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樹冠祈願  作者: レニペン
第3章〜それぞれの物語〜
45/48

45.『空気の魔法使い』

ノルトハーヴェン編、2話目!





 エリオットは、夢をよく見る。


 妻と、娘が手を降っている。楽しそうに、レンガ造りの豪邸の前で。エリオットはそっちに走っていくけど、いくら走っても近づけなくて、家が燃えて、妻が燃えて、娘が燃えて。


 そんな夢だ。夢だと分かっていても、苦しいものだ。毎回、そんな夢を見た後は、無意識に涙が流れる。








 如月は、夢をたまに見る。


 エリオットが、楽しそうに笑っている夢。自分の知らない女性と、それから少女を連れて。如月はそれを遠くから見ていた。幸せそうなエリオットを見るのが、嬉しくて。楽しくて。切なくて。


 そんな夢だ。夢じゃなければいいのに。毎回、そんな夢を見た後は、自分じゃなくてあの少女が生き残っていたほうがエリオットは幸せになれたんじゃないかと、思わずにはいられない。









 ハルキは、夢をもともとあまり見なかった。けど、最近は見る。


 真剣組が、世界を平和にする夢。カグヤを先頭に、アラタ、ラク、ミクと続き、トモヤもいて、ヒビキもいて。みんないて。もちろん、アカネとミナトもいて。みんなで笑顔で、表彰されるんだ。


 そんな夢だ。目が覚めると、あぁ、カグヤとトモヤはもういないんだ、ってなる。そんな夢を見た後は、もし自分がもっと強ければカグヤを助けられたんじゃないか、と考えずにはいられない。










 ハルキは、目覚めて、まず顔を洗う。服を着替え、鍵を持ち、ホテルの鍵を閉める。エレベーターに乗り、ホテルの一階に降り、ご飯を食べる。ご飯を食べた後はホテルマンの人に軽く会釈をした後にバス停まで歩き、バスに乗る。そのままグライナー交易商会まで行き、グライナー交易商会の会社内に入る。そして会社のごみ捨てや掃除、お茶を注いだりと、会社のお手伝い。エリオットに出会ったらハイタッチして、他の清掃員の人たちとも楽しく会話する。昼休憩はみんなと少し話した後、いちばん重要な仕事、如月とのお話をしに行く。それが終わったら後はまぁ、雑用をやる。エリオットと如月以外とは会話するのに翻訳機が必須だけど、結構楽しく、やりがいもある。あぁ、楽しい!


 いい会社だなー。みんな笑顔で。エリオットも優しいし、如月もかわいいし...


 あれ?なんか何か忘れてる…







「ちょっ!エリオット!いる?」


「うわっ!いきなりドアを開けるな!社長室に入る時はノックを...」


「あっ、わりぃ...じゃなくて!俺はこの会社に雑用として雇ってもらうために来たんじゃなくて!」


 エリオットは机にコーヒーを置いてハルキの方を向く。


「魔法使いの遺骨探し、だろ?今、ウチの社員が調査中だ。」


「本当か?ならいいんだけど...」


「そう焦るな。まだ1週間しかたっていない。そんなに早く見つかるようだったらとうに誰かが見つけているさ。」


 それもそうか、と思いながらハルキは社長室のゴミ箱のゴミを回収して社長室の外に出た。






 ゴミ捨て場に行き、ゴミをぽいっと投げていた時、ハルキは会社から如月が出てくるのを見た。話しかけようとしたが、如月が何処に行こうとしているのか気になったので、つけてみることにした。


 如月は会社を出て、そのまま歩いてビル街を通り抜けていく。ハルキはフワフワと能力を使って空を飛びながら追跡する。如月は角を曲がり、一つのビルに入っていった。ハルキも着陸してその中に入っていく。


 そのビルは、とても静かなビルだった。周りのビルより低く、5階建て。何のためのビルなのか、分からないが、すこし汚れており、アレていることから今は誰も使っていないビルなのだろう。


 ハルキは音を立てずに階段を登っていった。上の階から話し声が聞こえる。


「...本当に、それをしたら...」


「あぁ。君の望みは叶うさ。」


 如月の声と、知らない男の声。


「じゃぁ...」


 ハルキがどの部屋から声がしているのか突き止め、ドアに耳を当てた時、いきなりスマホの着信音がなった。


「ちょっ!」


「誰かいるの?!」


 バンッと言う音とともにドアが開けられる。ハルキはドアの真ん前に立っていたのでしっかりと顔にドアがぶつかり、2mほど後ろに吹っ飛んだ。


「痛っ!」


「あっ、ハルキ...」


「ドアを開ける時はノックしないとってエリオットも言ってたぞ!じゃなくて!...如月、これはどういうこと?ここで、誰と話していたんだ?」


「そ、それは...」


 ハルキはすっと立ち上がり、部屋の中に突撃する。壁、天井、地面、窓。見渡すが、誰もいない。如月だけがいた。


「だれも...いない?」


「ハルキ、着信音鳴ってるけど...」


 如月に指摘され、ハルキは思い出したかのようにスマホを取り出し、電話をとる。相手はエリオットだった。


「エリオット、今、」

「見つかったぞ!ハルキ!」


 エリオットはいつもより興奮気味だった。


「ノルトハーヴェンで、見つかったんだ!遺跡が!」


「遺跡が?そんなバカな。ここは人工島、大西洋のど真ん中だぞ?」


「そうなんだ、そのはずなんだ!だけどな、見つかったんだ!『下』にな!」


「下?」


「あぁ!人工島の下に!ノルトハーヴェンは、遺跡の上に建てられた場所だったんだ!」


 信じられない。まさか。というか、そんなものをエリオットの部下は見つけてきたのか?前職トレジャーハンターなのか?


