第2話 無駄を省けば、世界は変わる
「まずは、この村の問題を把握するところからだな」
翌朝。
俺は村長に頼み込み、村の中を案内してもらっていた。
「しかし、本当に何かできるのかね?」
「やってみないと分かりませんよ」
正直なところ、俺にも確信はない。
前世で農業や土木の専門知識があったわけでもないし、文明を発展させるような大発明ができるわけでもない。
だが、一つだけ自信がある。
無駄を見つけることだ。
「ところで、村長。この村で一番困っていることは何ですか?」
「そうだな……やはり水の問題だろう」
「水?」
「ああ。村には井戸があるのだが、そこから水を運ぶのが大変でな。特に農作業の時期は、何度も往復しなければならない」
なるほど。
俺は村長に案内され、井戸へと向かった。
そこでは、何人もの村人が水を汲んでいた。
大きな桶に水を入れ、それを抱えて畑まで運んでいる。
そして、空になった桶を持って再び井戸へ戻る。
それを何度も繰り返していた。
「……なるほど」
俺はしばらく、その光景を眺めた。
問題は単純だ。
水を運ぶために、何度も往復している。
つまり、移動に時間を使いすぎているのだ。
「村長。水を運ぶための道具は、これしかないんですか?」
「そうだが?」
「もっと大きな容器を使えば、一度に運べる量が増えるんじゃないですか?」
「大きな容器?」
「はい。例えば、車輪のついた荷車とか」
「荷車か……」
村長は考え込んだ。
「確かに、荷車なら一度に多くの水を運べるかもしれん。しかし、そんなものを作るには金がかかるぞ」
「車輪と木材なら、この村でも用意できませんか?」
「作れないことはないだろうが……」
「なら、試してみましょう」
俺は近くにいた村人にも声をかけた。
最初は怪訝そうな顔をされたが、村長が説明すると、何人かが協力してくれることになった。
それから数時間後。
簡単な荷車が完成した。
立派なものではない。
木の板を組み合わせ、車輪を取り付けただけの簡素なものだ。
それでも、桶をいくつも載せて運べるようになった。
「よし、試してみましょう」
村人の一人が荷車を押す。
「おおっ!」
今まで両手で抱えていた桶を、まとめて運べる。
しかも、何度も往復する必要がなくなった。
「これは便利だ!」
「こんな方法があったとは……!」
村人たちは驚いていた。
俺はその様子を見ながら、満足げに頷く。
うん。
悪くない。
だが、まだ改善できる。
「村長。これ、もう何台か作りませんか?」
「もちろんだ! これなら水運びがずっと楽になる!」
「それと、荷車を使う場所を決めておいた方がいいですね。誰が使っているか分からなくなると、逆に面倒ですから」
「なるほど……」
俺はさらに、村人たちの作業を観察した。
水を運ぶ人。
畑を耕す人。
収穫した作物を運ぶ人。
それぞれが別々に動いている。
そして、同じ場所を何度も行き来している。
……これは、まだまだ改善できそうだ。
「君は、本当に面白いことを考えるな」
村長が感心したように言った。
「そうですか?」
「ああ。私たちはずっと、このやり方で暮らしてきた。だから、変えるという発想自体がなかったのかもしれん」
変えるという発想がない。
それこそが、最大の問題なのかもしれない。
「村長」
「何だね?」
「この村、もっと便利にできますよ」
俺は村を見渡した。
今は小さな改善にすぎない。
だが、これを積み重ねていけば、きっと大きな変化になる。
そして、俺はその変化を誰よりも楽しみにしていた。
「……まずは、無駄を全部なくしていきましょう」
こうして、俺の異世界改革が本格的に始まった。




