差し押さえ
私『・・・おはよ。』
公子『ど、どうしたの!?色葉、元気ないじゃない。』
私『母さんから、バチンっていかれたの・・・朝っぱらからヒリヒリする・・・。』
公子『また、なんで・・・』
私『長くなるから歩きながら話そう。遅刻は嫌でしょ。』
昨日、シャンプーが切れてたから、母さんが帰ってくるまで起きてて・・・
私『母さん、シャンプー切れてたよ。切れるまでに補充くらいしてよ。』
母『私も仕事してるから、色葉も協力して。切れそうになったら近くのお店で・・・。』
私『私は失恋したから・・・。』
バチンッ!!
私『ぶるわっ!?痛っ!!』
母『色葉は被害者だから停学はおかしいと思ってた。まさか、不純異性交遊なんて・・・私が一番、心配してたのに・・・。』
私『私の人生に口出ししないでよ!!』
母『お父さんがいないから私が叱るしかないの。私も娘の頬を叩きたくなんかないわよ・・・。』
私『今度、家出すると決めたら絶対に帰らないから!!もう一度、考え直してって言いに・・・。』
バチンッ!!
母『男を頼っちゃダメだって!!食い物にされるだけなんだから!!』
私『こんな汚い家で純白でいるより、外で潔く食い物になった方がマシだもん!!』
母『なんてこと言うの!!そんな風に育てた覚えは・・・。』
私『こんな風に育っちゃったんだから、言い訳しないでよ。母さんみたいに暴力的な女には育たなそうだから安心して。』
ということで・・・
私『今、気持ちはとってもブルーだよ。』
公子『あらら・・・今日は午後の練習ないから、遊んで嫌なこと忘れようよ。』
私『うん・・・また、映画?』
公子『ショッピング。』
放課後、公子と停学中の私は人気らしいショップに来ていた。
公子『流行りモノが置いてるんだよね。』
私『ん・・・あれ、人見・・・。』
店の奥に人見がいた。私は声をかけるか、かけまいか悩んだ。悩んでいると、あっちが気付いて声をかけてきた。
人見『あ、白瀬もここ来てんのか?』
私『いや、公子に誘われて、今日初めて来たの。人見は常連?』
人見『まあ、たまに来るけど。』
短い沈黙は気まずさの証拠。私は聞きたくても、あの事を聞けない。
公子『この服、人見くんに似合いそうだよ。』
私『・・・こっちの方が似合うと思うけど。』
人見『なんだよ、お前ら(笑)白瀬、なんか元気ないな。』
私『また、母さんと喧嘩したの。』
人見『・・・そうか。二人とも、なんか食う?』
人見は一人暮らしだからバイトをしてるんだ。私は人見に今朝の喧嘩の内容を話した。
私『『停学中なんだからバイトくらい始めたら?』だって。』
人見『バイトの経験って後々プラスに働くぞ。俺なんか学校でサボってるから、バイトの経験くらいないと、どうしようもなくなるからな(笑)二人は将来、働くのか?最近、うるさいじゃん。男女雇用機会なんちゃらってやつ。』
公子『私は大学を出て働くつもりよ。ちょうどいい時期に法律が出来たんだから。女も働けって国に言われ出したんだよ。その期待に応えなくちゃ。』
私『将来のことなんてわかんないよ。でも、国から働けって言われてるのか・・・もし、就職しないで、パートで食い繋いだり、主婦として家庭を守っていても、働かない男みたいに色々言われるような、厳しい世の中になっちゃうのかな。』
公子『色葉は料理上手で手先は器用だから、主婦として、やっていけると思うけど、私はそういうの苦手だから、そういう世の中で構わないかな。でも、主婦で頑張ってる人たちを見下したりするのは違うと思う。人見くんは亭主関白になっちゃう?』
人見『俺?・・・どこまでが愛妻家で、どこからが亭主関白かが良くわかんないんだよな。』
公子『命令したら、もう立派な関白様だよね。まだ晩飯出来てないのか、とか言われても仕事があるしー。主婦になったら言い訳出来ないよ。』
私『品定めすれば大丈夫。万が一、豹変しても、離婚すれば慰謝料取れるんだから。』
公子『ははは、人見くんの顔が強張ってる(笑)不良の中でも軟派な方でしょ?女の子なれしてるから。』
ガラガラガラ
話をしてると見るからに不良っぽい二人が店内に入ってきた。
山田『二人とも、アイスコーヒー。』
田所『なあ、あいつ、女二人連れてんぞ。』
ん・・・なんか、視線を感じる。
人見『二人は軟派と硬派、どっちが好みなんだ?』
公子『うーん、硬派かな。』
人見『白瀬は?』
私『・・・。』
人見『白瀬?』
私『近づいてきてる。』
山田『なあ、こいつのどこがいいんだ?』
その人は人見の頭を掴んだ。
田所『こいつ震えてるよ、ビビっちゃった?』
ギャハハハハハ!!
私『人見・・・。』
人見『お前ら帰るぞ。』
田所『あ?逃げんのかよ。』
山田『髪型バッチリきめて、シャバ蔵かよ。舐めてんな。あん?』
人見『どけ。』
私『け、喧嘩はやめようよ・・・。』
睨み合いを続けてる。あーやだやだ。一人が人見の胸ぐらを掴んだ。
人見『見ての通り、女二人連れてんだよ。話は、この二人を帰してからにしてくれないか。』
二人組は納得してくれたみたいだ。私たちは解放された。
私『はあ・・・怖かった。』
公子『人見くん、停学中に喧嘩したら退学じゃない?』
私『知らないよ・・・私は明日、停学が解けるけど。』
公子『あ、そうだったね。机の中に2週間分のプリントが溜まってるよ(笑)』
私『うへえ・・・。』
家に帰ると、母さんが居た。仕事は?
母『色葉、ちょっと来なさい。』
私『・・・。』
母『来なさい!!』
私『うるさいな。何。』
そこには私のレコードや本が紐で縛られていた。
私『な・・・勝手に部屋に入ったの!?』
母『明日から停学が解けるから、写真集なんか必要ないでしょ。レコードも、こんなのばかり聴いてたから・・・。』
私『ふざけるのもいい加減にしてよ!!私のお小遣いで買ったものなのに!!』
母『お小遣いは今月まで。来月からはバイトしなさい。バイトが決まるまで、レコードも本も預かっておくから。』
私『そんな・・・お、鬼め!!』
母『鬼と呼ばれて結構。色葉には失敗して欲しくないって・・・。』
私『もっと激しいの聞いてやる!!ラウドネスとか聞いてやる!!』
ガチャ!!バンッ!!




