51日目
その日の夜。幼い僕は警察の人に事情聴取を受けた。
が、僕が『からっぽ』なことや精神面のこともあり、カウンセリングの先生に話を聞いてもらった。
幼い僕は機械的な声と死んだ目で、『はい』や『いいえ』。『からっぽ』な僕が言える範囲でのことしか言わない。
「キャロル先生とは、前からトラブルはあったのかい?」
「いいえ」
「何で、キャロル先生たちの口を縫ったのかな?」
「……あんな酷い言葉は、もう二度と聞きたく、なかった」
「……あのせんせーは、僕の……知ってる、せんせーじゃなかったから」
ずっとこんな感じだ。今の僕は過去の僕らには見えないけど、僕はドア越しにその話を聞いていた。
「……。そうかい、ありがとう」
カウンセリングの先生はそれっきり、警察の人たちに幼い僕の動機などを話した。
幼い僕に警察やカウンセリングの先生は、少年院や精神科の病院に入院することを勧めたが、後から駆けつけた両親が全て断った。
「アルト、ライム。帰るわよ」
僕の母親は愛情がこもってない声でそう告げる。
深夜。自分の部屋に帰ってきた幼い僕は、ベッドに入って布団を被った。
僕とライムの部屋は元々離れているが、隣同士でいつでも会える。しかし、今の幼い僕はそんな気分は毛頭もなかった。
部屋のドア越しに、両親の言い合いが聞こえる。
「何でこんなことになったんだ……。これも全部、お前と出会ったせいだ」
「なぜ私のせいにするの? あなたはいつもそればっかり! 私が家事や子育てに、どれだけ時間と精神を削られたと思ってるのよ!」
「僕も少しは手伝ったじゃないか! あのおかしいやつらを、君が仕事でいない間ずっと世話してたんだ!」
父さんがテーブルを叩き、続けざまに口を開いた。
「アルトはすぐに物事を忘れるし、会話が噛み合わない! 何か言い出したか思えば、すっとんきょうなことを言い出すんだ!」
「ライムはあのオカルト女の家に影響されたのか、ずっと変なことをぶつぶつ言ってる。しかも、うさんくさい本を買いたがる! しまいには、部屋の床に魔法陣なんか書き出すんだ!」
少し静かになったかと思えば、母さんの一番聞きたくない言葉が聞こえてしまった。
「……あんな双子、産まなければよかった」
そして、父さんと母さんの怒鳴り声や食器の割れる音。椅子を投げる音まで聞こえ出す。
幼い僕は逃げるように布団を頭まで被り、今日のことを忘れようとした。




