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樹冠祈願  作者: レニペン
第3章〜それぞれの物語〜
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49/53

49.『お家に帰ろう!』

南極編、スタートです!





「まさか、こんな形で夢が叶うとはな。」


 ラクは船の上から真っ白な自然の神秘を見つめながら、アカネに呟いた。


「ほんと、スゲェ。オレ、こんな大自然生きてて見たこと無いぜ!」


 アカネはぴょんぴょんと跳ねながらラクに言う。


「ったりめぇだよ。僕もこんな大自然、見たこと無いんだ。『自然』の能力者ですら見たことが無かった自然の極地、それが南極だ。」


 ラクはまるで自分の自慢話をするように誇らしげに言う。そのラクの顔は嬉しそうで、楽しそうで、それから目に涙が溜まっていて。そんなラクを見るのは初めてで、アカネも嬉しくなって。


「やぁ、ラクくん、アカネくん!楽しんでるかい?」


 後ろからリリアの声も聞こえてきた。


「いや、マジ感謝です!リリアの姉貴、一生ついてきます!」


「あっははっ!いいぞ、ラクくん!もっかいリリアの姉貴って言って?」


「姉貴〜!」

「姉貴〜!」


 アカネもラクの真似をしてリリアのことを姉貴と呼んでみる。リリアはそれが心地よかったのか、いつもより嬉しそうに笑った。










 船から降りる。ラクとアカネは、この極寒の地に足を踏み入れた。


「ラク兄、ここから一歩出たら南極だぜ。何ていうんだ?」


「へ?」


「ほら、南極に降り立ってからの一言目!楽しみにしてたんだろ?」


「あぁ、それね。」


 ラクは階段から一歩、踏み出す。氷の大地に足がつく。


「....今、僕は人生でさいっっっっっ!こうの!気分だ!!」


 ラクは両手を広げ、大声で叫んだ。アカネもはしゃいでラクに飛びつく。ラクもこれまでにないほどの笑顔で、飛びついてきたアカネを抱きしめてくしゃくしゃと頭を撫で回した。


 幼い頃から憧れていた地。そんな場所に行けて、ラクの人生でこんなに嬉しかったことはない。


 できれば、自分が南極に立っているところをカグヤにも、見せたかったな。


 アカネの頭を撫でながら、ラクは亡き兄に思いを馳せた。






 緋ノ宮ラクは、兄であるカグヤが死んでから、3兄弟の末っ子、緋ノ宮イツキと連絡をとっていない。何も出来なかった自分が、カグヤの死を見ることしか出来なかった自分が、弟の前に立つ勇気がない。イツキは親戚の家に引き取られているらしい。連絡を取らなくなってから日数が増えるごとに気まずさと罪悪感が増していく。余計に連絡を取る勇気がわかない。


 真田アカネという存在はそんなラクの疎遠になった兄弟たちの穴を埋めるような存在だ。ラクはアカネを妹のように思っていた。アカネと一緒にいるとなんだか安心する。アカネが可愛くて、なにかしてあげたいと思う。ちょっと甘やかしたいとも思っている。そう思っていることを自覚するたびに、リアル弟であるイツキへの罪悪感はまた増していく。


 南極に付いてから5日。


 ラクはアカネと一緒にペンギンのコロニーを見に行くのが日課になっていた。


 アデリーペンギンのコロニーが基地から近く、そのコロニーをラクはだいたい1時間くらい毎日見ている。アカネも最初の数分はちゃんと見るのだが、触るのはダメだし、近づくことすら規制があるため、見飽きたら暇で、初日はウロウロしていたが、二日目からはスケッチブックとペンを持ってアデリーペンギンの絵を描くようになっていた。


