第114話3rd STAGE START
【セーブデータからやり直しますか?】
【→はい/いいえ】
【本当に?】
【→はい/いいえ】
【本当の本当に?】
【→はい/いいえ】
【そう……フッ、本当に変わらないね。君は】
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――この結末の理由をどこから説明しよう。
死力は、きっと尽くした。
傷を負おうとも、悲しみが心を圧し潰そうとも、抗って、抗って、抗って……。
そうして身も心もすり潰れるまで戦ったのだから。
ならば何か致命的なミスをしたのか?いいや違う。問われれば、袈刃音も響もそれには揃って首を横に振るだろう。
与えられた僅かな時間の中で下した選択には、確かな「守る意思」があった。
そのための判断が、行動が、間違っていたとは思わない。
ただ、それだけでは到底覆せない力の差があった。
その上で練られた策略が敵にはあった。
まさか、ここまでとは想像もしなかったが。
『今、何と申した小娘?妾の聞き間違いでなければ、其方――』
『うん、見せて欲しいんだ。私と袈刃音に少し先の未来を。クロノさん、基地システムがあれば少し神の力を使えるようになるんでしょ?なら、できるよね?』
時は七月十八日――『アンデッド・ゲーム』開始から数えて五日目の夕刻にまで遡る。
ゾンビに噛まれた母屋満実が一命を取り留め、ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。
響は瑠璃に避難した「さくらい」の全員の安否を確認するよう頼んだ。
当然だった。こちらも拠点内の状況を完全に把握しているわけではない。
ただの負傷者……ならばいいが、満実のようにゾンビに噛み付かれた者がいたっておかしくはなかった。
それに、数分前までゾンビの軍勢の襲撃に遭っていたのだ。
まだ何体か敷地内を彷徨っているかもしれない。
当分は警戒を怠るべきではなかった。
とはいえ、流石に一人は危険。
袈刃音も一緒について行こうとした。
が、妙なことにそれを響に止められた。
普段ならば有り得ないことである。何よりも仲間や家族の無事を優先させる彼女が、こんな状況で瑠璃を一人で行動させる筈がない。
疑問に思いつつも、袈刃音はその場に残った。そうして、瑠璃の足音が遠ざかっていき、完全に消えたそのすぐ後。響がクロノにそんな頼み事をした。
そう、それこそがことの発端だった。
『敷地内に不審な音は聞こえない。【守護者】の目論見も何とか潰したから、すぐにまたここが襲われる心配は少ない。もちろん気は抜けないけど、時間がある今の内なら問題ないでしょ?』
『なれば、少し休息を挟んでからにせよ。其方等も相当に疲れておるではないか。そんな状態で――』
『いや、今じゃないとダメなんだ』
その言葉にクロノは眉を歪めた。
座した響は自らの腕の中で眠る満実に目をやり、やや苦い表情を浮かべながら静かに言葉を続けた。
『……今回のことで、一つハッキリしたからね。敵は私達の動きを把握している、それも相当正確に。けど、本当に問題なのはあのテラって【守護者】の力だ。使われればそれまでの盤面が一気にひっくり返される、それがいつ起きてもおかしくない。しかも、具体的に何をして来るのかも分からないなんて……。これじゃあ、やってることは後出しジャンケンとほとんど変わらない。――負け確のゲームだ』
袈刃音は、否、クロノすらもそれを否定出来なかった。
響は確信したような目で二人を見る。
『勝つ方法はシンプルだよ。敵に何もさせない。手出しも、反撃もさせないよう速攻で勝負をつける。そのために今から動いて先手を打たなきゃならない』
そう言い切った響を前に、クロノは眉間に浅い皺を作り逡巡した。
そうして、大きく溜息を溢す。
『妾としてはあまり見るべきではないと思うがの……。未来視とは言うがこれはその実、其方らに訪れる未来に干渉し、それを一足先に脳裏へ「経験」させる行いじゃ。それも凄まじい速度でなぁ。下手をすれば心身ともに無事ではすまぬ。……それでも構わぬというのか?』
響は、否――彼女だけでなく袈刃音も、リスクを承知で未来を覗き見ることを選んだ。
少年も気付いていたのだ。平凡な策など敵に通用しない。
通常ではありえない特別な攻略法こそ、現状の自分たちには必要なのだと。
そのためならば多少のリスクには目を瞑ろう。
……今になって、ようやくそれが生半可な覚悟だったと知った。
「――――――――――…………そん、な」
気が付けば涙が頬を伝っていた。
先程まで体を濡らしていた雨水の感覚は既になく、代わりに、夏の夕暮れ時の汗ばむような暑さが纏わりついている。
にも関わらず、袈刃音の肉体は内側から底冷えしていた。
それは悪夢でも見ていたようで、きっと今見渡せば失ったはずの何もかもがそこにはあって、だが紛れもなく現実だった。
「……ッ」
己が焔に身を焼かれ死んだのも。
目の前で恋を殺されたのも、仲間や家族が殺されたのも、そして旭が自分の腕の中で再び命の灯を散らしたのも……何もかもが脳裏に焼き付いて離れない。離れてくれない。
「ぅ……く…………ッ」
蹲ったまま、少年は零れ落ちる涙も止められずにいた。
立ち上がらなければならないのに闘志が湧かない。
失った悲しみがあった。
敵への憎しみもこの胸に宿っている。
そのはずなのに、胸に空いた虚無感の穴からその全てが湧き出しては抜け落ちるを繰り返して動けない。
「……行か、なきゃ」
それでも、足を進めなければならなかった。
このまま縮こまっていては、今見た記憶が本当に現実のものとなってしまう。
だから、無理矢理に身を起こした。
「無理をするでない、袈刃音!其方――」
「大丈夫だ、クロノ。大、丈夫。こんな、こんな未来が待ってるって知ったら……動ける奴が動かなきゃ。俺が、やらなきゃ」
心配するクロノの言葉を遮り、袈刃音は言った。
「……うッ。……く、ぁッ…………」
響はまだ立ち上がれそうな状態ではなさそうだった。
彼女であれば、きっとすぐに立ち直るはずだ。そうして、神への対抗策を思いついてくれるはずだ。
袈刃音にはそれまでに調べておかなければならないことができた。
「悪い、ちょっと行って来る」
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《完了》
【次の話へ進みますか?】
【→はい/いいえ】




