更生生活
人見が『俺、今日バイトだから、掃除よろしく。出来れば晩飯も。』だって。私を更生させるために住み込みさせたはずなのに、これじゃお手伝いさんだ。腹が立つ。母さんのせいで、人見のお嫁さんにはなれないみたいだから、それにも腹が立つ。結婚出来たら、すぐにやめるのになあ、草と金稼ぎ。
ガチャ・・・
私『帰ってきた。』
佐村『・・・。』
私『ふ、不法侵入者!!』
佐村『メンバー間の自宅の出入りは自由なんだよ。』
麻里『あれ、同棲してんの?』
私『げっ・・・ま、麻里・・・。』
麻里『もお(笑)なんで、黙ってたの?』
麻里が肘で、私の肩をクイッとしてきた。
私『同棲なんかしてないよ・・・。』
もし、麻里にバレたら公子を伝い美知や母さんにも、私の悲惨な日常がバレてしまうかもしれない。そうなれば、煌びやかな都会から、寂れた田舎に連れ戻されてしまう・・・。
あー、どうしよう!!
麻里『あーっ!!』
麻里が部屋の奥隅を指差した。あ、あれは・・・自宅から持ってきた生理用品の袋・・・。
麻里『やっぱり、同棲してるじゃん(笑)』
私『ち、違うの!!えーっと・・・その・・・うーん・・・。』
佐村『たまたま、あれを買って、ここに寄ったんだろ?』
私『そうだよ!!そう!!たまたま、人見のアパートの前を通ったからさ!!ははは!!』
ガチャ・・・
今度こそ帰ってきた。私は佐村と麻里が侵入してきたことを報告しに玄関へと向かった。
私『佐村と麻里が来たんだけど。私の更生生活に支障が出ちゃうよ。麻里に付き合ってると思われてる。』
人見『大丈夫だって。付き合ってるって設定にするか?(笑)』
人見は笑いながらリビングへ・・・。
私『はあ・・・設定か・・・母さんのせいで、届くのに届かない人になってる・・・。』
お互い、相性バッチリなのに、ゴールイン出来ない。母さんがゴールテープを隠したから・・・って、私は、まだ結婚なんて興味ないんだった。でも・・・惜しいなあ・・・。
麻里『で、いつから付き合ってたの?』
私『だから、そんなんじゃないって。今日は、なんで来たの?』
佐村『曲が出来ないんだよ。』
かっこつけた言い方してるけど、曲がスラスラ出来るぜ!!いやっほぅ!!・・・なんて、報告は今まで一度もない。
私『いつものことじゃん。』
麻里『売れる曲を書けって周りの人たちから言われたんだ。売れ線に合わせろってこと。でも、作詞家兼作曲家さんは、それが気に食わないみたいで・・・。』
佐村『・・・。』
私『人見はどうなの?』
人見『俺はどんな曲でも叩くよ。 佐村も売れるまではポップな曲を書いてもいいんじゃないか。』
私『今までで最高は何位?』
人見『シングルは40位、アルバムはそれ以下。』
麻里『CMに使われたりした曲もあるけど、私のボーカル部分は使われないんだよね。』
音痴だからね・・・。
佐村『今の俺たちが好きだって、応援してくれている輩だって、少ないけれどいるだろ?だから、安易に音楽性を変えるのはどうかと思ってるんだよ。』
人見『でも、俺たちにも生活があるし、夢だって・・・。』
うう・・・議論が白熱してきて、話に入れなくなってきた・・・音楽性ってなんですか・・・一曲だけ売れ線狙いの曲を書いてもいいんじゃないの・・・。
麻里『両立って無理なのかな。キャッチーだけど、歌詞が深くて、演奏も難易度が高いって曲。』
人見『それ、お前歌えるのか?(笑)』
麻里『う、歌えるよ!!・・・多分。』
佐村『麻里が歌う必要はない。俺でも、人見でも、鈴木さんでもいいだろ?』
私『でも、麻里は楽器弾けないよね。』
麻里『タンバリンかマラカスは弾けるはず。』
人見『あれもリズム感が必要だぞ(笑)』
佐村『・・・あえて、不規則なリズムの曲を作ってみるか。』
麻里『売れる曲を作らなくちゃならないんだよ。』
あー早く帰ってくれないかな。居心地が悪い。
私『佐村と人見も、メイクしてみたら?(笑)』
佐村『・・・。』
ぐっ・・・佐村に睨まれた・・・。
人見『メイクはちょっと違うよな。でも、見た目から興味を持ってもらうのも一つの方法だと思うけど。』
麻里『バンダナとか、でっかい帽子とか、服を特徴的にするのもいいかもね。髪もカラフルに・・・。』
佐村『俺は絶対に着飾らないからな。なんで、見てくれの話になってんだよ。』
どんどん不機嫌になってく佐村・・・売れないのは、こいつのせいじゃないの?
