54.『罪人から英雄へ』
久々イエィ!南極編ラストぉ!
遺跡に入った時、マナ・ケアロハはラクとアカネとはぐれた後、なにもない真っ白な部屋に迷い込んでいた。その部屋の真ん中には石の直方体の箱がおいてあった。
マナはその石に近づいていった。白い何かが中にあるのが見えて、後ろから誰かに縛られて。それっきり記憶がない。というか、感覚がない。今も、深い深い闇のそこに一人取り残された感覚だ。
今、自分の体で何が起きているのかわからない。動かせない。見えない。聞こえない。匂わない。ただ、死んではいないことだけなんとなく分かる。
なにか、まずいものでも見つけてしまったのかな?アレがラクたちが言っていた魔法使いの遺骨だったのだろうか。
何がともあれ、自分は何も出来ない状況。ラクに託すしか無い。
ラク、頑張ってね。
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マナの体の中にファルナが入っているというのはラクにとってこの上ない最悪な状況だ。
自分に敵意がある奴が仲間の体の中にいる。戦闘になればマナを傷つけることになる。というか、シェイドとか言う男が『オマエも戦いたいだろ?』とか言って渡した体。100%敵だから、戦闘は避けられない。できればマナを傷つけたくないからアカネを守りつつ相手を傷つけずにシェイドという男とファルナを倒さなければならない。
正直こちら側が不利すぎる。
「召喚!」
三原色などの大技を使えばマナを殺してしまうかも知れない。遺跡が崩れたりしたらアカネも危ない。こっちの攻撃手段は生物を大量召喚からの自分も含めて近接。これがベスト。
問題は敵は二人いるということ。ラクがどちらかに偏れば当然片方は攻撃が薄くなる。アカネにどちらかを任せるのは流石にリスクが高い。アカネはもうほとんど体力も残ってないだろう。能力も使えないかも知れない。
「デイノニクス、アトロキラプトル、ヒョウ、ヤク。アカネを守れ。」
何種類かの動物をアカネの護衛に回す。そのままラクはキメラのような見た目に自分を変形させ、まずはファルナに襲いかかっていった。
「マナの体から出ていけ。」
ファルナの足にツタが絡まり、固定される。さらにそこにラクが召喚したありとあらゆる生物の数の暴力。そしてラク自身。シェイドはとりあえず後回しだ。
「本当に私とよく似ているねぇ!ただ、覚悟が足りないねぇ。ほぉんとうに勝ちたいならぁ、現存する動物じゃなくて自分で最強の動物をぉたぁくさんつくらないとぉ。たとえばぁ。こう。」
一瞬でラクが召喚した動物たちが大きなトゲに貫かれ、消滅する。ラクも体中に穴が開く。腕が吹っ飛び、ファルナの隣に転がる。
「...何をした?!」
「動物を召喚させたぁ。私が作った動物だぁ。」
見ると、ファルナの周りにウニのような見た目をした銀色のなにかがフワフワと浮いている。
「コイツラはぁ、トゲに何かが触れたらトゲを伸ばす能力が与えられているんだぁ。私が作った動物は君が操る動物の何倍も戦闘向きなのぉ。」
ファルナはラクに勝ち誇ったように上から目線で言った。
「...ファルナ、覚悟が足りないって僕に言ったよね?」
「あぁ。言ったとも。」
「ありがとう。お陰で本気を出す覚悟ができた。」
ラクがそういった途端、ラクの体が弾けた。ラクの中からネバネバの粘液のようなものが飛び出し、ファルナに降り注ぐ。
「...ジバクアリか。」
「正解。」
ラクは一瞬で体を再生させ、粘液の粘り気で動けないファルナに蹴りを入れる。
「....次はカモノハシ。」
「よく分かったね。」
ファルナの肩に、ラクの足から生えた爪が食い込んでいる。
「ラクくん、キミは本当に強いねぇ。けど、私、毒効かないんだよねぇ。」
ファルナは余裕そうな顔で指パッチンをする。するとラクの足元や頭上から無数の針が飛び出してきた。
「君はどうかなぁ?」
なるほど。毒針らしい。
「残念。僕も毒無効持ち。」
「だろうねぇ。」
ファルナはラクの粘液を振り払い、また指パッチンをして今度は大きな植物の根っこがラクをぶん殴る。
「ファイヤー!」
ラクがそう叫ぶと同時に根っこに火がつく。一瞬でまっ黒焦げ、になることはないが、炎は燃え上がり、根っこは動かなくなる。
「そうかぁ、君は『自然』の能力者であって、『生物』じゃない。だから、別の属性の攻撃も出来るんだぁ...ずるい、ずるいなぁ。ずるいずるいずるいずるいずるい!」
ファルナは自分の顔をひっかきながらそういう。
隙だ。かなりの。ラクはその隙を見逃さない。
「マナ、ごめん。」
ラクはすかさずファルナに近づき、おでこに人差し指を当てる。
「グッ!ガバッ!ァ゙!」
ファルナが苦しみ始める。