 今日もラクがアデリーペンギンを見ている間、アカネは淡々とペンギンの絵を描いていた。ちょっとずつ上手くなっていき、毎日ラクに褒められるのが嬉しくて。


「ん?」


 アカネはふと、ペンを止める。明らかな違和感を感じたからだ。


 なんか黄色いのがいる。


 黒と白ばかりのアデリーペンギンの中に、ポツンと黄色い羽毛。


「ラク兄、なんか黄色いのあるぞー!」


 アカネはとりあえずラクに報告する。


「気づいてる!顔が白いからロイヤルペンギンだね、南極にはいないはずだからはぐれペンギンだと思う。ちょっと待ってて。」


 ラクは背中から翼を生やして空を飛び、『グウぇー』と汚い鳴き声を上げた。するとアデリーペンギンたちも『グウぇー』と無き変えして、ロイヤルペンギンの周りから退いていった。そのポツリと空いた空間にラクはゆっくりと舞い降り、そこからさらにロイヤルペンギンの姿に変化した。


 ラクペンギンはロイヤルペンギンと何回か鳴きあった後、よちよちと黒い群れの中をかき分けてアカネの元に戻ってきた。


「すげぇー!さすがラク兄!」

「kupaianaha!その能力、すごくクール!」


 アカネがラクに興奮して叫ぶ。それからもう一人も...


「「誰?」」


 するっとペンギンから人間の姿に戻ったラクとそれを見ていたアカネの声が重なる。


 アカネの後ろで、日焼けした小麦肌の防寒着を着た少女が立っていた。スレンダー体型で、胸は控えめ。髪が見えてなければ美少年と言われても違和感はない。


「おっと、自己紹介がまだだった!Aloha!私はマナ・ケアロハ!マナって呼んで!普段はハワイでガイドやってるんだ。動物が大好きで!今回の研究にいろんなコネで参加させてもらえることになったんだ。」


 マナは元気いっぱいに自己紹介をした。


「そっちは?」


「オレは真田アカネ。日本の早乙女リリアの付添人だ。で、」


「僕は緋ノ宮ラク。同じくリリアの付添人。能力は『自然』。自然で出来ることなら何でも出来る。夢のような能力だよ。」


 アカネとラクが自己紹介を終えるとマナはラクに手を突き出した。握手しろ、ということらしい。


 ラクはその手を握った。途端、マナの目がきらりと輝く。


「ねえねえ、さっきのって能力だよね?あの能力、どんな感じなの?動物に変身するのって、どんな感覚なの?」


「どんなって言われても...」


「じゃあさ、じゃあさ!動物の言葉は分かるの?」


「うん。分かるよ?」


「マジで?!kupaianaha!!」


 マナは凄く楽しそうに飛び跳ね、ラクの手をブンブン振る。


「おい、あんましラク兄の手を握るな?」


 アカネが頬を少し膨らませて、二人の手を振りほどこうとする。


「ごめん、アカネ。」


 ラクは握手をやめ、アカネの頭をポンポンと撫でる。アカネはそのラクの手を自分の頭に押し付けてスリスリさせようとする。


「とにかく、このコを家に帰してあげないと。」


 ラクはしゃがんでロイヤルペンギンの顔を見つめる。


「なぁ、ラク兄、コイツに名前をつけようぜ?ロイヤルペンギンって呼び続けるのもなんか変だろ?」


「それもそうだな。なんかいい案ある?」


 ラクはアカネの顔を見る。すると後ろからマナが声をかけた。


「Lea!レアってどう?ハワイ語で喜びって意味なんだ!ね?良いでしょ!」


 ウッキウキで提案するマナを見て、ラクは指をパチンと鳴らす。


「採用!このコはレアだ!レア、キミを元いた生息地に帰してあげよう!」


 ラクがレアに向かっていう。レアは首を横にブルブル降った後にラクを不思議そうな顔で見つめていた。アカネはなんだか、マナとラクが仲良くしているのが胸がソワソワして気に食わなかった。







