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11.チャンネル登録者の価値

☆松原ムロ


(格好つけたけど、それに見合った活躍したから別にいいよね)


 本来は何もしていないようなものだが、周囲からは正義感ある冒険者だと思われたことだろう。

 おそらく、彼女の配信において非常に絵になっていたハズだ。


(もっとも、私は配信苦手だからやらないけどね)


 配信というのは、常に人間とのコミュニケーションが求められる。

 そして、人が来ないなら来ないなりに、ただひたすらに独り言を垂れ流すしかない。


(どっちも嫌だからね)


 ダンチューバーの中では、陰キャ設定で配信をしている者もいるが、本物の陰キャを分からせてやりたいくらいである。


「配信まだ続いてるんですか?」


 力が抜けて地面に座り込んでいる彼女に対し、確認を取る。


「え?」

「私は部外者ですし、このような事態になってしまったので、配信は切った方がいいと思います」


 身バレする可能性もなくはない。

 それに、ギラのことまでバレてしまっては、研究所行きになり日常を失う危険性もある。


「そ、そうだよね!」


 彼女は配信カメラに向けて、


「皆心配かけてごめん! 今日は配信切るね! 本当に心配かけてごめん!」


 などと言い、配信を停止した。

 ようだが……


「ドローンカメラ、まだ撮影中みたいになっていますが、しっかりと配信切れてますか?」


 ドローンカメラに、録画中と思われる赤い光が付いていることに気が付いたムロは、そちらを指差す。


「しっかり専用アプリから停止したから、大丈夫だよ! って、あれ!? 切れてなかった!? ごめん!!」

(配信切り忘れにの巻き添えになる所だった。個人情報も配信に載る可能性もあったし、危ない所だった)


 今度こそ、しっかりと配信を切った彼女と共に、ダンジョンを出る。



「本当にありがとう! でもそれにしても、驚いたな! この前出会ったダンチューバーさんだったなんて!」

「こちらこそ驚きですよ。あんな高難易度エリアにいるとは思ってもいませんでした」


 現在は喫茶店にて、あまり人がいない席で2人で話している。

 マスクやサングラスなどは外しているので、向こうも先程自分を助けてくれた探索者が、以前出会ったダンチューバーであることを理解したようだ。


「でも、本当にありがとう! あっ! そうだ! 自己紹介まだだったね! 私は桜七海! よろしくね!」

「松原ムロです。おそらく長い付き合いにはならないとは思いますが、よろしくお願いいたします」

「相変わらずクールだね! そうだ! 私登録者増えたんだ! 1万人突破したんだ!」


(は? チャンネル登録者1万人? こっちは今50人代なんだぞ)


 ムロのチャンネル登録者数は現在52人。

 勿論、一般人としてはかなり早い方だ。


「えっと、少ないよね……? ごめん、私みたいにレベルが低い人見ると、イライラしちゃうよね?」

(この人は、一体どこのトップ層と比べているんだ)


 ムロは嬉しそうに語るナナミに対して、内心イライラしながら、少し厳しめな対応を取る。


「チャンネル登録者数は、チャンネル登録者ボタンを押した人の数です。

 大切なのはどれだけの視聴者が最後まで見てくれたからです。

 例えば、そうですね。

 あなたを一目見てかわいいと思った人がいるとしましょう」

「え!? かわいい!? えへへ! そうかな?」


 ムロは本心を隠して、今思い付いたことを言い続ける。


「だとしても、その人が果たしてこれからもあなたのことを見てくれるでしょうか?

 かわいいだけなら、ただボタンを押してその後幽霊登録者になる可能性だってあるんです。

 ボタンを押しただけの登録者ではなく、リピーターとなってくれる、真のチャンネル登録者を増やすことが大事だと思います」


 ムロは「言ってやった!」と、内心思いながら、得意げな表情を浮かべた。

 ナナミは一瞬驚いたかと思うと、表情を輝かせる。


「やっぱり……ムロちゃんは凄いな!」

「そ、そうですか!?」

「うん! プロ意識が違うっていうか、やっぱりレベルが違うっていうか……決めた! 私ムロちゃんを目的にする!」

「ええ!? いいんですか!?」


 予想外の返答で、驚いてしまう。

 一体どんな勘違いをしたのだろうか?


 調子が狂うな。


「実は私、ちょっと自信無くしてたんだ……。引退も考えてて……」


 本気で悲しそうな表情をする彼女であった。


(それで引退してたら、私はなんなんだ!)


 思わず心の中で突っ込まずにはいられない。

 いや、待てよ?


 突っ込んでいる場合じゃないかもしれない。


(あれ? もしかして今の私、相当いい状況じゃないの?)


 冷静になって考えてみると、この状況は非常に良い。

 このナナミという少女は、何やらムロのことを凄い人みたいに考えており、更には弱みまで見せてくれている。


 つまり、


(私とギラさんのチャンネルを自然な形で宣伝して貰えば、チャンネル登録者が増えるってことだ!)


 ムロは表情を明るくする。


(チャンネル登録者はとにかく数だ! え? さっきはリピーターが大事って言ったって? 気にしてはいけない! これぞ私のタクティクス! ダブルスタンダード! ここで宣伝して貰って、一気に稼いでやる!)


 そうとなれば、この前の友達拒否ったのをキャンセルしなくてはならない。


「この前のお誘い。ご親切に誘ってくれたのにも関わらず、断ってしまい申し訳ございませんでした。今度はこちらからお願いです。私と友達になってくれませんか?」


 ムロは頭を下げて、お願いした。

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