「何をした!緋ノ宮ラク!」
「マナをパワーアップさせた。マナの意思を強くさせて、無理やりオマエを追い出す。」
ラクの能力の応用。他者に生命力を注ぎ込む。マナをファルナから無理やり引きずり出す。
「甘いんだよクソガキ!」
突然、ラクの両手が破裂する。ラクが拍子ぬけた顔をすると同時にファルナはにやりと笑う。
「たかが一能力者ごときが、ガキごときが、大魔法使いに勝てると思うな!」
ラクが再生させようとした瞬間にまた破裂、破裂、破裂。
そして顔にカビが生え始め、侵食されていき、意識が遠のいていく。
「私はねぇ、自分の魔法で即興で生物を作ることが出来るんだよぉ!対象の細胞の中に入り込んで破裂する単細胞、人の身体で以上な速度で増殖するカビ、私の言うことだけを聞く巨大植物。体の中に侵入し、臓器を片っ端から破壊する細菌!他にももぉっと沢山作ることが出来るんだよぉ!それに比べて君は、現存する生物ばっかり!私はァ!オマエのぉ!完全上位互換なんだよぉ!!」
ラクはよろけて、なんとか立ち続ける。口から血が吹き出て、今、そんな状況の中でも心配で、アカネを見つめる。
「アカネ...」
「ラク兄っ!」
「近づくな!アカネっ!」
ラクはそう言って倒れた。
「あぁ!そうだとも!そもそも偉大なこの私との契約を結ばなかった時点でオマエはその程度だったんだよぉ!少し強い能力を手に入れただけのガキが、偉大な私を退けやがってぇ!私の何が不満だぁ?えぇ?言ってみろよぉ!何が『僕は十分に強い』だぁ?私に!負けておいて!」
ファルナの声が聞こえる。アカネの鳴き声も。
緋ノ宮ラクは敗北した。
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「よぉ、英雄。」
ラクの目の前に、黄色い髪の青年が立っていた。
「...は?」
ラクは状況が掴めない。自分の目の前に自分が立っている。
「オマエは...僕なのか?」
「そうだとも。明確に言えば、未来のオマエだ。」
黄色い青年はそう答えた。
「アレだ、ほら、さっき紅がセラの記憶をお前に見せたろ?あれの副作用的な...付属品的な...とにかく、アレが原因で僕がこうしてオマエの目の前に立ってるんだ。」
「これは...夢か?」
「あぁ、もちろん。未来の緋ノ宮ラクが直接話しかけてるんじゃなくて、神木紅が生み出した幻影の中の緋ノ宮ラクが話しかけているだけだ。」
ラクは起き上がり、未来ラクを見つめる。
「ちょっと話をしよう。」
未来ラクに連れられ、ラクは共に歩き出す。
「セラは可愛かったろ?英雄。」
未来ラクはラクに言う。
「...まぁ...可愛いかって言われたら可愛かったけれど...」
「素直じゃないな。あんな可愛い魔法使いいないって。」
「アイツも魔法使いなのか?!」
「ちょいちょい。確かにセラは魔法使いだけど、シェイドとかファルナとかと一緒にするな?セラは世界一可愛くて、世界一良い子なんだぜ?ごめん、世界一良い子は嘘。それはアカネ。」
未来ラクは笑いながらそういった。
「なぁ、あの...セラフィナってのは僕の彼女なのか?」
「はははっ!まさかぁ!」
「でも、オマエもすごく自慢げだし、あの幻影の中でも凄く仲良さそうだったし!」
「だって僕もオマエも、ヘタレじゃん?」
「あぁ...」
「それに...おっと、これ以上はネタバレだな。未来はわからないほうが面白い。」
未来のラクは笑った。
「本題に入ろう。ファルナは強かったろ?」
「強すぎ。アイツ、魔改造動物で攻撃してくるとか、マジで、なんと言うか...」
「「愛がない。」」
ラクと未来ラクの言葉が被る。
「さすが僕。同じセリフが出てくるんだ。よな!ムカつくよな!生物の魔法使いのくせに生物への愛が感じられない!もっと、こう、生物へのリスペクトが欲しいよな!それで負けるんだったら文句はないけど、あのクソッタレ!」
未来ラクはファルナへの悪口が止まらない。ラク自身も思っていることを語り続ける。
「で、英雄。オマエは負けたままでいいわけないよな?」
「当たり前だ。アカネを残してるし、マナも助けないとだし、セラフィナだって、まだ会ってすら無い!」
「なら、力をやるよ。英雄。ホント一時的だけど。絶対に勝たせてやる。アカネに被弾しないようにだけ気をつけろよ?」
未来ラクはそういう。
「あと忠告しないといけないことは...あっ!そうそう!いいか?オマエはカグヤにもアラタにもイオにもヒビキにもなれない。オマエは弱い。英雄。だから、オマエはオマエのままであれ。強さを求めるな。速いうちに諦めな。」
ラクはさっきから気になっていた。未来のラクはなぜ自分を『英雄』と呼ぶのか。まさか未来の自分は自認『英雄』の痛いヤツなのか?
