飯塚先生
キーンコーンカーンコーン
公子『元気だして。コロッケあげるから。』
ぱくっ・・・もぐもぐ・・・うま。
私『酷すぎるよ・・・大事なレコードと本が紐でぐるぐる巻きにされたんだよ・・・。』
公子『人見くんも言ってたじゃない。バイト始めたら?』
私『喧嘩したあとだから、母さんの思い通りになっちゃうのが嫌だ。ご飯も欲しいなあ・・・』
公子『いつもはおかず限定だけど、今日は特別だよ。はい、あーん。』
ぱくっ・・・白米、うま。
私『最近、お米が食卓に出ないんだよね・・・昨日は母さん居たのに味噌汁だけだった。』
ガラガラガラ
飯塚『白瀬、いるか。』
私『あ、はい!!』
飯塚『生活指導室に来い。』
生活指導室・・・?私、今日登校してきたばかりだから、何も悪いことはしてないはずだけど・・・。
ガラガラガラ
私『失礼します。』
飯塚『久しぶりだな。停学中は大人しくしてたか。』
私『まあ・・・はい。』
飯塚『人見との件だが・・・無理やりか?』
私『え・・・。』
飯塚『人見が室伏とグルだった可能性もあるだろ。その場合は、人見も少年院に送ろうと思う。』
私『・・・人見くんは何も悪いことしていません。不純異性交遊は悪いことかもしれないけど・・・私から誘ったんです。』
飯塚『そうか・・・人見と白瀬の接点が良くわからなかったんだ。白瀬は不良じゃないもんな。』
私『そうですね・・・真面目でもないですけど・・・人見くんは、どうしても来月からですか?』
飯塚『ああ。あいつは定期的に停学になるから、全く堪えてないだろうけどな。』
私『今回は人見くんも悪さをしたわけじゃないので、停学は明日まで・・・とか・・・出来・・・ないですよね!!あはは。』
飯塚『まあ、当事者の白瀬の言葉だから、職員会議で提案してみよう。よし、次の授業に遅れるなよ!!』
私『は、はい!!失礼しました!!』
ガラガラガラ
不純異性交遊について説教を喰らうのかと思ってたけど、人見の自作自演の可能性を聞かれただけだった。もしかしたら、人見は説教を受けるかもしれない。二人とも被害者なのに・・・一応、飯塚先生には人見は何も悪くないと伝えたけど大丈夫かな・・・。
と、心配してたのもつかの間、放課後は担任の大山先生に呼び出されて説教を受けた。あんなに起こってる大山先生なんて初めて見た・・・どうやら、この学校では女子生徒の非行は女の先生が、男子生徒の非行は男の先生が請け負うことにでもなっているのだろう。変な慣習。
昨日は行けなかったから今日は髪を切ろう・・・財布の中が寂しくなるけど。
髪を切り終わり人見の家へと向かった。昨日のことも気になるし。
ピンポーン
人見はチェーンをはめたまま、少しだけドアを開けた。
人見『白瀬か・・・。』
私『入っていいかな。』
チェーンが落ちた。人見の顔は赤く腫れていた。昨日の二人組にやられたのだろう。右手は後ろに隠している。
私『もしかして、右手折れてる?』
人見『右掌だ・・・。』
私は人見の掌を触診してみた。なんにもわからないけど・・・。
私『痛い?』
人見『・・・あまり押すなって。』
私『あ、ごめん。傷だらけの男の人を間近に見るのは初めてだから・・・手当しなくちゃ・・・。』
人見『一日寝て、また起きれたから大丈夫だ(笑)包帯なんか携帯していない普通の女の子だろ?』
私『包帯!?包帯なんか持ち歩いてる娘なんているの!?(笑)』
人見『いるんだよ・・・それよりも短い髪は俺への当てつけか?(笑)』
私『違うよ。昨日のことが気になったから、来てみたんだ。でも・・・私の何がいけなかったのかも聞きたいな。』
人見『何か悪いところがあるなら縁を切ってるだろ・・・俺は髪切ろうかどうか悩んでる。今日、停学切れたんだよな。どうだった?』
私『大山先生から怒られた。『なんで、よりにも寄って人見くんなの!!』って言われちゃった。』
人見『そろそろ、大人に逆らうのやめて、真面目な顔して生きて見ようかな。』
人見はそう言って寝転んだ。
私『・・・友達だけど横に寝てもいい?』
人見『ああ。』
私『私、今日も帰りたくないんだよね。母さんと喧嘩しちゃったから。』
人見『あまり親を心配させんな。体が弱いんだろ?健在なうちに人生の教訓でも聞いとけよ。』
私『・・・ちょっと老けた?』
人見『気のせいだ。』
やっぱり、人見は私が気に入らなかったんだ。つまらない男の真似をしだした。人生の教訓なんか、あの母さんの口からは飛び出さないよ。
ピンポーン
誰か来た。まさか人見の悪友・・・?
