50日目
「…………」
幼い僕は、口が縫われた先生たちだったものを、光がない死んだ瞳で見ていた。
幼い僕は、血でべっとりと汚れた手を見つめる。反応はなかった。それが当たり前みたいに。
「凄い声が聞こえたけど、何があったんですか!?」
「にいさん、どうしたの!?」
しばらくして、受付の先生と幼いライムがやって来た。二人はこの光景が信じられないようで、数秒ほど目が見開いたままだった。
すると、幼いライムは僕の腕を強くつかんで引っ張った。力は強く、つかまれたあとが残りそうだった。
「にいさん! これ、にいさんがやったの!?」
幼いライムは幼い僕を揺さぶり、信じがたい瞳をしている。けれど、幼い僕は死んだ目でライムを見ているだけだった。
「にいさん! にいさん!?」
「黙ってないで答えてよ!」
ライムは耐えられなくなり、幼い僕の胸ぐらをつかんだ。しかし、幼い僕は動じずに呟いた。
「……た」
「……え?」
「せんせーたちが……本当はすごく悪い人たちだから、僕が殺した」
「キャロルせんせーは、僕のことが嫌いだったんだ」
「そんなせんせーは、僕のせんせーじゃない。僕の知ってる、せんせーじゃないんだ。だから、殺した」
「にいさん……!」
僕が見てきた記憶のなかでライムは初めて、幼い僕に怒りを向けた。雪のように冷たい、冷ややかな目で。
「もう一回言ってみてよ。そしたら、僕が悪いにいさんをぶん殴ってやる」
その言葉を聞いて、僕は目が笑ってない歪んだ笑顔を見せた。
「あっは」
ついにライムの怒りは頂点に達し、幼い僕に手をあげる。
ある日の夜。とある『子ども心療内科』では、パトカーや救急車のサイレンの音。そして、子どもの怒りに震えた声が聞こえたらしい。




