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#48 素材採掘二日目

鉱石採掘二日目。

みんなで声を掛け合いながら作業を進め、午前中の採掘を終えた。

集まった鉱石の量は、これで全体目標の半分ほど。

順調なペースに胸を撫で下ろし、自分たちは一度洞窟を出て携帯ハウスで昼食をとることにした。


ぞろぞろと来た道を戻っていくメンバーたち。

だが、その帰り道の途中で最後尾を歩いていたホオズキが、何かに気づいたようにふらりと横道にそれていってしまった。


自分はすぐに彼女の後を追いかける。

薄暗い岩陰を曲がった先で、ホオズキは『宝箱』の前に佇んでいた。


「宝箱ー」


「えっ? 宝箱……?」


前日にもこの場所は確認したはずだが、こんなところに宝箱なんてなかったはずだ。


「ホオズキ、罠かもしれないから不用意に触っちゃ――」


「おーぷんー」


自分の静止が届くよりも早く、ホオズキは何も考えずに宝箱を開けてしまった。


プシューーーッ!!!


「わっ!?」


箱が開いた瞬間、中から煙が一気に噴き出しホオズキの顔面へと吹きかけられる。

あまりの出来事に、自分は慌てて彼女の元へと駆け寄った。


「ホオズキ、大丈夫っ!?」


「あ……なんか、すっごく……ねむー……」


ホオズキはとろんとした目でそう呟くと、そのままその場へパタリと倒れ込んでしまった。


「ホオズキ!?」


大慌てで抱き起こし、必死に脈や呼吸を確認する。

呼吸は安定しており、どうやらただ熟睡しているだけのようだ。

命に別状はないようで安堵する。


すると、宝箱からミシミシと不気味な音がし出した。

自分はホオズキを急いで背負い、素早く宝箱から距離を取る。


暫くして音がやむと、宝箱が逆さまにひっくり返った。

中から現れたのは、筋肉質で嫌な光沢を放つぬめぬめとした胴体。

筋骨隆々な人が宝箱を逆さにして被ったような、奇怪な異形だ。


そいつは何かを探すように、近場をきょろきょろと見回している。

だが、目当てのものは見つからないらしい。


ふと、宝箱がこちらを向いた。

アレに目は見当たらないが、視線が合った気がする。


恐らく、罠にかかった獲物であるホオズキを探していたのだろう。

状況を理解して、自分は腰の魔術銃を引き抜き即座に火魔術弾を撃ち込んだ。


だが、異形はそれを片手で軽々弾き消した。


……見た目通り、滅茶苦茶強いようだ。

貧弱な自分では、掠り傷一つつけられそうにない。


異形が低く身を沈め、クラウチングスタートの体勢を取った。

自分はホオズキを背中でしっかりと固定し直し、脇目も振らずに全力疾走で逃げ始める。




先ほどまでいた通路を目指して死に物狂いで逃げたが、どういうわけか外に出られる通路が見当たらない。

迷っている暇がないため、仕方なく別の通路へと飛び込んだ。


背後から迫る足音に冷や汗を流しながら走っていると、道すがらに置かれた樽を発見した。

自分はその樽の影に滑り込み、気配を殺して宝箱の異形をやり過ごす。


ドスドスと重い足音が遠ざかっていくのを聞き届け、ようやく一安心して状況を確認した。


背中のホオズキはまだ眠っている。

頬をぺちぺちと叩いてみたが、起きる気配はない。


「……おいしいー……」


この期に及んで呑気な寝言まで出る始末だ。

誰のせいでこんな目に遭っていると思っているのか。


(それにしても、こんな洞窟に樽が置いてあって助かった……)


窮地を救ってくれた樽に感謝する。


(……樽? どうしてこんな場所に樽があるんだ?)


