↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もりとき怪談 第三集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/41

私、神様に愛されてるの


 小学校5年生のときに同じクラスになったYちゃんは、ちょっと変わった子でさ。

 いわゆる不思議ちゃんっていうのかな。クラスではそういう扱いだったよ。

 成績も普通だし、見た目は普通よりちょっと可愛かったかも。でもいつも「私は神様に愛されてるの」って言ってた。

 私達からみて、Yちゃんは特別に運がいいとかじゃなかったけど、本人はそう思ってるのかなって、私は受け止めてた。

 本人がラッキーだと思うことがいっぱい起きてたら「私は神様に愛されてる!」ってなるでしょ? 何がラッキーかなんて、本人の受け取り方に寄るから、他人には判断できないよね。


 で、ある日、私はゴミ当番だったから、教室のゴミをゴミ置き場まで運んでたのね。ゴミ置き場は校舎裏にあったんだけど、校舎裏の花壇のところにYちゃんがひとりでいるのを見つけたんだ。

 まるで夢見心地って感じのうっとりとした表情で、目を閉じてる。そのときはなんとなく声をかけづらくてさ。私、後になってYちゃんに何をしてたのか聞いてみたんだ。

 そうしたらYちゃん、ちょっと照れたように頬を赤らめて答えたの。


「やだ、見てたの? 他の人には内緒にしてね。実は……神様とキスしてたの」


 さすがに引いたよね。

 小学5年生にもなれば分かるよ。Yちゃんが普段言ってる「神様に愛されている」っていうのは、親が子どもに向ける愛情とは違う。つまり、神様と恋愛関係って意味なんだと思った。

 いくら思い込みが強くたって、そうは考えなくない?

 私はそれから、Yちゃんとはあんまりかかわらず、遠巻きに見るようにしてた。


 Yちゃんの言動は日に日にエスカレートしてきてさ。

 休み時間に誰もいない空中に向かって話しかけたり、廊下で誰かと手を繋いでいるかのように左手を体の横にさし出したまま歩いたり。

 クラスの輪からは徐々に外れていって、次第に誰もYちゃんには話しかけないようになっていた。

 でもYちゃんは嬉しそうだった。

 グループ分けや班分けで嫌がられたり、露骨に「気持ち悪い」って言われても、全然気にならないみたいにニコニコしてた。


 そんなある日の授業中、静かだった教室に急に椅子が倒れる音がしたの。

 私はびっくりして、音のした方を見た。

 Yちゃんだった。Yちゃんが立ち上がって、椅子が後ろに倒れたんだって分かった。

 そしてYちゃんは、うっとりした顔をしてた。

 私は校舎裏で見たYちゃんを思い出した。

 神様とキスしてたって言ってたYちゃん。まさに、あのときに見た表情だった。


 Yちゃんは自分に注目が集まってるなんて気にしない様子で、顔を少し上に向けて、口を開いた。

 そうしたらね、聞こえたの。リップ音。ちゅっ、ちゅっ……って。何度も。

 すごく生々しい音だった。

 もしひとりでリップ音を出すとしたら、口を閉じないといけないでしょ? でも、Yちゃんの口は開いたまま。リップ音なんて出せる状況じゃない。それなのに、リップ音が聞こえるの。


 先生も、私達も、呆然としてYちゃんを見てた。

 すると突然、Yちゃんが短く叫んで、口をさらに大きく開けた。

 そしてYちゃんの口から、大きなカエルが出てきた。ぼたぼたと、カエルだとか、ムカデだとか、名前の分からない虫が這い出てくる。

 Yちゃんは「あ、が、ご、ご」みたいな叫び声を上げ続けてた。

 もう、クラスは大パニック。

 我先にとクラスから飛び出していく生徒たち。私と一部の生徒だけが逃げ遅れた。

 クラスの床にはカエルや虫が這っていて、私達は机の上にのぼってただただ怯えてた。

 やがてYちゃんの口から何も出なくなると、Yちゃんはそのままバッタリ倒れ込んじゃった。


 そこからは先生が慌ててYちゃんを保健室に連れて行って、別のクラスの先生達が来て、教室を片付け始めた。別の学年の女の先生が私達を慰めてくれたけど、私は何も考えられなくてぼんやりしてた。

 しばらくして先生が戻ってきて授業をやったんだ。でも、その日1日は私も含めてみんな上の空だったと思うよ。

 結局その日から、Yちゃんは学校に来なくなって、学期が変わった頃に引っ越ししたって先生から聞いた。


 神様が実在しているのかって、私はよく分からないけどさ。

 でも、あの日に聞いたリップ音。

 あの日の教室には”何か”がいて、確かにYちゃんと愛し合っていた。私にはそんな気がするんだよね。

 Yちゃんはそれを神様って呼んでたけどさ。あの日のYちゃんを見て、それが神様だったとは、到底思えないよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。