ガチャ
飯塚『人見・・・ん、白瀬?』
私『あ、飯塚先生!!ち、違うんです!!今日は人見のお見舞いで・・・。』
飯塚『人見、停学は今日までだ。それと一週間分の材料だ。』
飯塚先生はパンパンに膨らんだスーパーの袋を仰向けの人見の前に置いた。
私『先生、これは・・・?』
飯塚『人見が両親を亡くして一人暮らしだと小耳に挟んでから支援してるんだ。素行は改善しないけどな(笑)』
飯塚先生が優しい顔で笑っているところを初めて見たかもしれない。
私『せ、先生。』
飯塚『なんだ?』
私『今日、生活指導室に呼び出されたとき、不純異性交遊の件で怒られると思ってたんです。でも、怒られなかった。それは何故ですか・・・?大山先生には怒られたので・・・。』
飯塚『俺はこういう問題が起きたとき、必ず女子生徒から話を聞くようにしてる。大人の世界でも女が無理やりだったと言えば、その言葉が尊重される。それが冤罪の原因だったりするんだけどな。逆を言えば女が男は悪くないと言えば、その意見が尊重される。』
人見『それ・・・もしも、白瀬が無理やりされたって主張してたら、俺はどうなってたんだよ。』
私『少年院行きだったって・・・多分、今日連れて行かれてたんだよ。』
飯塚『ああ。白瀬に愛されてたから良かったな。いつから付き合ってたんだ?』
私『実は事件の日の前日から・・・怒られそうかな・・・あはは・・・。』
飯塚『俺は男女間のことについては説教しないぞ。レイプの事案はまた別だけどな。もう、二人とも高校生だ、漫画でもいい、雑誌でもいい、男はビデオも観始める頃か、それなりの知識はあると信じてる。何も考えずにしたわけじゃないだろ?』
人見『俺が持ってたから。』
私『うん。もしも、持ってなかったら・・・途中で諦めてたと思う・・・。』
飯塚『そういう知識だけで十分だ。ただ、どんなに養える自信があっても、どんなにこの人の子供が欲しいと思っても、卒業するまでは妊娠騒動起こすなよ。妊娠したら退学になるからな。』
私『先生は『あんなもんは退学だ!!』が口癖だったような・・・。』
飯塚『ここだけの話、俺が生活指導を務めてからの退学者はたったの三人だ。妊娠騒動の奴らと室伏な。退学者が出ると心が痛む。あいつら将来どうするんだろうな。』
人見『あいつはヒモで食っていける。』
ヒモか・・・でも、室伏にもプライドくらいあるだろう。
飯塚『お前らは将来どうなるんだろうな。』
私『お前らって・・・私たち、セットで聞いてます?』
人見『・・・。』
飯塚『今のところはそうだろ?』
私『これはさすがに怒られそうだなあ・・・私たち、もう友達に戻ってるんです・・・。』
私は先生に事を話した。
飯塚『なるほど。人見、起き上がれ。』
人見『なんだよ・・・。』
飯塚『俺は帰るけど、白瀬にちゃんと説明しとけ。じゃあな。』
ガチャ
先生は帰って行った。人見はまた横になる。
人見『はあ・・・。』
私『な、何か、元気が出るような料理でも作ろうか?』
人見『早く帰った方がいいぞ。もう、暗いし。』
私『・・・暗いと分かっているなら、家まで送ってよ。』
人見『わかった。右掌が負傷してるから歩きでいいか?』
私『うん。』




