パーティー
カチ
パンパカパーンパーン、パーン、パーン、パーン。
カチ
麻里『い、イエーイ!!おめでとう!!』
私『・・・。』
穂『どうしたの?花嫁さん。』
私『なんでもない。今日はみんな、集まってくれてありがとう。』
今日は岸谷のバーで結婚記念パーティーを開いた。メンバーは私とサム、麻里、人見、公子と優ちゃん、美知、岸谷と穂ちゃん。
岸谷『年代モノのワインがあるんだよ。』
岸谷はワインをグラスに注ぎ始めた。
私『ん?穂ちゃんって、まだ未成年だよね。』
穂『18も19も20歳も変わらないって(笑)さ、さ、私も注いで。』
18も19も20歳も変わらない・・・確かに、その頃の私は悪いことを覚えて、後のことなんて考えず実践ばかりしていた。18も19も20歳もやることは毎晩決まって二通り。草か、そのための資金集め。馬鹿みたいにおんなじことを繰り返していた。
そんな私が言っても説得力なんかないか・・・。人見も麻里も私程ではないけど、悪いことしてきてるだろうし、公子と美知は穂ちゃんと面識がないから、注意しにくいだろうし・・・。
佐村『穂、少しは聞けよ。今日の主役が心配してるんだぜ。』
あ、ずっと、馬鹿みたいに音楽に打ち込んできたサムがいた。
穂『私くらいの年齢のとき、お酒くらい飲んでたでしょ?』
佐村『俺はお前くらいの年齢のとき、稚拙だけど、毎日、毎日、曲を書いてた。世に出せるような曲は数曲だけど(笑)』
公子『へえ〜、聴かせてよ。』
穂『うん、聴かせて。どんな曲を書いてたのか、本当に曲を書いてたのか気になるから(笑)』
美知『私も聴きたいなあ。』
佐村『ぐう・・・ギターがない。』
麻里『ほら、ギター。』
佐村『・・・。』
あちゃー・・・サムが女4人から責められて、ぐうの音も出なくなってしまってる・・・。頼れる男なのか、頼りない男なのか・・・。
人見『もう、どうでもいいだろ(笑)今日はパーティーだぜ。外に出なければ飲んでもいいんじゃないか?』
穂『だよね!!ヒトミン大好き!!』
穂ちゃんが人見に抱きついた。あーあ、胸くそ悪い。ん?人見が私に向かってジェスチャーしてる・・・口元を人差し指でくるくる、くるくる・・・笑え?笑えって言われてる。
私『は、ははは(笑)』
カシャ
シャッター音が聞こえた。岸谷がカメラを持ってる。今日のパーティーの写真を撮ってくれてたんだ。
あれ・・・サムの周りに女が集まっている構図も取れちゃった?
佐村『深い紫に染まるぅ、鉛の飛行船を見つけたぁ、黒い安息日にぃ、偽善者がやっほぉ・・・。』
私『サム、ハモりたいから、別の曲を歌って。』
麻里『ああ、止めないでよ。おかしくて、堪らなかったのに(笑)』
嫁にとって、夫の職業がコメディアンでない限り、他人に笑われて嬉しいはずないだろ!!
優『ママ・・・トイレ・・・。』
公子『あ、ちょっと待って。岸谷さん、トイレってどこですか?』
岸谷『そこの扉だけど、電気が切れてる。』
私『電気くらい付け替えなよ。』
岸谷『電気代の節約だ。』
公子『私も真似して、トイレの電球取り外そうかな。効果はどれくらい・・・。』
優『ねえ、ママ・・・もれそう・・・。』
公子『あ、ごめん!!はやく、はやく!!』
公子が優の手を握ってトイレへと駆けて行った。ママやってる公子、大変そう・・・。
麻里『アレはないの?アレ。』
私『アレ?』
麻里『誓いのキッス。』
は?
穂『そうだよ。結婚式を兼ねたパーティーなんだから、キッスしてよ。ほら、キーッス!!キーッス!!』
に、苦手な合コンのノリだ・・・。
私は愛想笑いで誤魔化した。幸いサムも、こういうノリは苦手だから、合コンのノリに加担することはなかったから助かった。
深夜に近づくにつれ、お酒が回り、皆眠りについてゆく。私は主役だから眠らないように頑張って、とうとう二人きりになった。人見と。
私『寝ないの?』
人見『佐村もマスターも眠ったから、俺が起きてないとまずいだろ?』
私『・・・カウンターに座ろう。』
みんな寝てるから。
人見『婚姻届出すときどうだった?緊張したか?(笑)』
私『別に(笑)でも、新しい人生が始まって、それを二人で守るんだっていう自覚は芽生えたかな。私は学べなかった世間の常識を勉強しなくちゃ。』
人見『少しずつでいいんだぞ。』
人見がお酒を注いでくれた。
私『うん。それはサムも言ってくれてる。』
私もお返しにお酒を注いだ。
人見『ありがとう。少量しか酒、飲んでなかったよな。』
私『私が寝落ちしちゃったらダメでしょ。そっちも控えてたよね。』
人見『佐村とマスターが一気してんだぜ?残された男がしっかりする他ないだろ(笑)』
人見は照れ隠しにグラスを空にした。
私『あはは(笑)』
人見『なぁ、みんな寝てるから言うけど、俺、後悔してんだよ。』
私『私が結婚してしまったこと?』
人見『違う(笑)もっと前・・・高校生のときだ。男らしく、お前の母親の制止を振り切ってでも、お前に尽くしていたら、あの10年間はなかったんじゃないかって。』
私『あの当時ね、別れる事になった本当の理由を話してくれてたら、私、母さんを説得してたよ。人見が優しい人だって。それでも、説得出来なかったら、結局家を飛び出してたと思う。』
で、人見と付き合うだろうけど、お互い若いから長く続かなくて、険悪な状態で別れちゃったら、こうして、バーのカウンターでお酒を飲みながら話すことなんて出来なかっただろう。今が幸せ。私はそう思うことが幸せへの近道だと思う。幸せでないのならば、『今が幸せ。』なんてセリフ言えないから。
人見『柳田は今、空いてんの?』
私『大学で同級生だった人と同居してるって。フリーなら麻里がいるじゃん。』
人見『麻里は・・・違うんだよな・・・。』
私『言いたくないけど、今日のメンバーの中では・・・いや、全国美人ランキングがあれば余裕でランクインするくらい美人だよ?』
人見『・・・そんな美人様が俺に振り向くか?(笑)』
私『あ、もう振られてんだったね(笑)なんか、サムと喋っているときよりも、人見と喋っているときの方が楽しい。でも、サムと結ばれたんだよね。』
人見『単に楽しい奴と、結婚を受け入れることが出来る奴って、また違うからな。俺が前者で佐村が後者だろ?』
私『ちょっと待って・・・。』
なんか気配がする。嫌な予感・・・。
優『おばさん・・・トイレに行きたい・・・。』
私『うわ!?優ちゃん!?』
人見『ははは、聞かれてたか(笑)』
私『ゆ、優ちゃん。今のお話、お母さんには秘密だからね!?わかった!?』
人見『別に聞かれたところで、どうにかなる話はしてなかったから、問題ない。恥ずかしいことは言ってたけどな(笑)』
優『おばさん・・・ぼく、トイレ・・・。』
私『あ、そうだったね。』
私は断じておばさんではないが、お漏らしされたり、公子に話の内容をチクられたりしたら困る。
トイレから帰ってきたけれど、これ以上、話が弾む筈もなく、私たちも眠りにつくことになった。麻里に聞かれなくて良かった・・・。