私『柔軟な考え持たないと、いい曲を書ける能力はあるんだから・・・。』
佐村『お前に何が分かるんだよ。メンバーでもないくせに口出しすんなよ。』
禁欲中の私はムカッときた。心にグサッと刺さるような言葉を考えていると、人見が助けてくれた。
人見『とりあえず、一曲だけやってみようぜ。アルバムに収録しなければ、今のファンも離れないだろう。』
麻里『そっか!!もし、それが当たれば、私の歌いやすい曲が増えるね!!』
佐村『・・・。』
人見が少々、強引に話を纏めて、麻里と佐村は帰っていった。
私『あっ、夕食作ってたんだ。』
人見『マジで(笑)もう、冷めてんじゃないの?』
私『スープだから温めてあげる。』
人見『いいなあ、そういうの。佐村にも見せてやれば良かったのに。』
私『私だって料理作れるのよって?』
人見『優しい面を忘れてないのよって(笑)。あいつ、心配してたぞ、このまま白瀬が壊れていくんじゃないかって。』
私『都会に連れてきてくれたのは佐村だから、責任を感じてるのかな・・・。』
人見『かもな。』
責任を感じてるなら、あんな態度を取らなくてもいいのに。
夕食が終わると、人見がとんでもないことを言い出した。
人見『一緒に風呂入らないか?』
私『キス拒んだじゃない。』
人見『唇を重ねるのは友達の関係から逸脱してるけど、裸に見せ合いは、恥部に触れなければ友達のままだ。』
私『・・・成長した私の体を見たいだけでしょ?』
人見『初日に見た谷間が本物かどうか見たいってのもある(笑)でも、風呂の中で色々、聞きたいことがあるんだよ。』
そう言い、人見は浴室のドアを開けた。
私『・・・あのとき、ちょっと寄せてたんだけどなあ・・・ほんのちょっと・・・。』
私も浴室へ向かった。当然、浴槽には裸の人見が先に浸かっている。
私『入るよ。』
空いてるスペースに浸かると人見が笑い出した。
人見『やっぱり、おかしいって(笑)少しは拒めよ(笑)』
私『だ、だって・・・。』
どこを見ればいいのだろう。焦点が定まらない。
人見『母さんと妹は元気か?』
私『ここ、3年は連絡とってない・・・。』
人見『連絡とってあげろよ?きっと心配してるから。』
私『うん・・・ねえ、人見は今、私のどこを見てる?』
人見『その痩せ細った体。答えらないなら、答えなくてもいいけど、その体で体重はどれくらいあるんだ?』
私『40・・・前半かな。草さえあれば食事を抜いても平気だったの。気持ち良くなって、知らずのうちにダイエットも出来てるって最高だった。』
人見『後悔してるんじゃないか?』
私『痩せ細った体って、言われたからね。』
人見『そっちは俺のどこを見てるんだ?(笑)』
私は男の気になるあの部分を指差した。裸の二人は大笑いした。
私『バンドは売れてないのに、女の裸は見慣れてるんだね。』
人見『ミュージシャンっていう肩書きに食いついてくるんだよ。こんな顔でもな(笑)』
私『私も含めて、馬鹿ばっかりだからね。』
人見『自分を卑下すんなよ。そういう奴もいるって言ったんだ。』
私『・・・い、いけない。また、ヒステリックに陥るところだった(笑)』
でも、私も男から見れば馬鹿な女の一人なんだよね。人見も言ってたけれど、いつかは普通の女に戻らないと、人生が台無しになってしまいそう。
人見『草はやめそうだけど、仕事はどうするんだ?』
私『わかってるよ。仕事も改善しなければならないってことはわかってるけれど・・・もう、どうしようもないの。』
人見『そうか・・・早く良い男でも見つけろよ。』
私『・・・うん。』




