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樹冠祈願  作者: いれく
第3章〜それぞれの物語〜
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55.『ニューヨーク』

NY編!開始!

 自分は他の魔法使いとは違う、なんて思っていない。


 根っこの部分では一緒なんだ。『愛』を知ったからって何も変われていない。


 過去も、『愛』を知る前も、知ったあとも、そして今も。自分はクズだ。


 何も、何も変わっちゃいない。自分は変わったつもりでいても、心の何処かで相手を見下していた。自分は相手より上だと思っていた。それは事実だ。


 結局自分は『魔法使い』。『愛』を知っただけで他の魔法使いと違うと錯覚した、クズなんだ。



 結局、セレーネ・ナヴェールという魔法使いが過去と現在で変わったことなんてたった一つだけ。


 セレーネ・ナヴェールは自分のことが過去よりもうんと嫌いになった。


 それだけは、はっきりと変わったと自覚できる。


______________________________


 秋のNYは観光に最適だ。暑すぎず、寒すぎず。日本じゃ最近、えっ、『秋ってどこに行った?』とか、『春ってあったっけ?』となることが多いが、NYはそんなことなかった。


 そう。今、獅童アラタはNYにいる。アラタ初の海外である。


 目的は世界各地にある『魔法使いの遺骨』を手に入れること。その一つがアメリカ大陸にあるらしい。ハルキはヨーロッパの人工島、ノルトハーヴェンに、ラクとアカネは南極に、と今の真剣組アラタ派閥、通称アラタ派メンバーはみんなそれぞれ世界各地でその遺骨集めに勤しんでいる。


 早乙女リリアという協力者の存在は大きい。彼女無しではこんな順調に世界各地へ、なんて出来なかっただろう。


 連絡によるとハルキはノルトハーヴェンでエリオットという名のリリアの友人に世話になっているらしく、ラクとアカネはリリアのおかげで南極に行くことが出来ている。


 そして、アラタもアメリカで働くこのガイド兼通訳、エリカ・サマーズを紹介してもらった。


 彼女は27歳。長いブロンドの髪を肩まで伸ばしていて、デニムジャケットを羽織っている。サングラスをかけていて、なんか大人の雰囲気がある。が、実際はかなりはっちゃけている。なんというか、さすがアメリカ人、といったところだ。英語は勿論、日本語もペラペラで、日本語で普通に会話ができる。アラタが彼女の話をした時、ちょっと悲しそうな顔をしていたから多分独身。


 今、アラタはエリカにNYの街並みを案内してもらっている。


 「でも私も初めてだよ。誰も行ったことのない『遺跡』を案内しろって言われるのは。」


 エリカはそう言いながらアラタを先導して道を進む。


 さすが世界の中心と言っても過言ではない街、NY。人がいっぱいだ。エリカから少しでも離れようものなら迷子になってしまいそうだ。


「そろそろご飯にしようか!」


 エリカはそう言うとアラタの手を引いて店の中に入店していった。


______________________________


「それで、その遺跡ってのはどこにあるんだい?ここはNYだ。遺跡なんてものとは程遠い場所じゃないかい?」


 エリカはハンバーガーをかじりながらアラタに尋ねる。


 エリカの向かい側で同じくハンバーガーをかじりながらアラタは答える。


「下水道。下水道にあるらしいよ。」


「下水道か。巨大な白いワニが出るぞ?」


「そうなん?」


「いや、そうか、知らないのか。なんでも無い。」


 エリカはちょっと気まずそうにハンバーガーを口の中に入れた。


「でも下水道かー。あそこには行きたくないなぁ。だって臭いし、ホームレスもいっぱいいて、ちょっと気まずいんだよね。なんでそんなところに遺跡があるんだろう。」


「聞いた話によると遺跡が先で、後から下水道が創られた、ってかんじらしいよ。遺跡の大体の場所は分かってるんだけど、流石に案内無しでそこに行くのはキツイかな。」


「で、私の出番ってわけね。リリア、後でたんまり報酬もらうからなぁ?」


 エリカはジュースを飲み干し、勢いよく立ち上がる。


「よしっ!行くぞ、遺跡探検に!!」


 エリカのテンションはなぜか上がっている。普通、依頼であっても下水道に行って探検なんてテンションだだ下がりだろうが、エリカはそんなんじゃテンションは下がらない。アラタもちょっと楽しくなって、急いで口にハンバーガーを放り込み、エリカについて行った。




______________________________



 下水道の通路の一角。ひとつだけ色の違うタイルを3回叩き、その3つ隣のタイルに手をかざす。


 神木柊に言われたとおりにやると、タイルがいきなり動き出し、そこから扉が出てきた。


「Wow」


 エリカが静かに驚く。


 ドアノブをひねり、押し開けると部屋があった。


 たった一部屋。生活するのに最低限のものだけおいてあるような部屋。


 真ん中には棺桶らしきものがあり、アラタはそれを覗き見る。


 なんだ、意外と楽勝じゃないか。苦戦する要素もなかったな。


「エリカ、ありがとう。もう俺の目的は果たせたから....」


 アラタはそう言いかけて、口をピタリと止める。




 無かった。遺骨があるはずの棺桶に遺骨がなかった。


 一瞬、アラタの脳がショートする。


「遺骨がない!エリカっ!遺骨がない!ちょっと、探して!」


 アラタは慌ててエリカにそう言って棺桶の周りをしゃがんだり触ったりして確かめ始めた。


 5分ほど部屋中を探し回った後、


「アラタ、ちょっと見てくれ。」


 エリカがそう言ったのでアラタはエリカのもとに近づく。


 そこには紙がおいてあり、日本語で『真剣組へ。取引をしよう。この住所の場所に来てくれ。』と書かれていた。


「はぁ?誰だ?こんなこと書きやがって!俺が来ることを知っていたやつが先回りしたのか?!」


 アラタはイラツイてそういう。エリカはそっと紙の下に大きく描かれているハクトウワシのマークを指さす。


「なんてこった.....まさか、まさかねぇ。」


 エリカは目をピクピク動かしながら、動揺を隠せていない。


「エリカ?そのマークになんか意味でも...」


 アラタの質問にエリカはゆっくりと答えた。


「なにかも何も.....これは軍のマークだよ。君、軍に目をつけられているよ...」


 アラタはまた脳がショートした。

さて、NY編は44話〜49話のノルトハーヴェン編、50話〜54話の南極編と同時進行の物語です。ノルトハーヴェン編がハルキメインで、南極編がラクがメイン。NY編はアラタがメインです。それぞれノルトハーヴェンがハッピーエンド、南極編がバッドエンドと来ているのですが、NY編はどうなることやら。


追記

夏の暑さにやられて夏だと思って書いてた。そう言えば第3章って秋の物語だったわ。修正修正。いやー、てか、去年の9月からこの物語、ずっと秋なんだなぁ。長いな。秋。どうでもいいけど最近マイケルの映画見に行って、凄く影響されている。

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