「あのさ、未来の僕。なんでさっきから僕のことを『英雄』って呼ぶんだ?」
「なぜって....僕は『罪人』だから。」
未来ラクはそう言ってどんどん薄くなっていき、消えた。
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「さて、雑魚娘!次はお前の番だぞぉ?」
ファルナは陰で縮こまるアカネにそういう。ラクがアカネを守るために召喚した動物たちはすでに消えている。ファルナの後ろではシェイドがつまらなさそうにその光景を見つめていた。
「お、お前なんか怖くないんだからな?すぐにラク兄が目を覚まして、オレを守ってくれるから!さ、最悪オレ自身が戦うし?お、驚け?オレ、強いんだぜ?ボスをワンパンできるんだぜ?」
「ハッタリはやめなよ。潔く諦めて、死を迎えなぁ?」
ファルナは少しずつアカネに歩み寄る。アカネは震えながら一歩、一歩ずつ下がっていく。
「ラク兄....ラク兄ぃ!」
「緋ノ宮ラクはもう負けたんだよぉ?幻想を抱くのは諦めなぁ?」
ファルナがそう言ったときだった。
「三原色。」
聞き慣れた声がした。それと同時に、ファルナは光に包まれた。
「ほぉ?」
シェイドが関心を見せる。
「幻臨かぁ!たどり着いたのか、能力者の極地に!」
シェイドは興奮気味にそう叫ぶ。
ラクの体は光り輝き、どこか神秘的な見た目をしている。
「っ!緋ノ宮ラク!」
ファルナは叫び、アカネに手をかざす。
「お前!人質だぞぉ?私のこの体も、この娘も!だからお前はわたs...」
ファルナが喋っている途中、ラクは指をパチンと鳴らした。同時に無数の影がファルナを遅い、中に入り込んでいった。
「ガバッ!グッ!ラクっ!このッ!ァ゙っ!死ねっ!殺す!ガバッ!ごめ、ごめん!ゆるしっ!ァ゙ああっ!」
ファルナは苦しそうにしばらくもがくが、あっけなく倒れた。
「安心しろ。殺したのはファルナの魂だけ。マナは無事だよ。」
ラクがそう言って着地する。と同時にアカネはラクに抱きついた。
「さて、シェイド。次はお前...いない?」
シェイドがさっきまでいた場所にシェイドがいない。
「やぁ、俺は正面から幻臨中の能力者相手に戦うほどバカじゃないんだ。」
声だけが聞こえる。と、同時にラクは目眩がし、また倒れた。
「またどこかで会おう!ケッケッケッ!」
「ラク兄ぃ!」
シェイドの笑い声と、だれかがラクを心配する声だけが響いた。
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「.....にぃ.......兄ぃ......ラク兄ぃ......」
誰か、誰かの名前を呼んでいる。聞き覚えのない声が聞き覚えの無い名前を。
「ラク兄!起きたのか?心配したんだぞ?」
黒髪のロリ、14くらいの少女が自分の顔を覗き込んでる。
「.....誰だ?お前。迷子か?」
✕✕は顔を上げ、あやふやな意識の中、目の前の少女にそういった。少女はひどく傷付いた顔をし、泣きそうな顔で言う。
「オレだよ!アカネ!黒澤アカネ!緋ノ宮ラクの妹(義理?)だ!アンタの妹分だよ!」
アカネと名乗った少女はそう叫んだ。
「...ごめん、ホント分かんない。そもそも、僕、誰?」
アカネは傷付いた顔をまたする。
「ラク兄ぃ....まさか.....記憶が.....」
そうアカネがいいかけた時、
「あぁ!ラク、起きてる!大丈夫?私のせいで迷惑かけてほんっとごめん!」
マナがラクに駆け寄ってきた。
「えっと....」
✕✕は、ラクは困惑する。無理もない。いきなり褐色美少女が目の前に駆け寄ってきたのだから。キョトンとするマナにアカネは伝える。
「....マナ、今ラク兄は記憶喪失かも知れない....」
マナは驚いた顔をして、ラクを見つめ、そしてアカネを見つめて...
「てか、アンタ、誰?」
アカネを困惑させ、脳をショートさせ、そして絶望に叩き落とした。
ちなみに未来ラクは第6章のラクです。次回からアラタ視点、NY編!




