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もりとき怪談 第三集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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みつけないで


 俺がまだ小学校にあがる前の、ちょっと不思議な体験。

 俺自身も、夢だったんじゃないかなと思ってるんだけどね。周囲の話を聞いてると、これ、俺自身になんか変なことが起きてたみたいなんだ。


 俺は大学進学とともに都会に出てきたんだけど、小さい頃はすごい田舎に住んでたんだよ。

 見渡す限り、畑と雑木林と山ばっかりでさ。でかい家がぼこぼこ建ってて、隣の家に行くまでに5分かかったりする感じ。

 まぁ、そんな感じの土地だから、みんな家族みたいな感じでさ。子どもの数も少ないから、その辺に住んでる子どもは年齢に関係なくみんな友達なんだよ。

 雨の日なんかは、誰かの家に行ってさ、家の中で遊ぶんだ。

 でかい家だから、かくれんぼとかして遊ぶのね。

 その日もかくれんぼをしてたんだけど、そのとき、どうも俺が家の中で行方不明になったみたいなんだよね。


 かくれんぼでは、俺は隠れる方でさ。

 俺、押し入れに隠れることにしたんだよね。

 押し入れを開けたら下の段に衣装ケースが入ってて、上の方に布団があった。布団の中に隠れたいと思ったんだけど、小学校にあがる前だからさ、背が届かなかったんだよ。だから仕方なく下のスペースで入り込めるところはないか見てたんだ。

 そうしたら上の方から「ジュン坊」って俺を呼ぶ声がする。あ、俺、ジュンって名前で、みんなからは「ジュン坊」って呼ばれてたんだ。

 で、上を見たら、押し入れの天井から、白い細い腕が伸びてるんだよ。腕の主は見えなかったから、すごい長い腕だった。でも俺、小さかったからそこにはあんまり疑問をもたなかったんだ。

 それで、天井から伸びて来た手が、俺の目の前でうにうにと動いてる。まるで「掴まれ」と言ってるみたいで、俺は素直にその手を掴んだんだ。手を掴むと、体がぐいっと上に引っ張り上げられる感覚があった。


 気が付くと俺は、見知らぬ部屋にいた。天井が低くて、柱がいっぱいある部屋だ。窓や電気はないんだけど、それでも明るかった。

 俺の目の前には女の人が座ってたんだけど、不思議と、この女の人がどんな容姿だったのかは覚えてない。

 でもニコニコしてて、やさしそうだったのは覚えてる。

 唯一覚えてるのは、その女の人が紙を持ってて、その紙に「みつけないで」って書かれてたこと。全部ひらがなだったから、俺にも読めたんだ。

 俺、「お姉さんは誰? どうして僕の名前を知ってるの?」って聞いたんだけど、お姉さんは何も言わなかった。

 俺はいろんなことを聞いたんだけど、女の人は何も答えない。そうして俺に、持っていた紙を渡してきたんだ。「みつけないで」って書いてある紙ね。紙は、半紙みたいなペラペラの紙だったよ。


 女の人は何も話してくれないし、俺はたぶん暇になったんだろうな。気が付いたら寝てたみたいなんだ。

 で、目を覚ましたら、友達ん家のばあちゃんが、俺のことを濡れたタオルで拭いてたんだ。

 周りにいたみんなが「ジュン坊が起きた!」って言って、「大丈夫?」って聞いてくるから、俺、何が起きたのか分からなくて、キョトンとしたよ。

 どこにいたのかって聞かれたから「お姉ちゃんにひっぱってもらった」みたいなことを答えた記憶がある。

 その後、どういう経緯か忘れちゃったけど、なんかその友達ん家でお祓いみたいなのをしてもらったよ。


 で、この間、実家に帰ったらそのときの話になってさ。

 かくれんぼをしてる間、俺、行方不明になってたらしいんだよね。どこを探しても見つからないって、みんなで青くなって家の中を探したらしい。

 そうしたら、天井でミシッて音がして、友達ん家のじいちゃんが天井裏を覗いたら、俺がそこで寝てたんだって。

 でも、押し入れは小さな子どもが登れるような高さじゃなかったし、どうやって俺が天井裏に行ったのか分からないと。

 俺の記憶の中でもさ、押し入れに登れなくて女の人に引っ張ってもらったって感じだから、俺にもよく分からないんだよね。

 友達ん家にいた、「みつけないで」って紙を持った女の人は、何者だったんだろうな。 

 


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