第117話取引しますか?
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「反応を見るに、俺の予想は当たってそうだな。それで?【守護者】と分かった俺を今の内に始末しよう――ってそんな魂胆でもないんだろう?敵の背後を取ったなら普通は奇襲でも仕掛ける。なのに、そうはしなかった。となればそうだな、俺に何か聞きたいことでもあるのかな?」
「……それ以上を望んでいる、とそう言ったら?」
「内容によるかな。俺は自分で言うのもなんだけど、【守護者】の中だと結構優しいからね。ちょっとした情報くらいまでなら、ぶっちゃけ無料で渡してあげてもいい。ただ、それよりも多くとなると相応の対価を――ん?」
ビャクヤが右手に【破炎】の白い炎を灯そうとし、そこで気付いた。
「炎が……いや、それ以前に体が動かない。……ぁあ、そうか。確かそれが君の能力だったっけ。攻撃行動が制限されるのか、厄介だな。けど」
「【反転】の能力を使えば、想像通りその制限は私の方に反転して発動する。ただ、やめておいた方が良い。それを実行した瞬間、お前は私の能力で死ぬ」
「っ!?」
敵に凍てついた眼差しを送る響の全身から淡い白色のオーラが漏れ出始める。
自身の炎にも似たそのオーラを前に、ビャクヤは僅かに驚くような表情を見せた。
当然だろう。
静かに、しかしそれは明確に、神の【守護者】たる青年を死に追い詰める予感を宿したもの。だが、恐らく彼にとって一番の問題は。自分の手の内が知られているというその事実にこそあったはずだ。
「……未来の俺、ちょっと喋り過ぎじゃないか?【反転】まで教えちゃ駄目でしょう」
【反転】。ビャクヤが持つもう一つの、あらゆるモノを破壊する【破炎】とは全く別の力。文字通り、あらゆる事象を反転させる能力だ。
ビャクヤはこれを【破炎】に使い、万物を壊す炎から万物を復元する炎へ逆転させることで響の致命の傷を癒した。
いや、彼のとある目的のため生かされたというべきか。
「分かったよ。……はぁ、それで、何の用があるわけさ」
ビャクヤは観念したように肩を落としてこちらを見た。
ここまでは計画通りだ。
未来を「経験」する。見るのとは違う、目で肌で耳で全身で感じるのだ。そのストレスを、痛みを、ものの数分で味わい尽くした精神と肉体への負荷は凄まじいものだった。
眩暈、吐き気、凄まじい頭痛。
立ってなど、もちろんいられなかった。けれど、響は何もしないまま蹲っていたのではない。
知り得た情報から己が成すべきことのリストの作成。
そのリストに真っ先に入ったのが今回のビャクヤとの接触だった。
とはいえ、まさか影でクロノと通じていて、こんなにも早く計画を実行しなければならないとは露ほども考えなかったが。
構わない。この件はこちらとしても早く片付いてくれる方が助かる。
「……」
首筋を伝う汗。疲労とダメージが未だ癒えない体がふらつきかけ、響はそれが表に出ないよう深く構えるふりをした。
――今、倒れるわけにはいかない。耐えろ、私の体……
「おっと、もしかして疑われてる?」
「アンタのことはどれだけ疑っても足りないくらいだからね。けど、要求は伝える。私が望むのは、トゥラヌアを殺す手助けだ。敵の弱点、目的。何でもいい、情報を渡して欲しい」
「仲間を裏切れって?流石にそれは簡単に飲めないけれど」
「本物の話をしているんじゃない、私が殺したいのは偽物の方だ。それはアンタも同じはずだろ?」
響の問いに、ビャクヤは一瞬意外そうな顔をするが、すぐに納得したような声で答えた。
「そうか、そこまで教えたのか未来の俺は。てことは、君は未来で俺の協力者だった感じかな。……信じられないけど、まぁいい。あの偽物を殺してくれるというのなら、こっちとしても願ったりだ。決まりだ、コマド・ヒビキ。今回に限って、俺は君に手を貸そうじゃないか」
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