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「いいなぁー、鈴香ちゃんは資金もらえて。」



「メイクという能力には元手が必要みたいだからな。必要経費だろう。」



「任務用の資金だから、作れるものは限られるけど。それでももらえないよりまし。」



「嬉しそうだね。」



翼は、鈴香が任務に積極的ではなさそうなのに、任務用の資金を嬉しがるのが少し不思議だった。



「まぁね、ただでさえお金がかかる趣味なんだから。それに任務のために作った子でも別に任務以外でも使ってあげれるし。」



「使う?どういうことだ?」



まさか動物を一斉に動かして………と誠実は少し想像した。



「アクセサリーは普通に普段使いできるし、ぬいぐるみとかあみぐるみはストップにしてカバンに付けたりできるよ?」



「ほぇ!アクセサリーも作るんですかー?すごいですね~。どんなの作るんですかー?」



女子2人がいわゆる女子トークに入ったところで誠実は翼に状況を尋ねた。



「で、どうなんだ?」



「それがこの森結構広くってさぁー。でも、さっき1人見つけた。」




そう彼らは既に初任務の森の中にいた。


どうやら、森が広いために翼のサーチでも調査に時間がかかってしまっていたようである。



「そんで、そいつを尾行してたんだけど……思ってたより厄介な任務になるかも。」



「どういうことだ?」



「森の……かなり奥の、それこそ誰も見つけれないようなところに……ボロい建物がある。そこで、うーん……たぶんなんかの組織かな?そいつらが……」



翼は見ることに集中しているようで、話が途切れ途切れであった。



「ちょっと面倒なことになりそうだね。」



鈴香は翼の集中を途切らせないように小声で囁いた。



「そうだな。おそらく上もこんなに厄介な任務になるとは予想していなかっただろう。」



「たぶん珍しい動物がいるとか違法な狩りとかだと思ってたんじゃないかな?」



「だろうな。」



「まったく、私たちを舐め腐ってますよぉー。いくら初任務とはいえそんなの一級能力者にさせる任務じゃありませんよぉー。」



桃は表情豊かで言葉に遠慮がない。



「まぁ、問題児ばかりだからな。簡単な実戦で様子見ってところだろう。」






翼がゆっくりと目を開けた。



「どうだった?」



さすがの鈴香も今回は無関心でいるわけにはいかないらしい。



「俺の予測だと、どこかの秘密組織の隠れ本部ってとこかな。実験室があって研究者らしい連中もいて、荒事担当らしい連中もいて、あとは幹部とかかな。」



「そうか。それなら間違いないな。こんな森の奥の見つかりにくいところに本部を構えるんだ。よっぽど後ろ暗いことでもしているんだろう。」



「どうします~?乗り込みますか~?」



「バカ言え、今回はあくまで調査の任務だ。勝手に乗り込むわけにはいかない。」



「えー!じゃあ、もう帰るんですかぁ~?」



桃はとても不満そうである。



「ふふふ、森は嫌なんじゃなかったの?」



「翼くん、その話根に持たないでくださいよぉ。何にもしないで帰るのは嫌なんですぅ~!」



「あはは、ごめんごめん。」



「まぁ、このまま帰って初任務完了はさすがにないね。」



鈴香が呟いた。



「おまえも調査だけじゃ不満か?」



「このまま帰ったら初任務は失敗同然だと思われるよ?上はともかく学園の生徒は絶対そう思う。」



「おまえはそんなの気にしないと思ったが。」



「私だけなら気にしないけどね。正直早く帰れるなら早く帰るし。」



「……そうか。」



誠実は少し口元に笑みを浮かべた。


つまり、鈴香はこの隊のこれからを考えてくれているのだ。

桃にも翼にもおそらくそういう気持ちがあるのだろう。


側から見ると、個人主義のやつらばかりでバラバラな隊になるだろうと誰もがそう思うだろう。

しかし、こいつらはわかりにくいが、ちゃんとこの隊……いや、他のやつらのことも考えているのだ。




「本当に不器用なやつらだな。ああ、でも、俺も人のことは言えないか。」と思い、誠実はつい口元が緩んだのである。





「えーと、そんなみんなに朗報だよ。いや、全然いい話じゃないんだけどね。」



「なんだ?」



「さっき地下牢らしき場所を見つけたんだけど、そこに捕まっていた人が……俺の記憶に間違いがなければ……」






煮え切らない翼を桃が急かした。



「誰なんですぅ?」





なんとも言えない表情で翼は続ける。







「……この国の第二王子だ。」








その一言にその場は静まり返った。


最初に状況を呑み込んで冷静に言葉を発したのはやはり誠実であった。



「……第二王子が誘拐されたなんて話聞いてないぞ。」



「うん。でも、顔も服装もそうとしか思えなくて。」



「……つまり、どういうことですかぁ?」



「……おそらく……あまり考えたくないが、まだ第二王子の失踪に誰も気がついてないんだろう。」



「王子なのにですかぁ?」



王子の失踪に誰も気がつかないなんてあり得ない話だ。


もし本当に失踪したなら、公にはされなくても一級能力者を総動員するくらいはするはずだ。

ここ最近そんな動きがあるなんて話は全く聞かない。

今回の任務もそういう警戒は全くしていなかった。







「まぁ、でも、これで決定だね。乗り込もっか。」



鈴香はたいして表情を変えずに言った。



「買い物行こっかみたいなノリだねぇ。」



こうなると翼も薄々思っていたが、思っていたよりも軽かった。



「だって、王子様をいつまでも牢屋に入れておくわけにはいかないでしょ?それに…」



「俺たち15番隊がこの救出作戦に最適ってことだな。やるぞ。」



一度帰れば、この任務は他のベテランの隊に渡るだろう。

そうなれば、引き続きに時間がかかりすぎる。

他の隊だと、やつらのアジトを探すのだって一苦労だし、救出しようにも王子の正確な居場所を把握できない。



「そうこなくっちゃですぅ。翼くんは反対ですかぁ?」



「いや、こうなると思ってたからね。」



4人ともどことなく楽しそうである。

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