第40色 彼方からの支援
銃。スレイが持っている物。鉄の塊を圧倒的なスピードで射出する。
弾はスレイの『色』で再利用している。
銃自体はそれ以上に工夫されているんだろうが、まぁいい。
それが十数人に囲まれ、こちらに向けられている。
ただその言葉は優しい。だがどこか脅迫じみた言葉を聞いても誰一人として手を上げようとしない。
「おい!死にたいのか!?」
最初に言ってきた者と別の者が声を荒げる。
相手は圧倒的不利なはずなのにこちらの要求に従わない。
声を荒げるのもまぁ納得はできる。
「いや、それで死ぬとは思えないし…」
さも銃を初めて見たかのように振る舞う。
スレイの銃は全て棺の中にある。それも『タイム・リバース』で出せる。そもそも『タイム・リバース』で攻撃もどうとでもなる。
何より。
「チィ!そこまで言うなら殺してやるよ!」
「まぁ、仕方ないか。射撃〜」
「『白壁』」
ズガガガガン!!!
激しい銃撃音。
両者の間に白煙が上がる。
それが晴れた時見えたのは。
「無傷…!?」
「うん。このくらいなら行けるね。」
その場から一歩も動かず。なのに無傷の僕たちだった。
どうやって話をしようか。
できれば戦いたくない。
そしてこの人たちの目的とかも知りたい。
そう考えられたのは数秒で。
「上にも注意したほうがいいぜ?」
「うーん、それは君たちじゃない?『緑風』」
いつの間にか真上に迫っていた手榴弾。
そしてそれを何の驚きもなく『風』で巻き上げるワイド。
爆発。だがそれは誰にも当たることはない。
「いや、それのことじゃないな。」
轟音。
いや、爆発よりは小さい。だがそれでも大きい。
ストン。
1テンポ遅れて音のした方を見る。
光の矢が地面に突き刺さり、そこには一つの銃弾。
それはスレイの使っている狙撃銃の弾と酷似していた。
「ハァ!?何処のどいつだ!?少なくともてめえらじゃあ無さそうだが…」
先程までの冷静さが何処かへ消え、一気に慌てる。
だが奴らはこれから更に驚くことになる。
「当たったか?」
「あぁ、バッチリ。」
同時刻、サーシュ裏路地。
入り組んだ路地の奥の少し広がった場所で、二人が言葉を交わす。
「次は…少し連続で撃つぞ。行けるか?」
「余裕だね。私を何だと思ってるんだ?」
右手を前に、肘のあたりに左手を合わせ、照準のようにする。
その腕を後ろから抱きかかえるようにして腕を操作し、1ミリにも満たない範囲で微調整をする。
お互いの『色』を最大限利用することで、数百キロ離れた場所までの超遠距離狙撃を可能とする。
まさに反則級の荒業。
「ライラ。次でとりあえずラストだ。」
「了解。急に呼んだんだ。次の情報料は引いてもらうぜ?」
「そのくらいならいいだろう。さて、撃つぞ。行けるか?」
「当然!」
〈情報屋〉の『色』は自分の知り合いの付近に『青』の球体を出現させ、そこから周りを見渡す。ただそれだけの『色』。
だがこの超遠距離狙撃を可能としたのには彼の努力と特技にある。
彼は元々ギルドの職員だった。
その『色』で先に依頼対象の情報を見れる他、特定の人の不正や裏切り、さらには何処へ逃げたかまで。
あらゆるものをずっと見続けてきた。
そこでまず距離を測ることが可能になった。
右目で『色』を使い、左目で現実を見る。
その2つの視界の空や空気の差。
それで大まかな距離を測ることができる。
それでかつては人を助け、はたまた人を捕まえてきた。
そんな『色』を、今は唯一人の友人の興味の対象のために使う。
「まぁ、楽しいな。」
「なんか言ったか?」
「いや、何も?」
人に指示されて使うよりも、自分の意志で友のために使う。
こっちのほうが、俺に合っている。
右目の『色』は解除しない。
かつてはこの『色』が苦痛だった。
だが今は違う。
もうこの『目』を逸らさない。
裏路地を後にする友人…いや、親友を見送りながら、俺は一人呟く。
「魅せてくれよ。俺に。」
「この檻に囚われた俺に、外の世界を。」
目の前の人たちが抱える銃が一つ残らず砕け散る。
そこに刺さるは光の矢。
もうそれが誰のものかなど疑いようもない。
ここからサーシュまではどのくらい離れているかなど知る由もない。
だがこんなデタラメをするのは先生くらいのものだろう。
目の前では突然の出来事に理解が追いついていないのかまだ困惑している。
その機を逃さず、僕たちは無力化するために走る。
駆け出す時、一つだけ思うことがあった。
まぁ、このくらいなら許されるだろう。
「…ありがとうございます、先生。」
〈情報屋〉とライラ先生は昔からの友人です。し、両方ともサーシュの出身です。
周りが英雄の生まれ変わりとして神聖視する中、〈情報屋〉だけが特別視せずに扱ってくれました。
そんな過去があるので、この二人はより仲が良いです。




