

 

 いきなり現れた声の主に驚き、漣は振り返る。

 和がお茶菓子を持って、入ってきていたのだった。

 

「ごきげんよう、漣様。

 お会いするのは久方ぶりかしら?」

「本当に久々だなー! 今日は休みか?」

「いいえ、これからお仕事なのよ。

 行く前に憩ちゃんに会えたら、って思ったのだけれど」

 

 和は残念そうに微笑む。

 

「あのさ、1つ聞いてもいいか?」

「えぇ、どうぞ」

「その、心配じゃねえのか? 憩のこと」

 

 漣はずっと気になっていた。

 神子である以前に、憩は年頃の女の子だ。

 白銀がエリート集団であることは事実だが、だからといって安全とは言い切れない。

 

「あの子が隊にいることを選ぶのなら、

 私とお兄様はそれをサポートするだけよ。

 憩ちゃんにはね、自由に生きてほしいの。

 何にも縛られず、好きなように生きてほしい。

 それがあの子にとって危険なことだとしても。

 そのためなら、私とお兄様はなんでもするわ」

 

 そう笑顔で答えた和の目には、旭と同じ覚悟が宿っていた。

 漣はそれ以上、何も問えなかった。


 

 

 漣が和と話している頃、4人は屋敷への道を歩いていた。

 

「お兄様、甘味を買ってもよろしいですか?」

「うん、いいよ。今回は何を買うんだい?」

「おはぎが食べたくて……」

「……憩って、あんこ好きだね」

「はい! つぶあんが好きです!」

 

 憩は目をキラキラとさせながら答える。

 

「甘味、買ってやるよ。

 会議中に食うなら、何個か欲しいだろ?」

「そんな、さっきリボンと靴も買ってもらったのに……」

「いいんだよ。いこはネクタイ買ってくれただろ?

 そのお礼だよ、ほら好きなの選べ」

 

 朔夜は憩の頭をポンポンと撫でた。

 

「ありがとう、朔夜!」

「……それ、一生お返し終わらないじゃん」

「ははっ、確かにそうだね。でもね、これが朔夜なんだよ」

「……杣さんらしいですけどね」

 

 嬉しそうにおはぎを選ぶ憩の隣に、

 その憩の姿を愛おしそうに見つめる朔夜が立っている。

 

「……あの2人、どうして想いを伝え合わないんですか?」

「昔はね、憩が毎日想いを伝えていたんだよ。

 でも、朔夜がその好意を受け取らなかった。

 自分は相応しくないと思っているんだろうね」

「……そうなんですね。

 でも、態度から好意ダダ漏れしてますけど」

「本人にその自覚がないからね。

 でも、こうして一緒にいるところを見ると、

 憩にも朔夜が、朔夜にも憩が必要なんだろうなって思うよ」

 

 そんな話をしていると、

 おはぎを買い終わった2人が戻ってくる。

 

「お待たせいたしました!」

「……すごい量。たくさん買ったんだね」

「いこが、みんなで食いたいんだとよ」

「まさか、朔夜が払ったのかい?」

「自分で払うって言われたんですけど、俺が断ったんで気にしないでください」

「朔夜、ごめんね。いつもありがとう!」

「いいんだよ、ほら早く帰るぞ」

 

 少し寄り道した4人は、帰路を急ぐのだった。


 


 屋敷へ着くと、4人は書斎へと向かう。

 漣はどうやらきちんと仕事をしていたようで、だいぶ片付いていた。

 

「漣様、ただいま戻りました!」

「おう、おかえり! ってすげえ荷物だなー!」

「……半分は憩の物だけどね」

「いいだろ別に、俺らが買いたくて買ってんだからよ」

「はいはい、喧嘩しないよ。

 漣、資料の整理ありがとう。助かったよ。

 キミの分のスーツも買ってきたから見てくれるかい?」

「マジかよ!? しかもその袋って、老舗の呉服店のだろ!」

「そうだよ。漣に似合うと思ってね」

 

 旭は袋を手渡す。

 受け取った漣は目を輝かせながら封を開けた。

 

「すげえ!! 超お洒落じゃねえか!!」

「だから言っただろう? 漣に似合うと思ったって」

「ありがとな、旭!! マジで一生ついて行くぜ!!」

 

 漣は取り出したスーツを当てて、ポーズを取っている。

 

「……さすが旭さん、飴と鞭が上手い」

細小波(いさらなみ)が単純すぎんだろ……」

「それじゃあみんな、服は一旦置いておいて

 今日の潜入について、作戦会議を始めるよ」

「では、私はお茶を淹れてきますね!」

「うん、お願いね」

 

 憩が部屋を出ていくと、

 朔夜は憩が戻ってきてすぐ座れるよう、

 席に置いてあった荷物をサッと片付けた。

 

「……さすが、阿吽の呼吸」

「何? 何の呼吸?」

「……気にしないで、知らなくても死なないから」

 

 そう答えつつ、千歳もおはぎの包みを広げる。

 あんこ、きな粉、黒ゴマと3種類のおはぎが並んでいる。

 

「美味そうだな!! これは誰の奢りだ!?」

「憩が食べたいって言い始めてね、朔夜が買ってくれたんだよ」

「杣か、ありがとな!」

「別に、いこのために買っただけだよ」

「お待たせいたしましたー!」

 

 憩は淹れてきたお茶を皆に配る。

 おはぎを食べやすいように、小皿も一緒に持ってきたようだ。

 

「憩、ありがとう。

 それじゃあ、作戦会議を始めようか」

 

 4人の視線が、旭へと集まった。



 

「――ということで、カフェーには全員で行く。

 ただ接触は、漣と朔夜の2人にやってもらう」

「……あの、旭さんいいですか」

 

 千歳が小さく手を挙げる。

 

「うん、もちろん。どうしたんだい?」

「……旭さんも昨日潜入してるので、顔バレしてると思います。

 ここで接触にまわらないのは、不自然ではないですか?」

「たしかにそうだなー。

 昨日乳繰り合っておいて、今日は上らないってのは変だよなー」

「乳繰り合う……?」

 

 知らぬ単語が出てきたため、憩は首を傾げる。

 

「おい、いこの前で変な言葉使うんじゃねぇよ!!」

「漣、余計なことは言わないように。

 そして、千歳の言うことは最もだね」

「……ですので、行きたくないとは思いますが、

 旭さんも接触にまわっていただいた方が自然かと」

「わかった。千歳の案を採用しよう。

 上には、漣、朔夜、僕の3人が行く。

 千歳と憩は、客を装ってカフェーで過ごす。

 いいね?」

 

 旭の言葉に皆がこくりと頷く。

 

「千歳様、よろしくお願いします!」

「……うん、よろしくね」

「よし! じゃあ着替えて行こうぜ!!」

 

 漣の一声で皆が一斉に立ち上がる。

 第2回、潜入作戦が始まろうとしていた。


 

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