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変人

私は暴れた。人見が諦めて帰ってくれると思ったからだ。でも、人見は諦めない。私は人見を押し倒そうとしたけど、男の力には敵わないみたい。


人見『落ち着けって!!ここ、アパートなんだから、四方に筒抜けだぞ・・・。』


私『はあ・・・はあ・・・そこの棚の中段から錠剤を取って・・・。』


人見『やめるって言っただろ。こんな状態でまだ・・・。』


私『精神安定剤・・・。』


人見はそれを取ってくれた。


人見『病院に通ってまで続けてるのか。』


私『違うよ。サービスで貰ったんだ。常連だからね。草って体よりも心にくるみたいで・・・。』


人見『俺のアパートに越さないか?ここじゃ、改善も難しいだろ。』


私『でも、迷惑かけちゃうよ。』


人見『今、俺に迷惑かけてるだろ(笑)大丈夫、俺は女が壊れていくのが、ほっとけない性格なんだよ。』


私は人見の家で療養することになった。薬物依存ではないのだから、少々大袈裟だと思ってしまう。


ガチャ・・・


私『人見の家も汚いじゃん。』


人見『男の部屋ってこんなもんだろ?』


私『都合いいんだから。彼女とかいないの?』


人見『今は。』


私『じゃあ、キスしても、誰も怒らないよね。』


私は人見にキスをしようとした。


人見『な、何してんだよ。』


私『こんな時間に女を連れ込むなんて、やることは一つじゃん。ね、しよ。』


人見『・・・。』


あれ、引いてる?


私『どうしたの。私から誘ってるんだよ。』


人見『もう少し、自分を大事にしろよ・・・。』


私『でも、好きでしょ。こういう女。』


人見『男が最も嫌悪感を抱くのが、お前みたいな尻軽女なんだよ。』


私『そうですか、そうですか。綺麗事ばかり言っちゃって。』


私はリビングで寝転んだ。真上にベッドがあるのに。


人見『・・・風邪ひくぞ。』


人見は私にベッドで寝るように促した。


私『・・・一緒に寝ようよ。』


人見の腕を強く引っ張ると、人見はベッドに腰掛ける形になった。


人見『なあ・・・説教してもいいか・・・。』


私『私の嗜好品を奪い取ったんだから、代わりに、このむずむずした気持ちをなんとかしてほしいの。』


人見『つまりは誰でもいいってことだろ。俺たちは、もう、高校生じゃないんだぞ。』


私『なに、真面目ぶってんの。私から草を取り上げたのは、バンドの皆で吸うつもりだからでしょ。ビートルズだって・・・。』


人見『ビートルズはLSDだ。』


私『・・・知らないけど、ロックバンドって、そうなんでしょ。なんだっけ・・・セックス、ドラッグ、ロックンロール?』


人見『それ、20年前の言葉なんだよ。』


私『ふーん。それなら、吹っ切れてポップな曲を作ったら?麻里も、そういう曲の方が歌いやすいんじゃない?』


人見『話を逸らすなよ。まあ・・・佐村が書く歌詞は女の子には歌いにくそうだもんな。』


私『歌詞を麻里に書かせて、人見が曲を作ったら?』


そして、私は何もかもが自由なアパートに帰ることができる!!


人見『じゃあ、一緒に考えてくれないか。』


ぬ・・・。


私『やることやってくれたら手伝ってあげても。』


人見『母親と妹に劇団員だなんて、嘘をついてるだろ?あれは俺たちも同罪なんだよ。頼むからまともに戻ってくれよ・・・。』


人見はベッドの上で土下座をしている。私はどうすればいいのかわからない。私は人見の頭に背を向けて、静かに眠った。


眠りが覚めれば朝になる。いつもの事だ。なんだかんだで人見は横に寝てるだろうと思ってたけれど、床で寝てた。


人見がちょうどベッドとテーブルの間に大の字で寝てるからベッドから降りられない。私は仕方なく人見を起こした。


私『変な意味じゃなくて、シャワーを浴びたいんだけど。』


人見は眼を半開きで風呂場を親指で指差した。いいぞってことだろう。


さっぱりして戻ってくると、頑固親父のような顔をして、人見が腕を組み座っていた。


私『昨日の説教の続きですか・・・。』


人見『大人の男に真面目な顔して怒られたことないだろ?』


私『飯塚先生・・・。』


人見『ああ、あの生活指導は厳しかった。でも、そういう話じゃないだろ。学校を除く日常でだ。』


私『あの夕立の日・・・わかるよね。』


人見『多分、あの日だろ?』


私『うん。あの日、母さんと大喧嘩しちゃって・・・頬をぶたれたんだよ!!もう、家出してやるって、外に出たら、たまたま人見と遭遇して・・・母さんだって、父さんの代わりをしてくれてたんだよ!!』


人見『・・・。』


私『出来損ないって言われたし・・・血も少しだけ出ちゃったし・・・美知にも見られちゃったし・・・。』


人見『フォローしてくれる人がいなかったんだな。母親は父親の代わりになろうと必死で・・・。』


私『なんで、さっきから、母さんのことを悪く言うの!!』


人見『いや、そんなつもりは・・・。』


私『大嫌いだけど、私の母さんなんだよ!!恨みでもあるの!?』


人見『恨みじゃないけれど・・・近い感情はある・・・。』


私『え・・・。』


人見『今だから言える話なんだけど、あの事件のあと、また、お前ん家に訪問してんだよ。』


私『人見が?・・・知らないよ、そんな話。確か、あのあと、かっこつけた言葉で友達に戻ろうってことになって・・・。』


人見『その話にも繋がるんだけど、二度目の訪問でお前の母さんに『色葉に近づかないで』って言われちゃったんだよ(笑)友達止まりなら許してくれたから、一安心だったけど。』


私『そんな・・・い、今なら黙ってれば付き合えるじゃない!!』


人見『ダメだ。もし、ご挨拶に行かなければならなくなったときとか、どうするよ(笑)昨日の夜、断ったのも半分はそれが理由だ。』


私『はあ・・・理由を知っても、すっきりしないよ・・・もしも、母さんとの確約がなければ私を抱ける?』


人見『その前に中毒を治さなければならないだろ。俺が思うに草以外にセックス中毒もあるんじゃないか?』


私『この体で生きていくって決めたんだから、自分を納得させるために・・・その・・・えーっと・・・。』


人見『ん?』


私『うーんと・・・引かないでよ・・・。』


人見『こっちも秘密を喋ったんだ。そっちも喋ってくれよ。』


秘密の程度が全然違うんだけどなあ・・・よ、よーし・・・さん、にい、いち・・・。


私『街に繰り出さない日は、草をオカズに一人エッチしてました!!』


人見『・・・。』


あちゃー・・・引いちゃったよ・・・。


私『そ、それが日常になっちゃって・・・そういうことが出来ない日はむずむずしちゃうんだと思い・・・ます・・・。』


人見『誰でもいいってことか。』


私『い、いや・・・あの・・・。』


人見『とりあえず、草は絶対に断ち切ろう。金稼ぎは自己責任で・・・まあ、やればいい。俺たちだって好きなことを職にしてるんだ。』


あーあ、変人と思われてる・・・中毒の時点で変人なのかもしれないけれど。

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