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12.動画を宣伝して貰いましょう

「え!? 友達じゃなかったの!?」


(え!? 友達になってたの!?)


 予想外の返答だった。

 この前、友達になるのを拒否したハズなのに、一体なぜ?


(おかしい。確かにこの前私は拒否ってしまったハズなのに)


 今更もう遅い、みたいに言われる可能性すら覚悟していた。


「えっと、この前私断ってて怒ってたりしないのかな? って」


 少々気まずそうに、ムロはナナミに聞く。

 しかし、ナナミは首を傾げる。


「え!? あれ冗談じゃなかったの!?」


 冗談だと思われていたようだ。


(良い方向に捉えすぎだろ! いつか悪い人に騙されるぞ!)


 とはいえ、計画に狂いはなくなった。


「友達になったので、少々おススメしたい動画があるのですが、よろしいでしょうか?」

「おススメの動画!? ムロちゃんが言うんだから、きっと凄い動画なんだろうな!」


 作戦はこうだ。

 おススメの動画と称して、自分の動画をナナミに見せる。


 そして、ナナミが宣伝してくれる。

 完璧な作戦だ。


(本当は私のチャンネルだってことを言っても良かったんだけど、それ言っちゃうと私が画面に映っているドラゴンの飼い主だとバレる可能性があるからね)


 ナナミは口が軽そうなので、その辺り身の危険を感じていた。


「ほら、この動画ですよ! SNSで流れて来たんですけど、なんというか凄くないですか? モンスターが料理作ってますよ! しかも材料にする為に戦った相手はなんと、レッドオーガです! 後日、もっと凄い動画が上がりそうな気もするんですけど、どうなんですかね?」


 視聴者を釣るスキルは、学習済だ。

 伝えたいことを伝え、最後にまた見たくなるような期待を付け加える。


(完璧すぎるプレゼンだ! ま、完璧というには荒はあり過ぎるんだけどね!)


 ムロはご機嫌な表情で、上手く伝えられたことを自信満々に誇る。


「確かにこれは凄い!」


 目を輝かせるナナミ。

 画面を見て頷いており、これは好きになってくれそうだ。


「やっぱり、ムロちゃんが紹介するだけあって凄い!」

「え?」


 思ったのと違う反応だ。


(おかしい。もっと動画に対してこう、色んな感想言ったり、「これはどうなの?」みたいなことを聞いてくると思ったんだけど……)


 画面の中の動画ではなく、興味を向けているのはムロ自身に対してだ。

 正体がバレているのかもしれない、という意味ではなく、要するにあれである。


(「この人が紹介したから」見てるタイプか!? 絶対流行りに流されるタイプだろ!)


 「目の前にいる、なんの取り柄もない人間なんかよりも、普通は画面の中の超強いドラゴンに注目するだろ」

 心の中で、ムロはそう突っ込まずにはいられなかった。


(ともかく、動画に興味は持って貰えてるんだよね? いいんだよね? 心配になってきた……)


「私には高レベル過ぎたけど、なんか凄そうだったからSNSに載せておいたよ!」


(ナイス過ぎる!!)


 作戦は成功したようだ。


「え? そこまでする動画だった?」


 投稿者だとバレないように、あえて他人事っぽく話す。


(いや、自分でススメておいて何言ってるんだって感じだけどね)


 そう心の中で、思わず自分に突っ込んだ。


「うん! プロがススメてくれた動画だからね! あっ! ほら! 色んな人がコメントしてくれてる! やっぱり、凄い動画だったんだ!」


(うわ! 凄く見たい! これは登録者100人は行くだろ!)


 だが、これだけだと借りを作ってばかりなので、


「ただ回って来た動画見せただけなのに、そこまでさせちゃって申し訳ないですね。

 もしよろしければ、私にできることがあれば、今後協力しますので遠慮しないで言ってください」


「え!? それってプロの意見聞けるってこと!?

 じゃあ、ムロちゃんみたいに伸ばすにはどうすればいいのか教えて貰えたりする?」


 プロではないし、むしろナナミの方が伸びていると言える状況だが、ここはハッタリをかます。


「はい。策はあります。勿論、成功するかは分かりませんが」


 ナナミの配信を伸ばすことは、結果的に自分のチャンネルを伸ばすことに繋がる。

 おそらく、これからも先程の調子で言えばSNSで拡散してくれそうだからだ。


(そして、私は私で動画を作って伸ばす。そして、それが拡散され伸びる。そして、また作る。完璧な作戦だ)



 初心者ダンチューバーで登録者1万越えの天才ダンチューバーナナミが何気なくポストした、ギラのレッドオーガ瞬殺動画。


 この動画の件、そしてナナミが謎の探索者に助けられた件など、それらについて掲示板などでは議論がされていた。

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