第4話 本格的に改革
「さて、と」
収穫作業の改善から数日。
俺は村の中を歩き回っていた。
目的は一つ。
この村に存在する無駄を見つけることだ。
前回の収穫作業の改善によって、村人たちからは少しだけ信頼を得られた。
とはいえ、まだまだ足りない。
この村には、改善できる部分が山ほどある。
「……あれ?」
そんなことを考えながら歩いていると、ふと気になる光景が目に入った。
村の中心にある広場。
そこでは、何人もの村人が荷物を運んでいた。
しかし、よく見ると妙だった。
一人が荷物を運び終えると、別の人間が同じ場所までやってくる。
そして、また別の場所へ荷物を運んでいく。
「なあ、ちょっといいですか?」
近くにいた男性に声をかけた。
「ん? どうした?」
「何を運んでいるんですか?」
「木材だよ。村の外れにある倉庫まで運んでいるんだ」
「それって、毎回この道を通っているんですか?」
「そうだが?」
俺は周囲を見渡した。
木材の置き場と倉庫。
その間には、かなりの距離がある。
しかも、運んでいる木材の量は少ない。
「……なるほど」
またか。
この村の人間は、どうしてこうも同じ作業を何度も繰り返すのだろう。
「一度にまとめて運べばいいんじゃないですか?」
「まとめて?」
「ええ。例えば、木材をある程度まとめて置いておいて、荷車で一気に運ぶんです」
「しかし、それでは荷車が必要になるだろう?」
「ありますよね?」
俺は昨日作った荷車を指さした。
「……ああ、あれか」
男性は納得したように頷いた。
「でも、あれは水を運ぶためのものじゃないのか?」
「別に水専用じゃありませんよ」
そもそも、道具に用途を限定する必要なんてない。
使えるものは使えばいい。
「それに、運ぶ順番も決めた方がいいですね」
「順番?」
「はい。あっちこっちに運ぶんじゃなくて、近い場所から順番に運ぶんです」
男性はしばらく考え込んでいた。
「……確かに、それなら無駄な移動は減るかもしれんな」
「でしょう?」
俺は満足げに頷いた。
こうして、木材の運搬方法も少しずつ改善されていった。
しかし、俺が本当に気になっていたのは別のことだった。
「村長。少し相談があるんですが」
「おお、どうした?」
俺は村長の家を訪ねていた。
「この村、物を運ぶための道が悪すぎませんか?」
「道?」
「はい。荷車を使うにしても、今の道では移動しにくいです」
実際、村の道は土がむき出しで、場所によっては大きな凹凸もある。
雨が降ればぬかるみ、荷車を押すのも大変だろう。
「昔からこの状態だからな。直すにも人手が足りん」
「なら、直しましょう」
「簡単に言うが、道を整備するのは大変だぞ?」
「分かっています。でも、道が良くなれば、今後の作業がずっと楽になります」
俺は村の地図を広げてもらった。
そして、村長と一緒に道の状態を確認していく。
どこを通れば効率よく移動できるのか。
どの道を優先して整備すべきなのか。
一つずつ考えていった。
「……なるほど」
村長は地図を見ながら呟いた。
「君は、目の前の問題だけでなく、その先のことまで考えているのだな」
「当然です」
一度改善したものが、後から別の問題を生む。
そんなことになったら、結局は二度手間だ。
だったら、最初から先を見据えて考えた方がいい。
「村長。俺はこの村をもっと便利にしたいんです」
「便利に?」
「ええ。誰もが楽に暮らせて、無駄な時間を使わなくて済むように」
村長はしばらく俺を見つめていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「……君は、本当に不思議な子だな」
「そうですか?」
「ああ。普通なら、今までのやり方を変えることなど考えもしない」
「でも、今までのやり方が最善とは限らないでしょう?」
俺は笑った。
この村には、まだまだ無駄がある。
そして、それを改善する方法もきっとある。
「さて、次は何を変えようか」
俺は地図を見つめながら、次の計画を考え始めた。