嫌な予感がして、すぐ隣にある樽へと視線を向ける。


ミシミシ、ミシミシ……。


樽から先ほどの宝箱と同じ、嫌な音が響き始める。

そして樽の底から、宝箱と似たような胴体が生えだした。


自分は寝言を呟くホオズキを必死に抱え直し、再び全力疾走を開始する。




無我夢中で走り続けた先では、岩壁が待っていた。

行き止まりへと追い詰められてしまったのだ。


振り返ると、背後からは宝箱と樽、二体の異形がじりじりと距離を詰めてきている。


異形たちは立ち止まると、なにやら自分とホオズキを交互に指さし始めた。

言葉は通じないが、雰囲気で分かる。

きっと、どちらがどちらを食べるのか決めているのだろう。


もうダメか。

自分はせめてもの抵抗にと、背中のホオズキを庇うように後ろへ下がった。


その瞬間、背後の壁から何かが飛び出してきた。

見覚えのある小さな姿。

ホオズキの召喚獣である、アルマジロ(テュポーン)とヒヨコ(ガルーダ)だった。


アルマジロ(テュポーン)には土がびっしりとついている。

どうやら、壁を掘り進めて駆けつけてくれたらしい。


だが、二体の異形は気にする風もなく近づいてくる。


小さなヒヨコ(ガルーダ)が、トコトコと自分たちの前に進み出た。

そして、その小さな口を大きく開ける。


ゴォォォォォォォォッ!!!


ヒヨコ(ガルーダ)の口から放たれたのは、猛烈な炎だった。

激しい熱風が自分たちの肌を灼く。


宝箱と樽の異形は、悲鳴のような音を上げて激しくもがき苦しむ。

しばらくの間、炎の中で暴れ回っていたが、やがて力尽きたようにその場へ倒れ込み動かなくなった。


突然の顛末に驚いていると、今度は背後の壁から大きな音がし出した。

何事かと身構えていると、足元のアルマジロ(テュポーン)が自分のズボンの裾を咥えて引っ張り、下がれと合図してくる。

指示通りに急いで距離を取ると、次の瞬間。


壁が大きく崩れ落ち、外へとつながる通路が開いた。

砂煙の向こうから姿を現したのは、息を切らせたヘリオたちだった。


「クローバー、ホオズキ、無事?」


「へ、ヘリオ……っ! みんなも!」


自分は無事に合流できた安堵に胸を撫で下ろしながら、彼女たちから事の顛末を聞かされる。


なんでも、外に出て携帯ハウスを展開したところ、後ろにいた自分とホオズキの姿がどこにも見当たらず、慌てて洞窟内へ探しに戻ってくれたらしい。

すると、途中で『木箱』の異形に遭遇。

そいつが通路を塞ぐように壁を作っていたため、みんなで討伐したのだとか。


しかし、壁自体は残ったまま。

どうしようかと悩んでいたところ、家からついてきていたアルマジロ(テュポーン)たちが、何かを察したように慌てて壁の向こうへ向かって掘り進みだした。

それを見たヘリオが、一気に壁をぶち抜いた――という流れだった。


通路の消失も、異形の仲間の仕業だったようだ。

すべての謎が解け、自分は必死に動いてくれたみんなに心からのお礼を伝える。


すると、ルピナスとランティアの二人が、黒焦げになった異形の残骸へと近づいていった。

ランティアが手元の本をめくりながら、その死骸を詳しく調べる。


「どうやらコイツら、新種の『ミミック』みたいだね」


「ミミックですか? なら、中に何かお宝が入っているかもしれませんね!」


ルピナスのその言葉に、自分たちは異形の中身を確認してみることにした。

黒焦げた箱を恐る恐る開けてみると、そこからいくつかの中身が転がり出てくる。


『花晶鉱石』、少量の綺麗な『宝石』。

そして一冊の『本』。


その本に、自分やメンバーは見覚えがあった。

使用するだけでスキルを習得できる貴重な『スキルブック』だ。


思わぬレアドロップに驚くが、中身をどうするかは一旦保留にすることにした。

自分たちはミミックの死骸とドロップ品をすべてガレージへと回収。

ハウスで手早く昼食を済ませた後、午後からの採掘作業へと戻った。


ちなみに、ホオズキはまだ起きなかったので、携帯ハウスを展開したまま置いてきた。

召喚獣たちもついているので、危険はないだろう。


トラブルはあったものの、その後は魔物の襲撃もなく作業は非常に順調だった。

あと一日の作業で、必要な採掘量に達成しそうだ。

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