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もりとき怪談 第三集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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地蔵の祟り?


 これは、俺が夜な夜なバイクで暴走してた、学生時代の話だよ。

 今はそんな迷惑行為はしてないから、若気の至りだと思って見逃してくれ。本当に反省してます。

 俺はちょっとケンカが強かったから、先輩に可愛がられてさ。俺にバイクを教えてくれたのも、その先輩ね。

 その日の夜も、改造マフラーで爆音を轟かせながら仲間と町を走ってたんだよ。

 そしたら、先輩が急にバイクを停めたんだ。


 そこには、地蔵があった。

 別に寺があったわけじゃなくて、時々、道端に地蔵がポツンとあることあるじゃん? そんな感じだった。

 柱に屋根がついた程度の小さな社に、地蔵が一体。誰かがつけたのか、手編みの帽子とよだれ掛けをつけてた。

 俺は前からよくこの道を通るから、ここに地蔵があることは知ってた。でも先輩は、初めてこの地蔵の存在を知ったんだろうな。


 先輩はそれを面白がって、蹴っ飛ばしたんだよ。

 重たいものが倒れるゴツッて音がした。見ると、地蔵の首が折れてゴロリと転がっていた。

 俺達はこれはちょっとヤバいんじゃないかと思って引いてたんだけど、先輩はゲラゲラ笑いながら「首、取れてやんの〜」って言って、またバイクを走らせた。

 俺達も遅れて、先輩の後を追った。


 翌日、その道を通りかかったときには、地蔵は元に戻されてた。だけど地蔵の頭は元に戻せなかったみたいで、頭のない胴体だけが社の中に立ってたんだ。

 近所のばあさん達が立ち話してて「誰かが壊したんだ」「こんなの、バチが当たるよ」って怒ってた。

 まぁ、そのときは俺も特に気にしてはいなかったよ。


 でも、数日後の深夜にコンビニに行ったとき、その道を通ってさ。

 ちらっと地蔵の方を見たんだ。

 そしたら、頭がないはずの地蔵に、頭があるんだよ。それは、元の地蔵の頭じゃなかった。

 地蔵に乗っかってたのは、先輩の頭だった。虚ろな目をした無表情の先輩の頭だったんだ。


 俺は「え?!」と思って、目をこすってよく見てみた。

 もう一回見たときには、先輩の頭なんて乗ってなくて、そこには頭のない地蔵の胴体があるだけだった。

 こんな幻覚を見るほど信心深かったのかと、自分のことながらちょっと驚いたよ。


 そんな幻覚を見た次の日にさ、バイク仲間から、先輩がバイク事故を起こしたって聞いたんだよ。

 なんせあんな幻覚を見たばっかりじゃん?

 俺、思わず「先輩、死んだの?」って聞いたんだよ。そしたらバイク仲間は「勝手に殺すなよ。でもかなりひどい事故で、まだ意識が戻らないらしい」って言ったんだ。

 俺はてっきり、地蔵の祟りで先輩は死んだもんだとばっかり思ったよ。

 なんなら、都市伝説の首無しライダーみたいに、先輩の首がすっぱり切れる妄想をしてた。

 それで、先輩の頭が、あの地蔵の胴体に乗る……みたいな妄想。


 先輩は奇跡的に意識を取り戻したよ。

 でも事故の後遺症でさ、首から下の体が一切動かなくなっちゃったんだ。

 1回お見舞いに行ったんだけど、先輩は生きる希望が見いだせなかったんだろうな。話しかけても無表情で、虚ろな目をして天井を見上げては「あぁ」とか「うん」とか、返事をするだけだった。


 先輩がこんなんだから、リーダーを失った俺達は、バイクで深夜暴走をすることもなくなったよ。

 正直、先輩があんなことになって、ビビってたのもあると思うよ。みんな、これからの人生が大事だし、自分が可愛いじゃん。

 先輩みたいにはなりたくないよ。


 先輩の見舞いには1回行ったきり、それ以降、先輩がどうなったのかは知らない。

 今どこにいて、生きているのか死んでいるのかも分からない。

 俺、しみじみと思うんだけどさ。

 あの当時、20歳にもなっていなかった先輩が、首から下が動かないまま一生を過ごすんだ。

 先輩の、虚ろな目。


 こんなこと言っちゃ悪いけどさ、いっそのことあっさり逝けた方が幸せだったのかも、と思っちゃうんだ。これは、もし俺だったらって話ね。

 それこそ、「一生苦しめ」っていう地蔵の祟りだったんじゃないかって、思っちゃうんだよね。



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