「...どうやって見つけたん?」


「研究機関が見つけた瞬間に情報を買い取って、遺跡の調査権も買い取った!今から発掘隊と一緒に発掘するぞ!」


 エリオットはずっと興奮気味だった。とにかく、今はそっちが優先だ。悪いけど、如月は後回しだ。


「如月、ちょっと急用ができたから行かないと。後で話を聞かせてくれ。」


 そう言ってハルキは廃ビルから飛び出していった。









 グライナー交易商会に戻るとエリオットはすでに待っていた。エリオットとハルキは合流し、今回はエリオットの車に乗って目的地へ向かう。ノルトハーヴェンの町外れ、植林されて森みたいに鳴っている場所にそこはあった。数人の探窟家のような人たちが森の中にいた。森には大きな穴が開けられており、その穴のさきに確かに石造りの遺跡のようなものがあった。


「まだ誰も入っていないはずだ。行ってみよう。」


 このためにエリオットはどれだけの金を払ったのだろうか。遺跡の中に、発掘隊数名と混ざってハルキとエリオットも入っていった。おそらく、エリオットはこういった冒険が純粋に好きなんだろう。










 遺跡の中は暗かった。懐中電灯が頼りだ。その遺跡の壁には様々な装飾が施されていた。天使のような絵、風になびかれている草木の絵、空を飛ぶ鳥の絵。なんだか、『風』に関係する絵が多く描かれている気がした。『風』を操る能力を持つハルキはなんだか親近感が湧いた。


 遺跡には様々な部屋があった。その部屋には古い生活用品がたくさんおいてあった。どれも保存状態が良い。大体1200年ほど前の道具らしい。探窟家の人が言ってた。


 神木柊は確か、水、生物、空気、陰の魔法使いの遺骨はまだ吸収していない。となると、装飾的にここは空気の魔法使いの遺跡か...


「...この部屋は豪華だぞ!」


 探窟家の一人がそう叫んだ。エリオットとハルキもその部屋に入っていく。二人は息を呑んだ。宝石が埋められた天井、金でできた家具、滑らかな石で出来た壁。周りを圧倒するような豪華さ。そして、部屋の真ん中に棺桶らしいものが置いてあった。


「これは...綺麗だ...」


 エリオットも言葉を失っていた。


 その時だった。


バタッ!


 何かが倒れる音がした。その音はさらに続いていく。バタッ!バタッ!様々なところから。ハルキとエリオットは何がなんだか分からなかった。


 というのも、音の正体は人が倒れる音だったからだ。探窟家が次々と倒れていく。


「は?」


 後ろの方からどんどん、次々と倒れていく。異常に気づいたハルキは両手を構え、エリオットの前に立つ。


 ついに、立っている人間はハルキとエリオットだけになった。


「っ!これはどういうことだ?!」


 ハルキは慌てて倒れた隊員のそばでしゃがむ。見た感じ、寝ているだけのようだ。


「エリオット、俺から離れないで。おそらく、このみんな寝ちゃう原因は空気。俺が今、風でバリアしているから、俺とエリオットは無事だっただけ。俺から離れすぎると多分、エリオットも眠る。」


 ハルキが説明を終えた時、後ろから知らない声がした。


「へー!アンタ、なかなかやるじゃない!」


 振り向くと、キラキラと、白いローブを着た、まるで天使のような女性が後ろに立っていた。体は少し透けている。


「お前が...空気の魔法使い?!」


「いかにも!私はカナリア・フェルメール!偉大な空気の魔法使いだ!今は霊体だが、力は衰えていない!」


 カナリアは自慢げにハルキとエリオットに言った。


「そうね、この空気に異常性があると見抜いたのは素晴らしいわ!あなた、才能あるわね!」


 カナリアは上から目線だった。


「あの、いきなりで悪いんだけど、遺骨もらって良い?」


 ハルキはカナリアに質問した。カナリアは一瞬驚いた顔をした後、怒りがこもった顔に変わった。


「貴様、神木柊の手先か!」













「あなたも、いつかわかるわ。」


 そういったセレーネの顔をなんとなく覚えている。あの時も、今も、彼女の言っている言葉の意味は分からない。自分の知らない知識だ。だけど、知識の魔法使いでもないカナリアにとってそんなこと、興味もなかった。今もない。


 ただ、自慢したかった。私はこんなにも素晴らしい魔法使いなのだと。


 ただ、見せびらかしたかった。みんなに褒めてほしかった。いわば、承認要求の塊だ。


 魔法使いという存在は、一人を除いてみんなそうだった。自分は周りよりこんなにすごい!自分はこんな事もできる!それを他の魔法使いに見せびらかして優越感に浸るのが魔法使いたちの趣味だった。


 その結果、『知能の魔法使い』、アステリオス・クロノスが作ったのが世界樹であり、その副産物が神木柊だった。それが魔法使いたちの終わりの始まりだった。






次回からノルトハーヴェン編本番!今回は前回より結構短いです。次回も多分そんな長くないです。次の次がガチ本番かな。

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