第115話闇夜に会いますか?
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この日、運命の歯車は静かに、しかし確実に狂いを見せ始めた。
クロノはそれ以上、三浦袈刃音を止めようとはしなかった。
彼女は時空神。力の一部を取り戻した今、袈刃音や響の未来を見るなど造作もない。
袈刃音のしたいことも理解出来たはずだ。
その意味するところも分かっているだろう。
だから止めなかった。
陽は沈み切り、月の頼りない光だけが淡く照らす夜。
児童養護施設「さくらい」にもそれは平等に訪れていた。
門の外は先程までの騒動が嘘のように静かで何もない。
不死者の血も肉も、袈刃音の【想焔】が燃やし尽くしてしまった。
掃除の手間が省けたのはありがたい。連日の籠城戦で誰も彼もが疲弊していた。
未来に待つ悲劇を思えば気は抜けないが、今しばらくは神の遊戯のことなぞ忘れて久々に訪れた平穏を味わっていたかった。
「行っちゃったね、彼。どうするのさ、ここは大切な拠点なんだろ?なのに今はそれを守る人間が一人もいない。俺が今暴れたらどうなるんだろう――ねぇ、クロノ様」
「……其方は、妾を苛立たせる能力でも遊戯神から与えられておるのか?【破炎】の小童」
敷地の外へ一歩出たところでクロノは、いつの間にか門に背を預けるようにして立っていた青年を横目にそう言葉を返した。
「やめてよ、今はイチジョウ・ビャクヤって名前で通ってるんだから。もし誰かに聞かれていたら貴女と俺の関係を疑われる」
「ならば、夕飯くらいは己で調達すれば良かろう」
「その辺の店から盗んで来ると無茶苦茶に怒る娘を連れているんだ、そうもいかないよ。それにテラの力がこれ以上及ばないよう手助けしたんだから、ちょっとくらい報酬を貰っても罰は当たらないだろ?」
今回の不死者共の襲撃はテラが仕組んだ罠。
そうでなければ不自然過ぎる程の物量だった。
そして、それにしては容易く事態が収まったことも、その理由もクロノは大方の事情を察していた。
遊戯神の第一【守護者】。やはり正面から戦えば今の袈刃音達には勝ち目がない、最強の共犯者だ。
手に下げた食料入りのビニール袋をビャクヤに渡すと、彼はフッと見透かしたように笑みを浮かべた。
「それで、何があったの?カバネ君、あんなにげっそりしちゃって。動かない方が良いのに、何で行かせたのかなクロノ様は」
「何、未来を少しな。それで、事情が変わった」
「…………へぇ、そりゃ大変だ。ふふん。心配だし、様子を見に行って来よっと。――ぁあ、そうだ。ありがとねクロノ様。これ、助かったよ」
それじゃ、と言い残しビャクヤは去って行った。
クロノは止めなかった。
彼ならば放っておいても問題はない。
それよりも、今は未来視で消耗した響の看病が優先だ。満実の具合も見ておかなければならない。
「全く、世話の焼ける子らばかりじゃの。……響よ、体調は――響?あ奴、どこに」
しかし、寝室で休んでいるはずの少女の姿は既にそこになかった。
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