開錠
私は人見に事を話した。涙で顔がぐちゃぐちゃ・・・。
人見『本当に襲われたと思ってるのか。』
私『だって、いきなり抱きつかれて、無理やりキスされて・・・夫婦でも、行き過ぎでしょ・・・。』
人見『怖いもんな。言葉も無しに抱きつかれるなんて。』
人見は私の涙を拭きながら理解してくれた。やっぱり、私は人見と結婚するべきだったんだ・・・なんで、あんな乱暴で・・・何も出来ない・・・見せかけだけの男なんかと・・・。
人見『止まらないな、涙。』
私『だって・・・だって・・・。』
人見は何度も涙を拭いてくれる・・・どうせ、止まらない涙・・・私は人見の胸に飛び込んで、声を出して泣いた。
私『残りの人生は幸せになれると思ってたのに!!人生をやり直せるなら死にたい!!死んで公子みたいな生き方をすれば・・・。』
人見『死にたいなんて簡単に言うな。』
私『私の人生は母さんから産まれた時点で狂ってたんだよ!!母さんから産まれていなかったら、草なんて知る事もなかっただろうし、人見とも結婚出来たし・・・』
人見『死んだ母親に自分の罪をなすりつけんな。』
私『人見まで私を見捨てるの!!私は・・・。』
人見『仏さんに責任転嫁して改善するものがあるのか?』
私『・・・。』
人見『自分の気持ちは晴れるかもしれないけれど、周りは何も変わらない。違うか?』
私『そんな難しいこと・・・高卒の私にはわかんないよ・・・。』
人見『ははは、何言ってんだよ。俺も高卒だぜ(笑)それも、ギリギリ卒業出来たんだ。』
泣きついた私を説教しながらも、ずっと抱き締めてくれてる。私が怖がらないように、時々、笑い話を挟みながら。
人見『佐村も怖がらせるために、いきなり抱きついたわけじゃないと思うんだよ。不器用だろ、あいつ(笑)不器用なりに工夫したのが結果的に裏目に出たんだな。』
私『・・・人見だったら傷ついた女を、どう抱くの。』
人見『俺?』
人見は私の首筋にキスをしながら呟いた。
人見『一度開いた扉が再び閉じてしまったとき、それを開けるのは誰だと思う?』
私『一度目にその扉を開いた人・・・かな。』
人見『正解。』
あれ・・・何故、人見は私の胸を開くのだろう。何故、私は抵抗しないのだろう。
耳元から足先まで人見の慣れた舌が私の体を這う。高校生のときとはまるで違う。
私『な、なんで・・・私を抱く気になったの・・・。』
人見『さすがに可哀想だと思ったから。』
指は遊ばせれば遊ばせるほど不思議な感覚になる。少し前までは、こんなこと慣れっこだったのに、吐息が漏れる。私は人見の思い通りに鳴いている。
人見『佐村はこんなことしてくれてたか?』
私『サムは・・・自分のことばかり・・・考えてたから・・・。』
人見はシャツを脱ぎ捨てて寝転んだ。
私『今度は私の番・・・サムは、何してるんだろう・・・夕食は作れたかな・・・。』
人見『やっぱり気になるんだろ(笑)帰るか?』
私『・・・もう、帰りたくない。そっちも、こんな中途半端で帰したくはないでしょ。』
人見『そうだな・・・最後まで行かないとな。』
人見は起き上がって、私に短いキスをして、私は仰向けになる。怖い・・・人見でも、怖い・・・。
人見『・・・。』
私『・・・しないの?』
人見『焦るから恐怖心が出てくる。気持ちが処女に戻ってんだよ。力を抜けば怖くない。』
まだ始まってもいないのに、シーツを強く握りしめていた・・・それを人見は見逃さなかったんだ。
私『いつでも・・・大丈夫だよ・・・。』
優しく、ときには激しく、私は人見に体を預けた。揺れる体を支えられるのは久しぶり・・・ゆらゆら揺れるのも・・・。
私『んん・・・。』
人見『あ、起きたか(笑)旦那が謝りたいことがあるってよ。』
私『え・・・。』
寝ぼけ眼を擦ると、テーブル越しにサムが座っていた。
私『・・・。』
佐村『俺が軽く考え過ぎてたみたいで、笑ってくれると勝手に思い込んでた。怖かったんだよな。お互い目と目を合わせて話したいんだ。』
