#59 余韻
三人へ告白した翌朝。
自分は全身の疲労感と筋肉痛によって目を覚ました。
あまりにも濃厚で過激な夜だった。
まさか夢だったのではないかと不安になり、周囲を確認してみる。
すぐそばにはネグリジェを脱ぎ捨て、自分の両脇や胸元にぴったりと体を寄せ合い、すやすやと幸せそうに寝息を立てている三人の姿があった。
「……夢じゃないんだな」
心の底から嬉しくなり、そっと愛おしい彼女たちの肌や髪に触れてみる。
「んぅ……っ、クローバー……」
「ふにゃ……ご主人、様……っ」
触れられた彼女たちは、微睡みの中でくすぐったそうに身をよじり、さらに自分へと密着してきた。
前世を含めても、これほどの幸福感を味わったことはない。
この幸せな時間が、ずっと、ずっと続けばいい。
心からそう願っていたが、ふと窓の外を見てみる。
既に外は明るく、影の位置から太陽が高いことがわかる。
いつもなら、既に朝食を食べ終わっている頃だろう。
他の仲間たちに知られてはマズいと思い、自分は慌てて三人を起こす。
「みんな、起きて! もうこんな時間だよ!」
「ん……クローバー……」
「ご主人様……おはようございます……」
三人は寝ぼけながら、自分に抱擁と口づけを求めてきた。
自分はそれに応じ、優しく触れ合う。
今日の朝食は、ルピナスが担当だったはずだ。
自分やハートも手伝えば、なんとか誤魔化せるだろう。
「ルピナス、早く着替えないと!」
自分が慌てて服を着る中、三人もようやく目が覚めたようだ。
しかし、彼女たちは再び自分に抱擁と口づけを求めてくる。
「さ、さっきしたよ?」
「もう、何回でもいいじゃないですか!」
ルピナスにそう言われてしまっては拒めない。
三人に再び抱擁と口づけを済ませると、体がつい反応してしまった。
視線を落としたハートが、妖艶な微笑みを浮かべる。
「ふふ、ご主人様。また今夜も、たくさんしましょうね」
「――ッ! ほ、ほら、急いでリビングに行くよ!」
自分は逃げるようにドアノブへ手をかけようとした、その瞬間。
「「「「うわっととと!?」」」」
ドサササッ!!!
ドアから、ランティア、ホオズキ、ナグサ、ムスカリの四人が、折り重なるようにして自室の床へと倒れ込んできた。
「……重いー」
「……あはは、クローバー君おはよー」
ナグサが頭をかきながら、苦笑いを浮かべる。
どうやら彼女たちは、自分たちが遅いことを不審に思い、ドアの前で聞き耳を立てていたらしい。
気まずさを感じながら、彼女たちを助け起こす。
「三人だけずるいー。わたしも仲間のはずー」
「そうだよー! なんで私たちも誘ってくれなかったのさー! 幽霊だからって、仲間外れはよくないと思うなー!」
四人が、不満そうに頬を膨らませて詰め寄ってくる。
どうやら彼女たちは「パーティー内での恋愛どうこう」よりも、「どうして自分を誘わなかったのか」という方向で怒っているらしい。
「いや、ホオズキ。仲間だからって、そんな誰にでも手を出すわけじゃ……」
自分が冷や汗を流しながら宥めようとすると、ホオズキはジト目のまま、いつになく強い口調で返してきた。
「わたしも、お嫁さん仲間。だから手を出しても大丈夫ー」
自分は彼女に告白した覚えはない。
彼女の自称お嫁さん発言に頭を抱え、ランティアに視線を向ける。
「ちょっと、ランティア。君も冗談でからかうようなことは――」
「アタシも至って本気だよ。アタシをあそこまで泣かせたんだ。責任、取ってもらわなきゃ割に合わないね」
彼女はニヤニヤとした笑みを浮かべつつも、その瞳は冗談ではなさそうだった。
あの数週間、彼女をどれほど苦しめてしまっていたのかを突きつけられ、自分は言葉に詰まる。
ならばと自分は最後の砦として、ムスカリの方を向いた。
「ム、ムスカリ。自分は君のことを、保護者のような立場で接しているつもりなんだけど……」
「私は君に『父親』を求めた覚えはないよ。大切な助手として、いや、一人の異性として、君の命を誰よりも必死に繋ぎ止めたつもりだ。そこを勘違いしないでほしいね」
ムスカリは呆れたように溜息をつき、明確に好意を言葉にしてきた。
保護者枠は、最初から用意されていなかったらしい。
その横では、実体化したナグサがハートの隣へふよふよと近寄っていた。
「ねえねえハートちゃん! 初めてってどうだった? やっぱり痛い? 気持ちいい?」
「確かに最初は痛かったですけど、ご主人様は優しくしてくださって……。それはもう私の想像を遥かに超えて素晴らしく――」
「ハート、律儀に答えなくていいから」
「クローバー」
「ホオズキ、今度はなんだい?」
「お腹空いたー」
「……とにかくみんな、ご飯にしようか」




