#54 年末
今日は年末、今年最後の日。
自分たちは携帯ハウスのリビングに集まり、メンバー全員で大きな食卓を囲んでいた。
テーブルの上には、豪華な料理がずらりと並んでいる。
キンキンに冷えたジュースやお酒を片手に、みんなで賑やかに雑談を交わす。
すると、ふと食事の手を止めたルピナスがしみじみとした口調で語りだした。
「去年の今頃と比べると、なんだか今の状況がまるで夢のようですね……」
彼女はこれまでの苦労を思い返しているのか、愛おしそうに周囲を見回す。
「みなさんは、去年の今頃何をしていましたか?」
ルピナスのその質問に、食卓が一瞬だけ静かになった。
(去年の今頃か……)
自分は記憶をたどってみるが、分身の記憶を引き継げていないので思い出しようがなかった。
「ボクは、実家で家族と過ごしてた」
ヘリオがいつもの真顔で、肉を咀嚼しながら口を開いた。
「過ごしながら、クローバーを迎えに行くための最終調整をしてた」
「あっ、やっぱりその時からもう準備してたんですね」
苦笑いするルピナス。
「私はナグサ様が亡くなられたばかりでしたので、家全体で静かに喪に服しておりました」
ハートが少し寂しげに耳を伏せる。
今の楽しそうな彼女からは想像もつかない、寂しい冬を過ごしていたらしい。
「わたしはー……覚えてないー」
ホオズキはのんびりと首を傾げ、目の前のエビに夢中になっていた。
実に彼女らしいが、相変わらずパーティーメンバー以外のことは覚えていられないらしい。
「アタシはねぇ~、昔からのダチとずーっと飲んだくれてたよ」
ランティアがケラケラと笑いながら、冷えたお酒のボトルを揺らす。
「私は一人で研究に没頭していたよ」
ムスカリも静かにスープを口に運んだ。
三者三様、みんなバラバラな場所でそれぞれの年末を過ごしていたわけだ。
「あのねあのね! 私はねー!」
ナグサがふよふよと宙に浮きながら、満面の笑みで手を挙げた。
「去年の今頃はね! もう幽霊になってハートちゃんの後ろに憑いてたんだけど、誰にも気づいてもらえなかったんだよー!」
「「「……あぁ」」」
ナグサの明るすぎる告白に、何人かがなんとも言えない声を上げた。
「……よし! 過去の湿っぽいことはここまでにして、もう一回乾杯しよう!」
自分が笑顔でグラスを掲げると、メンバーたちも一斉に笑顔を輝かせた。
「「「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」」」
バラバラだったみんなが、今はこうして同じ食卓のご飯を食べている。
みんなの話を聞くと、今年は彼女たちにとって好転した年だったのだろう。
このまま来年も、彼女たちが笑顔で過ごせるといいのだが……。