「で、レアのふるさとって、どこなんだ?」


 アカネがレアを抱きかかえて歩くラクに聞く。


「オーストラリアのマッコリー島。ちょうどこの基地とオーストラリアの間にあるかな。とりあえず途中まで送ってあげようかな。」


「ラク兄、そんなこと出来るのか?」


「まぁね。何日かかかるだろうけど。」


「えっ、今からそんな壮大な冒険が始まんのか?!オレ、なんの準備もしてないぜ?!」


「ふふーん、アカネちゃん、お困りかな?私が協力してあげようか?」


 マナがぬるっとラクとアカネの会話の中に滑り込む。アカネはまた嫌そうな顔をする。


「協力してくれたら、なにか変わるの?」


「このコを帰す作業が今日中に終わる!」


 マナは胸を張ってそう言い切った。


「マジで?どうやって...」


「私の能力を使うんだ!私は能力で水と風の波を操ることが出来るの!それを使ったら泳ぐよりもずっと速く、ズパパッて移動できるんだよ!」


 マナは身振り手振りも使って能力を説明し、ドヤ顔をする。


「なら、その能力と僕の召喚した動物で護衛して連れていこうか」


 ラクは自身の腕の中にいるレアを見つめて、そう呟いた。









「ねぇ、なんで南極に来たの?」


 しばらく歩いていると、マナがそう訊いてきた。


「ん?あぁ、だからリリアの付添人で...」


「そうじゃなくて、そもそも早乙女リリアはなんで南極に来たのかって話!」


 質問の意図を理解したラクは、アカネの方をちらっと見る。アカネはラクの目を見つめて、


「いいだろ、全部言っても。だってこの鬱陶しいヤツに妨害するメリットもなにもないじゃん?」


 アカネがそう返答したのを見て、ラクはマナの質問の返答をした。


「じつは、僕達、真剣組って組織で、かっこよく言えば日本を守る仕事をしているんだ。それで、魔法使いの骨ってのが必要で、それを手に入れるために何曲まではるばる来たってわけ。」


 ラクの返答にマナは目をキラキラさせる。


「えっ!ラクくんとアカネちゃんって真剣組だったの?!あの日本で有名な...」


「ハワイで僕ら有名なの?」


「そりゃ、あの闇の軍ってのに目をつけられている組織、有名になるよ!」


 マナはラクのほうをキラキラした瞳で見つめながら興奮気味にそういった。


「ってことは、早乙女リリアと真剣組が狙ってるお宝ってのは...」


 ラクはピタリと足を止める。


「えっ、何その話。知らん。怖。」


 ラクのその答えをマナは予想していなかったらしく、目をパチパチさせた後、ラクに向かって口を開く。


「てっきり知ってるものだと思ってた!知らないの?」


「うん、知らない。」


「今、ネットで早乙女リリアと真剣組が伝説の財宝を求めて南極に向かったって話題になってるよ?」


「「は?!」」


 ラクとアカネの反応が被る。


「ちょ、どうゆうことだよ!もっと詳しくオレたちに説明しろ!」


 アカネはマナに向かってすこし声を荒げた。


「いや、早乙女リリアと真剣組が力を手に入れるために伝説の財宝を狙ってるっていうのが有名になってて...ホントだよ?もしかしたら、世界中からそのお宝を求めてここまでやって来る人たちがいるかもってくらい有名だよ?」


 マナのその言葉にラクとアカネは少し不安そうな顔になる。しかし、今はそれよりレアを家に帰すほうが先だ。








 一行は海までたどり着いた。


「ここから海を渡るのか...」


 アカネが少し怠そうに呟く。ラクもちょっと苦笑い。マナが能力の発動準備を開始する。


「よし、レア、海を超えたら故郷だよ。」


 ラクがそう言ってレアの頭を撫でようとした、その時だった。


『ばばばばばばばばばっ』っという音が響き渡るとともに、レアの姿が消えていた。いや、海の上をものすごい速度で走っていた。


「は?」「えっ?!」


 アカネとマナは驚きを隠せない。ラクも目をパチパチさせる。そして、


「ハハッは!そうか、レアは能力持ちの動物だったのか!だから一羽だけで南極も行けたわけだ!アイツのこと、ちょっと舐めてたな!」


 ラクの笑い声につられて、アカネも笑う。それにつられてマナも笑った。


「さっ、今度は僕達が帰ろうか。」


 ラクはそう言ってアカネと手をつなぎ、それに続くようにマナもついてきて、3人揃って基地に向かって歩き出した。







南極編のメインキャラはラクとアカネの二人です。次回から本格的に始まるので、お願いします!


この前、今後の展開とかを整理していたのですが、この樹冠祈願という物語はだいたい200話くらい続きそうですね。まだまだ序盤です!

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