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もりとき怪談 第三集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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友達とゲーセン


 俺が中学の頃の話なんだけどさ。

 その日は塾があって、家に一回帰るのも面倒くさかったから、放課後に友達と一緒にブラブラ歩いてたんだ。

 塾までの道すがらに古い商店街があってさ。ほとんどシャッターがおりてるような、シャッター商店街だよ。シャッターがおりてなくても、やってるんだかやってないんだか分からない店ばっかりが並んでた。


 この商店街は今まで何回も通ったことがあったんだけど、その日はゲーセンの看板が目に入ったんだ。

 俺が「こんなところに、ゲーセンがある」って言ったら、友達は「どこどこ?」ってキョロキョロした。

 そのゲーセンは、地下にあったんだ。

 地上にある方の店は、シャッターがおりてた。シャッターには店の名前が書かれてたんだろうけど、上からペンキで塗りつぶされてて店の名前は分からない。

 で、その店の横に細い下りの階段があって、その階段の入口に目立たない感じで「POP LAND ゲームセンター」って書かれてた。


「いや、どう考えてもやってないだろ、これ」

「いいじゃん、ちょっと降りてみようぜ」

「不良のたまり場だったらどうすんだよ」

「お前をおとりにして、俺は逃げる」

「ひでぇ」


 とか言い合いながら、俺達は興味本位で階段を降りてみた。

 降りた先は、本当にゲームセンターだった。薄暗い店内では、騒がしくピコピコと音がしていて、筐体の光が妙に眩しかったのを覚えてる。

 俺達の他にもお客さんは何人かいた。でも筐体からの光のせいで、シルエットばかり濃く見えた。


 俺も友達もそれなりにゲーセンには行ってたんだけど、あまり見かけないゲームばっかり置いてあった。

 UFOキャッチャーとかもあったけど、流行りのキャラものはなくて、ぜんぶ知らないジャンルのぬいぐるみっぽかった。

 友達が筐体の前に座った。友達が選んだのは、単純なパズルゲームっぽかった。降ってくるタイルの色を4つ揃えると消える、みたいなシンプルなやつ。

 こういうのって案外ハマっちゃうんだよな。友達もすっかりハマっちゃって、俺はそろそろ塾に向かう時間になった。


「俺、もう塾行くけど」って声をかけたら、友達は「俺はもうちょっと遊んでいくわ。また明日、学校でな」って画面を見つめたまま答えた。

 そんな風に、俺達はいつもみたいに別れたんだ。

 これが、俺が友達を見た最後だった。


 翌日、友達は学校に来なかった。俺は先生から呼び出されて、何か知らないかと聞かれた。

 俺は商店街のゲーセンで別れたっきり、その後は会ってないって答えたよ。

 でも先生は首を傾げて「そんなところに、ゲーセンなんてあったか?」って言うわけ。だからその日の放課後、先生と一緒に商店街のゲーセンに行ったんだけど、ゲーセンはなくなってた。

 なくなってたっていうか……。

 ゲーセンに行くための下り階段がなくなってた。


 シャッター商店街だからどこも似たような感じなんだけどさ、場所を間違ったってことはないと思う。

 先生と一緒に商店街を端から端まで歩いたんだけど、ゲーセンは見つからなかった。

 先生は商店街にある作業服専門店のおじさんに聞き込みまでしてた。おじさんは「ゲームセンター? 昔はあったと思うけど、もう潰れたでしょ」って言ってた。


 結局、友達は見つからなかった。

 その商店街は塾への通り道だったからさ、俺はその後もその商店街に行くことがあるんだ。

 だから、ゲーセンのあった辺りを通るたびに、階段が現れていないか確認してた。

 まぁ、階段が現れることはなかったんだけどね。

 階段が現れたとしても、降りていく勇気が俺にあったかは分からない。


 でもときどき、ゲーセンのあった辺りからピコピコ音がすることはあったよ。ドア一枚を隔てた向こう側でしているって感じのピコピコ音。

 階段はなくなっちゃったけど、友達はまだ、あのゲーセンで遊んでるのかな。



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