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白銀が護りし緋の神子  作者: おやまみかげ


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11/23

11句 宿命を運命に

 旭・(れん)・千歳の3人が秘密の共有をしている頃、憩と朔夜は甘味処へと来ていた。

「みつ豆とぜんざいだけでいいのか?」

「うん! お土産に豆大福を買って帰るから大丈夫!」

「豆ばっかだな、いいけどよ」

 朔夜は、嬉しそうに甘味を頬張る憩を眺めていた。

 ズイッと、目の前にみつ豆の乗ったスプーンが差し出される。

「はい! 美味しいから朔夜もどうぞ!」

「……ありがとな、でも自分で食うよ」

 朔夜は憩からスプーンを受け取ろうと手を伸ばす。

「どうして? このまま食べていいよ、はい!」

 その手は無視され、さらにズイッとスプーンを差し出された。

「……ありがとな、いこ」

 気恥ずかしさはあったが、正直悪い気はしない。

 朔夜は少し身を乗り出すと、差し出されたスプーンに口をつけた。

「ね、美味しいでしょ?」

「あぁ、そうだな……」

 そう答えたが、正直味なんて分からない。

 だが、今まで食べたみつ豆の中で、1番甘いことだけは確かだった。

「ぜんざいも食べる?」

「いや、いいよ。餅好きだろ? その気持ちだけ貰っとく」

「わかった、食べたくなったら言ってね!」

 にっこりと微笑む憩に、朔夜の顔も綻ぶのだった。


「こんなに買って、1人で全部食うのか?」

 憩が大量に買った豆大福の包みを、朔夜は抱えていた。

「ううん、白銀(しろがね)のみんなとお祖父様、お姉様と食べる!」

「そうか、いこは優しいな」

 朔夜は隣を歩く憩の頭を撫でる。

 甘味処を出た2人は、屋敷へと向かって歩いていた。

「みんな喜んでくれるかな?」

「いこが選んだんだ。旭と(なごみ)はぜってぇ喜ぶから安心しろ」

「お兄様とお姉様はいいの! 何を渡しても大喜びだから」

 憩は頬を膨らませる。

「それだけ大切にされてんだよ、いいことじゃねぇか」

「そうだけど、たまには欲しいものとか言ってくれてもいいのに……」

 憩は不満そうに口を尖らせた。

「じゃあ、今度聞いておいてやるよ。それでいいだろ?」

「うん! ありがとう!」

 朔夜の言葉に憩はにっこりと笑う。

 旭や和の欲しい物なんて、朔夜には分かりきっていた。

 憩が誰にも脅かされない、安全な世だ。

「いこ、明日からも頑張ろうな」

 そう伝えた朔夜の言葉には、憩の宿命を共に背負う覚悟が秘められていた。


「ただいま戻りました!」

 2人が屋敷へ戻ると、ちょうど和が仕事へと出るタイミングだった。

「あら、憩ちゃんと朔夜くんじゃない! おかえりなさい」

 朔夜はぺこりと頭を下げる。

「お姉様、もう出られるのですか?」

「えぇ。今日はご指名をたくさんいただいているから、少し早いけれど出なきゃいけないの」

 眉を下げ寂しそうな顔をする憩の頬を、和は愛おしそうに優しく撫でた。

「そうですか……。一緒に食べようかと、豆大福を買って来たのですが……」

「あら、そうなの!? なら憩ちゃん、ここで食べさせてくれる?」

 和はウインクすると、紅で彩られた口を開けた。

「お姉様、はしたないですよ……」

 そう言いつつも、憩は豆大福を和の口へと運んでやる。

 和は嬉しそうにそれを1口頬張ると、残りを受け取った。

「ありがとう、憩ちゃん! とっても美味しいわぁ」

「今度は一緒に食べましょうね、約束ですよ!」

「もちろんよ。じゃあ、お仕事に行ってくるわね。朔夜くん、憩ちゃんのことお願いね」

「あぁ、和も気をつけて」

「いってらっしゃいませ」

 和は2人に手を振ると、仕事へと出ていった。

「お姉様とも、一緒に食べたかったなぁ」

「また買ってこような」

「うん! 次はお姉様がお休みの日に買いに行きたい!」

「いいぞ、いつでも一緒に行ってやる」

 憩はその言葉ににっこりと笑う。

 また1つ増えた約束と共に、2人は書斎へと向かった。


 書斎に入ると、既に白銀の面々が揃っていた。

 どうやら黄山は不在のようだ。

「おかえり、2人とも。朔夜、その大荷物はなんだい?」

 旭は朔夜の抱えている包みに目をやる。

「これ、いこからです」

「豆大福を買って来ました! みんなで食べませんか?」

「ありがとう、憩。すごく嬉しいよ」

 旭は笑顔で朔夜から包みを受け取ると、憩の頭を優しく撫でた。

「では、私はお茶を淹れてきますね!」

 憩はにっこり笑うと、足早に書斎を出ていった。

「朔夜、悪いね。いつもありがとう」

「いえ、別に。一緒にいただけなんで」

 そう朔夜は答えながら、書斎に漂う異様な空気を感じ取った。

「なんかありました?」

「実はね、憩の血について2人にも話したんだ」

「そうですか。じゃあ知らないのは、いこだけですね」

 朔夜の言葉を聞いて、(れん)がテーブルを強く叩きながら立ち上がる。

「おい、(そま)!! お前はなんでそんな普通にしてられんだよ!!」

