誤解
私は頻繁に人見の家に相談しに行くようになっていた。人見と話をすると楽しいんだ。サムには内緒だけど・・・。
ガチャ・・・
私『ただいまー、夕食遅れてごめん。すぐに作るから。』
佐村『おい。』
私『な、なに?』
佐村『陽が暮れるまで、どこに行ってたんだよ。また一人でショッピングか。よく飽きがこないな。』
私『・・・。』
そうそう、ショッピング。そう思ってれば幸せだよ。私が料理を始めようとした瞬間・・・
佐村『なに、無視してんだよ。真剣に考えてんのか、子作りのこと。』
私『考えてるよ。そろそろスタジオ入りしたりしないの?』
プルルルル・・・
私の携帯が鳴ってる。人見だ。どうしよう・・・外に出るか。
佐村『ここで応答しろよ。』
私『自分だって外に出るじゃん』
ガチャ・・・
人見『もう、着いたか?』
私『うん。サムも帰ってきてるから手短にお願い。』
人見『ああ。映画のチケットを2枚渡したろ?こっちに1枚あるんだよ。』
私『あ・・・1枚は持ってるから、忘れてたんだと思う。』
人見『しっかりしろよ(笑)じゃあ、1枚はこっちにあるから、佐村と映画を見る予定が出来たら取りにこいよ。』
私『うん。明日は休み?』
人見『明日はレコーディングだから、日曜日・・・。』
私『ちょ、ちょっと、何すんの!?』
人見『ん?』
佐村『お前、人見か!!人見だな!!』
人見『あ、佐村か。映画のチケット・・・。』
佐村『映画!?映画ってどういうことだよ!!やっぱり、色葉と会ってたのか!!』
私『サム、違うの!!相談を聞いて貰ってただけで・・・。』
佐村『子作りが上手くいかないのはお前のせいか。お前とで満たしてるから、色葉は・・・。』
ピッ
私は携帯をプチっと切った・・・ヤバいぞ・・・誤解されてる・・・。
佐村『・・・。』
ガチャ・・・バンッ!!
私『あ・・・。』
・・・扉を開ける気にならない。人見の家に行こう。
ピンポーン
ガチャ
私『ただいま・・・。』
人見『どうした?佐村だよな、電話の相手。』
私『うん・・・最悪だよ・・・。』
人見『もしかして、佐村はお前と俺と不倫してるなんて勘違いしてんの?』
私『私が人見の所に相談しに行ってるのを、ショッピングって嘘をついてたの・・・。』
人見『俺が直接誤解を解いてやるから、家に帰ろう。』
私『今日はもういい。』
人見『もういいってお前・・・結婚して半年だぞ。』
私『全部、私が悪いんだよ。いつまでたっても克服出来ないし、意味もなく嘘をついてたから・・・。』
本当になんで嘘をついたんだろ・・・正直に人見の家に相談しに行ってると言っておけば良かったのに・・・。
人見『誰も悪くない。ただ、嘘ついてたことは謝れよ。・・・俺、今から風呂なんだけど、お前、着替え持ってきてないよな。どうする?』
私『頭が痛いから眠らせて・・・。』
人見がバスルームに消えていく・・・頭が痛いけど、サムに電話をかけてみようかな・・・。
プルルルル・・・プルルルル・・・
受話器を取って・・・お願い・・・お願いだから・・・。
佐村『なんだ。』
私『あっ、サム・・・その・・・ごめんなさい・・・ただ、誤解があって・・・。』
佐村『言い訳かよ。俺がどんなに心配してるか・・・。』
私『心配・・・?私の話を聞いてくれないじゃない!!』
佐村『人見は聞いてくれるんだろ。優しい人の子供が欲しいなら、今夜がいいチャンスなんじゃないか。』
ピッ
私『・・・はあ。』
人見が戻ってくるまで枕に顔を埋めていた。少し眠ってしまっていたのか、気づいたら、目の前で人見がビールを飲んでいた。
人見『あ、起きたか。つまみ食う?』
時計を見ると21時・・・。
私『こんな時間に飲み食いしたら太っちゃう。・・・サムに電話したんだけど、完全に疑われてる。優しい男の子供が欲しいなら、今夜、作って来いって言われた・・・最低だよ・・・子作りが怖いって言ってるのに・・・。』
人見『行為自体も怖いのか?』
私『うん・・・だから、処女に戻ったみたいな気持ちなの。自分勝手だよね、少し前までは正反対の立場にいたのに・・・。』
人見『俺がもう一度処女を奪ってやろうか。』
私『えっ!?』
人見『冗談だよ(笑)さて、どうするか・・・明日、二人で映画を観に行って仲直りしろよ。』
私『仲直りって、小学生や中学生じゃないんだから・・・修復不可能だよ・・・。』
人見『仲介役が必要か。』
人見は携帯を取り出した。
プルルルル・・・プルルルル・・・
麻里『こんな時間に何・・・ひっく。』
人見『ひとり酒か(笑)麻里、明日ヒマ?』
私『ちょっと待って!?麻里には知られたくない!!』
人見『・・・用事を思い出した。』
麻里『用事・・・ひっく・・・用事はないかな・・・。』
ピッ
佐村『多分、人見の家にいる。』
仲谷『誤解かもしれないから、話し合わないと。』
佐村『俺からか?冗談じゃない。』
仲谷『このまま長引いたら、スピード離婚になっちゃってマスコミから叩かれるのは、有名人の方なんだから、佐村が修復に尽くさないと。』
佐村『・・・じゃあ、今から人見の家に行く。何もないなら、こんな時間でも大丈夫だろう。』
人見の家はシングルベッドが一つ。お互いぎゅうぎゅうに詰めないと寝られない。
私『もうどうにでもなればいい。どうせ、私は結婚に向いていない女なんだ。』
人見『そんなことないって。美味い料理を作れるだけで最高の嫁さんじゃないか。』
料理が下手な嫁さんは最低なんだって。
ガチャ
佐村『人見、色葉いるか?』
私『あ・・・。』
佐村『お前・・・やっぱりそういうことか・・・。』
私『ち、違うんだって!!ほら、シャワー浴びてないし!!』
佐村『・・・まあ、いい。指輪ははめてくれてるみたいだし。』
シャワーを浴びてないから、指輪を外すの忘れてたんだ・・・良かった・・・。
人見『全て誤解なんだよ。俺は白瀬がお前に嘘をついてるなんて知らなかった。俺に会ってることがバレたら怒られると、思わせてたんじゃないか?』
佐村『・・・。』
私『怒られると思ってた・・・なんで人見と会うんだって問い詰められると思ってた・・・私がサムに頼らないで、人見に頼っているということがバレると、サムは落ち込んじゃうかもしれないとも思って・・・。』
佐村『・・・人見、俺はどうすればいいんだ。子作りが怖くなっていると判明してから、仲谷たちに相談してたんだよ。病院に行かせろって。でも、俺は色葉の夫だから心の病は俺が救えると思ってたんだけど、無理なのか。』
人見『まず、白瀬は心の病なんかじゃない。心が傷ついているだけだ。お前は病を治すことばかり考えてたんだろ?癒すだけでいいんだよ。』
そうだ・・・私は人見から癒しを貰ってたんだ・・・でも、サムから貰わなければ、問題の解決にはならない。十分な癒しを与えているつもりだったサムと、それを伝えられずに人見にばかり癒しを求めていた私の双方のすれ違いが問題を長引かせている原因だったのかもかもしれない。




