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#55 誕生日前日

年が明け、なんだかんだと活動していたら、ついに自分の誕生日前日になってしまった。


防具工房のマルゲリータさんから連絡があったため、今日はメンバー全員で彼のお店を訪ねていた。

なんでも、例の『花晶鉱石』を使った品物がようやく完成したらしい。


店内に足を踏み入れると、マルゲリータさんは笑みを浮かべて歓迎してくれて、自分たちを男女に分けて奥の部屋へと案内した。


その部屋で、自分に手渡されたのはオシャレなデザインの眼鏡だった。

フレームもレンズも、キラキラしている。

今の眼鏡を外し新しいものをかけてみると、サイズも掛け心地もピッタリだった。


「ありがとうございます、マルゲリータさん」


自分は深く頭を下げたが、マルゲリータさんは人差し指を横に振り、ニヤリと怪しい笑みを浮かべる。


「お礼を言うのはまだ早いよ、本命はこれからさ」


その言葉と同時に奥の部屋のカーテンが開き、女性陣がぞろぞろと戻ってきた。


「クローバー、どうですか? 似合ってますか……?」


ルピナスが顔を真っ赤にしながら、そわそわと自分に問いかけてくる。


自分は視界に飛び込んできた光景に、思考が消し飛んでしまう。

なぜか戻ってきた彼女たちは、目のやり場に困る『下着姿』だったのだ。


ハートも、ヘリオも、ランティアも、全員が下着姿のまま自分を見つめている。

自分は驚愕しながらマルゲリータさんを見ると、彼は目元を指差して『眼鏡を変えろ』と合図を送っている。


わけが分からないまま、自分は元の眼鏡にかけ直した。

もう一度みんなの姿を確認すると、彼女たちは下着姿などではなく、それぞれカラフルで可愛らしい『ネグリジェ』をきちんと身に纏っていた。


露出度こそ普段より少し高めだが、決して公序良俗に反するような格好ではない。

ルピナスたちが恥ずかしがっていたのも、自分の前でパジャマをお披露目するのが照れくさかっただけだったらしい。


呆然と立ち尽くす自分の背後に、マルゲリータさんが忍び寄りそっと耳打ちしてきた。


「どうだい? 花晶鉱石を織り込んだ衣服は、その特製眼鏡のレンズを通して見ると“透過”することができるのさ。これぞ、男のロマンだろう?」


確かに男のロマンには違いないだろうが、素晴らしい技術を使ってなんてものを作り出すのだろう。

彼女たちにバレては後が怖いため、自分は何も言わずに品物の受け取りを済ませた。




携帯ハウスに戻ると、彼女たちは服をそれぞれの部屋へと持っていく。

自分は一人リビングに残り、手元にあるこの眼鏡をどうするか考えていた。


その時、玄関のドアをノックする音が響いた。

ドアを開けて外に出ると、そこには爽やかそうな一人の男性が立っていた。


「クローバーさんですね。貴方宛ての荷物をお届けに参りました」


男はそう言って、綺麗な包装紙に包まれた箱を差し出してきた。

誰か知り合いからのプレゼントだろうか?

自分は疑問に思いつつ、お礼を伝えて箱を受け取る。


「あの、これは誰からの荷物ですか?」


自分がそう問いかけると、配達人の男は静かに帽子を取る。

途端、男の顔が別の顔へと変化していく。


その顔は、以前に一度出会ったことがある糸目の男だった。


「貴方のお父様からですよ」


咄嗟に、腰の魔術銃へ手をかけようとした瞬間。

手元の箱が勝手に開いて何かが飛び掛かってきた。


中から飛び出してきたのは、赤黒く禍々しい鱗を持つ不気味な一匹の『蛇』。

蛇は鋭い牙を剥き、自分の顔面へとまっすぐ飛びかかってくる。

自分は咄嗟に腕を前に出してガードした。


激しい痛みが走り、自分の前腕に蛇の牙が深く突き刺さる。

振り払おうとしたが、蛇の肉体がずるりと自分の肌に溶け込むように消えていき、そのまま『入れ墨』のような不気味な紋様となって腕の皮膚に刻まれてしまった。


途端、体中が凄まじい激痛に襲われる。

喉の奥が焼け付くように熱く、呼吸が急激に荒くなる。

視界がぐにゃりと歪み、膝の力が抜け、まともに立っていられずにその場に崩れ落ちる。


冷たい雪の上に倒れ込み、動けない自分へ糸目の男は静かに近づいて囁く。


「ささやかな贈り物だそうですが、喜んでいただけたようで何よりです。先日のお礼にはまだ足りませんが、その苦痛に満ちた顔を見られただけ満足しておきましょう。それでは、最後の誕生日をどうぞ楽しまれてください」


糸目の男はそれだけ言い残すと、消えるようにその場から去っていった。

自分は意識が遠のき、目の前が真っ暗になっていく。

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