↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もりとき怪談 第三集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/44

放課後のAさん


 私の通う高校には、旧校舎があった。

 ボロボロの旧校舎で、来年には取り壊しが決まってた。老朽化のため入口には鍵がかかってて入れないようになってた。

 でも実は、体育館に伸びる道の先にもうひとつドアがあって、そこの南京錠が壊れてたんだ。

 南京錠を引っ張れば、簡単に鍵が開いちゃう。

 だから、実質出入りは自由。男子も女子も、肝試し感覚で旧校舎に忍び込んでた。


 旧校舎にまつわる学校の七不思議はいくつもあったよ。


 黒板に書かれた日付が毎日書き換えられる教室。

 雨の日には瞳を閉じる理科室の人体模型。

 いつも奥の個室の鍵がかかっている2階の女子トイレ。

 深夜2時に『月光』を奏でる音楽室のピアノ。

 3階の美術室の窓から見える動く石膏像。

 女子学生が閉じ込められた階段の大鏡。

 なんでもない時間に唐突に鳴るチャイム。

 何度数えても段数が合わない西階段。

 うめき声が流れる校内放送。


 ……七不思議なのに7個以上あるんだよ。


 そんな感じだったから、よく友達と旧校舎に忍び込んでは、七不思議探検ツアーをしてたんだ。

 当然、何も起こらなかった。階段に鏡なんてなかったし、放送室も存在しなかった。女子トイレの鍵は全部開いてたし、西階段は間違いなく22段。

 でも一度だけ、変なことが起きたんだよね。


 友達と3人で放課後の旧校舎に忍び込んだとき、どこの教室か忘れたけど、教卓に埃をかぶった名簿が置かれてた。

 私達は興味本位でそれを開いてみたんだけど、その名簿には見知った名前がずらっと並んでた。その名簿は、私のクラスの名簿だったんだ。友達の名前も、私の名前もあった。

 私の名前は赤いペンで丸がついていて、翌日の日付が書かれていた。

 そしてもうひとり、Aさんの名前にも赤丸がついていて、いつだったかは覚えてないけど、過去の日付になってた。


 Aさんは2学期から学校に来ていなかった。いじめはなかったし、先生も何も言わないしで、私達にもAが学校に来なくなった理由は分からない。

 友達と「なにこれ……」「イタズラ?」とか言ってたんだけど、すっごい気持ち悪かったよ。

 なんで私の名前に丸がついてるの? この日付は何? って。

 そしたら、背後の扉がギィって鳴った。


 音に私達が振り返ると、そこにはAがいた。

 Aさんは顔をぐちゃぐちゃに歪ませて立っていた。制服を着ていて、スカートをぎゅっと握っていた。

 ぐちゃぐちゃに歪んだAさんの顔がすごすぎて、私達は何も言えなかった。

 Aさんの顔は悲しみと恨みが混ざったような感じだった。


「どうして、私だけ……!」


 Aさんの震える声が響く。私達は恐怖で固まってた。そんな私達に、Aさんは手を伸ばして、ぎこちない足取りで向かってきた。

 私達は何も言えないまま身を寄せ合って、状況を理解しようと必死だった。


 そのとき、唐突にチャイムが鳴った。キーンコーンカーンコーン……って。

 チャイムが鳴り終わると同時に、Aさんの体はすっと消えてしまった。

 Aさんが消えてしばらく呆然としてたんだけど、私達は口々に「ヤバい、ヤバい!」って言い合って一目散に駆け出したよ。

 その次の日、私は高熱を出して寝込んじゃった。

 高熱にうなされながら、「私、死ぬんじゃないか……。あの名簿に書かれた日付は、私の死を予言してたんじゃないか……」って思ったけど、翌日にはすっかり平熱に戻ってた。


 で、Aさんなんだけど、結局Aさんは3学期が終わっても学校には来なかった。

 私達、旧校舎で見たAさんの様子が気になって先生にAさんについて聞きに行ったんだよ。

 でも先生は言葉を濁すばっかりで、やっぱり何も教えてくれなかった。

 私が生きてるんだから、旧校舎で見た名簿に書かれた日付は死を予言するものじゃない。でも、学校に来なくなったAさんについては、嫌な予感が拭えなかったな。


 あの日、私達の目の前で消えてしまったAさんは、なんだったんだろう。

 幽霊……だったのかな。

 悲しみと恨みでぐちゃぐちゃになった顔でつぶやいた「どうして、私だけ……!」って言葉には、どんな意味があったんだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。