「……憩の血のこと、知ってたんですよね?」

 千歳も疑心に満ちた目を朔夜へと向けた。

 2人が旭と朔夜の行動に対して、嫌悪感を抱いていることがすぐに分かった。

「あぁ、知ってたよ。だからなんだ、いこはいこだろ」

「お前は憩が心配じゃねえのかよ!! こんなこと知ってたら、俺だって白銀に入るのを反対した!!」

 漣は朔夜の胸ぐらを掴むと、感情をぶつけるように怒鳴り散らした。

「漣、それを朔夜に言っても仕方がないだろう?」

「……仕方がない? 杣さんは憩が白銀に入るのを、反対しなかったじゃないですか」

 千歳が止めに入った旭に食いかかる。

「じゃあテメェらは、いこに一生閉じこもってろって言うのかよ!!」

 朔夜は漣の胸ぐらをグッと掴み返した。

「んなこと言ってねえだろ!! 前線に出す必要はねえだろって言ってんだよ!!」

「……憩が大事なくせに。旭さんも杣さんも、隊に入れるなんて間違ってる」

「2人の言いたいことは分かるけれど、それじゃあ憩の気持ちはどうなるんだい?」

 4人、特に今さっき事実を知った漣と千歳の感情は、収拾がつかなくなっていた。

 カチャ、と音がして扉が開く。

 お茶を淹れた憩が戻って来たのだった。

「どうしたの? なんで喧嘩してるの?」

 4人の様子を見て、憩が悲しそうな顔をした。

「……いこ、喧嘩じゃねぇよ。戯れてただけだ」

 朔夜は、漣の胸ぐらを掴んでいた手をパッと離した。

「ああ、そうだぞ!! 杣が変なこと言うからよ!!」

 漣は笑顔を作ると手を離し、朔夜の背をバンバンと叩く。

「さて、憩がお茶を淹れてきてくれたことだし、休憩にしよう」

 それまでの感情を押し殺すと、旭は笑顔でそう伝えた。


 5人はいつも通りの配置でソファに腰をかける。

 憩が皆にお茶を配り、旭が豆大福の包みを広げた。

「さぁ、食べようか。憩、ありがとう」

「いえ、私も食べたかったので……」

 えへへ、と憩は恥ずかしそうに笑う。

 旭と朔夜は大福に手を伸ばすが、漣と千歳は心ここに在らずだ。

「漣様と千歳様は、豆大福がお嫌いでしたか?」

 不安そうに憩に問われ、2人ははっと我に返る。

「い、いや美味しいよな、豆大福!! ありがとうな憩」

「……僕も好きだよ、ありがとう」

「それならよかったです!!」

 2人が食べ始めたのを見て、憩はにっこりと笑う。

「な? みんな喜ぶって言ったろ?」

「うん! ありがとう朔夜」

「ほら、いこも食わねぇとなくなるぞ」

 そう言うと、朔夜は憩の分も取ってやる。

「食べ終わったら、夜の偵察に行くからね。憩、疲れるとは思うけれど、力を使ってもらうよ」

 皆が落ち着きを取り戻したのを見て、旭が声をかける。

 旭だって、歩けなくなるほど体力を消費するような力なんて、本当は使って欲しくはない。

「はい! 頑張ります!!」

 豆大福を頬張りながら、憩は元気よく返事をする。

 そんな憩の姿を見て、漣と千歳は思わず顔を見合わせた。

 自分たちよりも幼い少女が、自らの宿命を知らないとはいえ、

 自分の意思で戦場に向かい、その力で運命を変えようとしているのだ。

 自分たちも目を逸らさず覚悟を決めなければいけない、そう思った。

「んじゃ、今日もかわいい歌姫(カナリア)ちゃんに、頑張ってもらうとするかねー」

「……最低。細小波(いさらなみ)さんが死ぬほど頑張ってよ」

「おいおい、そんな言い方はないだろー!! もっと先輩を敬えよ」

 漣はそう言うと、千歳の肩を抱く。

「……心底うざい。杣さん席替わって」

「はぁ? 替わるわけねぇだろ」

「千歳、僕が替わろうか?」

「……いえ、旭さんにこれの相手をさせるのは申し訳ないので」

「おい、これってなんだよ!! ひでえ後輩だなあ」

「つーか旭には申し訳ないって思うのに、俺に替わらせようとすんなよ!」

 そんな4人のやりとりを見て、憩がくすくすと笑っている。

「何笑ってんだよ、いこ」

「だって、みんな仲良しなんだなーって」

「そうだね、白銀は本当にいいチームだと思うよ」

「……細小波さんがうざくなければもっといいのに」

「だからさ、俺、先輩なんだけど!?」

「……そういうのがすごくうざい。黙って欲しい」

「俺も同意、いちいちうるせぇ」

「まじでお前らひでえよな。まぁ俺は心が広いから、許してやるけどよー」

「はいはい、食べ終わったらなら出発するよ」

 旭が個性豊かな皆をまとめる。

 感情をぶつけ合った分、結束力が増したように感じた。

「あ! 朔夜、髪結ってくれる?」

「当たり前だろ、行く前に結ってやるって約束したからな」

 朔夜は憩の髪へと手を伸ばす。

「あーあ、見てらんねえ!! 先行こうぜ、旭、寒凪」

「……同意。早く追いついてね2人共」

「じゃあ朔夜、先に行ってるよ。憩をよろしくね」

「もちろん、任せてください」

 3人は朔夜に憩を任せると、抗うべき宿命と紡ぎ出す運命に向かって歩き出した。

 

活動報告にキャラのこぼれ話アップしました♪

Xも始めてみました⭐︎よければ遊びに来てください♪

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