サムは私のシーツを捲ったから、とっさに丸まったけど・・・服は着てた・・・どういうこと・・・。
私『そういうとこだよ・・・急に捲るのも、怖いんだから・・・。』
佐村『ごめん。』
ちらっと人見を見ると合図してる。パーティーのときと同じだ。笑えだって。
佐村『俺も指摘されたら、改善するように努力する。優しさが足りないんだよな。』
私『もう・・・無理だって・・・私は人見と暮らす。』
その方が幸せだから・・・。
佐村『・・・そうか。短かったな。』
私『そうだね・・・公子に負けちゃった。』
公子に負けた。また、公子に負けた。子供も作れなかった。結婚生活も長続きしなかった。どう足掻いても公子には敵わないんだ。
人見『白瀬。俺が好きなら、俺の頼みを聞いてくれるか。』
私『頼み?』
人見『佐村を許してやってくれ。』
佐村『人見・・・。』
私『え・・・さ、さっきから、変だよ人見。私たち、愛し合っ・・・てた・・・。』
人見は人差し指を立てて自分の鼻の真ん中に添えた。そう、あれは夢じゃなかったんだ。でも、それだと私は抱かれ損・・・。
人見『佐村、一旦帰れ。白瀬は俺が送り届けるから。』
佐村『ああ・・・色葉、俺は本気で謝ってるんだからな。』
サムは出て行った。絶対に帰るもんか。私はここで暮らすんだ。
私『あ、あの・・・人見さ・・・私を抱いたよね?』
人見『抱いた?友達の嫁を?さあ、どうだったかな(笑)』
私『本当のことだけ教えて。私の頭がおかしいとは思いたくない。』
人見『お前の頭は正常だよ。恋人にはなれない。フレンドで終わんないと、お前の母親から雷落とされるからな(笑)』
私『あ、下ネタ。』
人見『早く佐村を安心させてやれ。ここだけの話、お前が家を出てすぐに、あいつから連絡が来たからな。』
私『保身のためでしょ。私が自殺でもしたら、自分に罪が来るから、それを軽くするために・・・。』
人見『想像力豊かだな(笑)』
私『・・・サムのところに戻ったら、私は抱かれ損だよ。』
人見『再び閉じた扉が開いたんだぜ、損だったか?』
人見は私に青いブラを手渡した。
私『あ・・・ノーブラだった・・・?』
人見『外し方はわかるんだけど、着け方はわかんなくてさ(笑)佐村が来るって言うから、服は着せとかないとまずいだろ?』
私『サムにバレたら・・・まずいもんね。』
人見『佐村はすべて知ってるぞ。』
私『え!?』
人見『佐村から電話があったことは話しただろ。そのときに言われたんだよ。『色葉の閉ざされた扉を開けることが出来るなら、開けてやってくれ。』って。』
私『・・・。』
人見『あんな男、中々いないぞ。長い沈黙の後に、この言葉だ。『早く幸せを共に掴みたいから。』佐村は自分よりも俺の方が確かな鍵を持っていると思ったんだろう。』
私『・・・。』
人見『扉を開けるだけだぞって念を押されたんだ(笑)扉を開けるのはいいのかよ!!って感じだよな。まあ、俺はスケベだし、断る理由はないし、高校生の頃から気持ちは変わってないし。白瀬?』
私『高校生の頃に戻りたいね・・・。』
人見『戻れないけどな。・・・佐村が腹を空かして待ってる。二日間、夕食抜きだろ?(笑)』
私『そういえばそうだった(笑)近々、大きなライブに参加させて貰うらしいから、スタミナがつくものを作ってあげなくちゃ。』
人見『俺も佐村のバックで叩くんだけど。』
私『お弁当二つ持たせるよ。』
人見『おっ、帰る気になったか(笑)』
私『サムが刺されて私が看病してたから、今、元気に笑ったり、怒ったり、泣いたり・・・泣きはしないか、拗ねたり、出来てるんだよ。その見返りを貰わないと納得出来ないもん。』
帰ったら、欲しいバッグを買って貰おう。気持ちを落ち着かせて、また一から私の事を理解して貰おう。子供を授かるのは、その後になるかな。・・・本当に子供を授かって笑顔で産めるのか心配になってきた・・・頼むよサム。




