第6話 新たな資源の探索
「それで、どこを調べるんだ?」
村の入口で、腕を組んだ男が尋ねてきた。
彼の名前はガルド。
村で木工や修理を担当している職人で、今回の資源調査に同行してもらうことになった。
「まずは川の上流です。水がある場所なら、何か見つかるかもしれません」
「何かって、ずいぶん曖昧だな」
「最初から何があるか分かっていたら、調査する必要なんてありませんよ」
「……それもそうか」
ガルドは少し呆れたように息を吐いた。
俺たちは村から少し離れた川沿いを歩き始めた。
今回の目的は、村の周辺にある資源を調べること。
木材や水だけでなく、農具や生活用品を作るために必要な材料がないかを探す。
商人が来なくなった今、外から物を買うことは難しい。
ならば、できるだけ村の中で調達できるようにするしかない。
「おい、あそこを見てみろ」
ガルドが指差した先には、川岸の斜面があった。
近づいてみると、地面の一部が茶色く露出している。
「これは……」
俺はしゃがみ込み、土を手に取った。
指で押してみると、普通の土よりも粘り気がある。
水を少し加えて練ってみると、形を保ったまままとまった。
「粘土だ!」
「粘土? そんなもの、どこにでもあるだろ」
「どこにでもあるからこそ、使い道があるんです」
俺は思わず笑みを浮かべた。
粘土があれば、壺や皿などの生活用品を作れる。
さらに、焼き方を工夫すれば、レンガや屋根瓦だって作れるかもしれない。
今の村では、建物の多くが木材と藁でできている。
もしレンガを作れるようになれば、建築の選択肢が大きく広がる。
「これを使えば、色々なものが作れますよ!」
「へえ。それは面白そうだな」
ガルドも興味を持ったようで、粘土を手に取った。
しかし、次の瞬間。
「だが、どうやって作るんだ?」
「……え?」
「粘土があるのは分かった。だが、それをどうやって道具にする? 焼くための窯はあるのか?」
「それは……」
言葉に詰まった。
そうだ。
材料を見つけただけでは意味がない。
粘土を加工する技術も、それを焼く設備も必要になる。
俺は前世の知識で、レンガや陶器が作れることくらい知っている。
だが、知っていることと、実際に作れることは別だ。
「それに、村の人間が今まで使っていなかったのには理由があるかもしれんぞ」
「理由?」
「昔、何人かが試したことがあるらしい。だが、うまく焼けずに割れてしまったそうだ」
なるほど。
すでに誰かが挑戦していたのか。
つまり、これは単純に見つければ解決する問題ではない。
「……分かりました。まずは少量だけ持ち帰りましょう」
「それだけでいいのか?」
「はい。いきなり大量に集めても、使えなければ無駄になりますから」
俺は粘土を袋に詰めた。
今回の調査で分かったことは二つ。
一つは、村の近くに粘土があること。
もう一つは、それを加工する技術が足りないことだ。
村に帰る道中、俺はずっと考えていた。
材料は見つかった。
けれど、加工する方法がない。
だったら次に考えるべきことは決まっている。
「窯を作るしかないな……」
「何か言ったか?」
「いえ。次にやることが決まりました」
努力でどうにかするより、努力しなくても済む仕組みを作る。
それが俺のやり方だ。
そして、その仕組みを作るためには、まず必要な技術を揃えなければならない。
どうやら、この村を変えるには思ったより時間がかかりそうだった。




