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8

その日は学校中彼らの話題で持ち切りだった。

実際は彼らが休んでいた間も噂の的であったが、彼らはそれを知らない。


無理もない。

彼らは前代未聞の方法で試験を突破しただけでなく、誠実以外はほぼ無名であったのに、1度で全員合格したのである。

むしろ、翼、桃、鈴香のことを知っている人間はなんであんな変人がと思っているようである。



「うわー、すっごく久しぶりの気がする。みんな元気してたぁ?」



翼が教室に入ると派手めの女子から声援(?)が飛ばされた。



「うっわぁー!翼くんだぁ!」



「今日から復帰って本当だったんだぁ!」



「ね!ね!一級能力者って本当!?」



「嘘でしょ!あの翼が!」



翼はにこにこと相槌をうって適当に流しているようだ。



他の人も誠実たちに聞きたいことが山ほどあったが、それほど仲が良くないため話し掛ける度胸はなかった。


女子は翼にいろいろと詳しく聞こうとしたが、キーンコーンカーンコーンと学生にはお馴染みのチャイムが鳴り響いた。



「はぁー、おまえらさっさと席に着けー。早く終わらせるぞ。めんどくせー。」



やる気のない担任が入ってきて、いつも通りに簡潔に連絡事項を述べたが、最後の一言だけは少し違った。



「あー、忘れるところだった。桐生、長瀬、八代、野坂、おまえら早速任務だ。放課後、俺の部屋に来い。」



教室が再びざわついた。


特殊任務が与えられるということは、4人は本当に一級能力者になったということだ。






『昼休みに中庭の桜の木の下で集合。』





誠実が他の3人に送った簡潔すぎるメールの文である。


4人はチームを組んだ以上連絡の手段が必要になるだろうと考え、理事長室から出た後アドレス交換をした。


まさかこんなに早く使うことになるとは誠実自身も思っていなかった。





彼らにとって長い午前が終わって、お昼休みになった。



「はぁー、つかれたぁー。」



「全くだ。」



休み時間のたびに質問攻めにあっていた誠実と翼はもう精神的にくたくたなようだ。



「私はなんか友達に心配されましたぁー。『巻き込まれたんじゃないか?』とかー、『女たらしと堅物にいじめられたら言うんだよ!』とかー。」



「おまえの友人はおまえをなんだと思っているんだ。あと、こいつと一緒にするな。」



「まぁまぁ。心配してくれるいい友達で良かったねぇ。」



「はい~。いい子たちなんですよ~。」



「私は何も聞かれなかったけどなぁ。どうしてだろ?」



男子は普段話したことがない相手でも無遠慮に話しかけられる人が多いようだが、女子はそうもいかないようである。



「あはは。とりあえず委員長は質問攻めから逃げるためだけに俺たちを呼び出したわけじゃないんでしょ?」



「ああ。俺たちはチームを組むことになった。そして、今日が初任務だ。」



「そうですねぇー。」



「昨日今日会ったばかりの俺たちが一級能力者向けの任務に就くんだ。少しでも互いのことを知れる場を作るべきだと思ってな。」



「真面目だね。でも、そういうのは苦手なタイプだと思ってた。」



「……おまえに言われたくない。」



誠実も鈴香も一人でいることが多いタイプだった。



「初任務か。どんな任務だろうね?」



「まぁ、初回だからそんなに難易度は高くないと思うぞ。」



「そういえばー、鈴香ちゃんは急な任務であのリュックとポーチないんじゃないですかー?」



鈴香の能力はいわゆる"材料"がなくては使えない。



「あー、大丈夫。なるべく持ち歩くようにしてるから。」



「え、そうなんですかー?重くないんですかー?」



「まぁ、任務云々もあるけど、持ち歩けばいつでも作れるでしょ?」



鈴香は"作る"話をしている時の表情が一番生き生きとしていると誠実は感じた。



キーンコーンカーン。



「あ、予鈴だ。」



「おまえら早く食べろ。教室戻るぞ。」



翼と誠実はもう食べ終わっていたが、桃と鈴香はまだであった。


鈴香は作るときはあんなにテキパキと手を動かしているのに他のこととなるとそうでもないらしいなと誠実は2人が必死にお弁当を口にかき込むのを見ていた。







放課後、彼らは言われた通りに担任の部屋を訪れた。



「おまえらの今回の認識は西にある○○○森の調査だ。」



「えー!また森ですかぁー!?」



桃は大変不満そうである。



「おまえらの能力を考えると、適任なんだよ。」



「んー、つまり俺のせいってことか。ごめんね、桃ちゃん。」



翼は申し訳なさそうに笑って桃を見た。

翼ほど調査系の任務に向いている能力者はいない。



「別に翼くんのせいってわけじゃ……。大体なんでまた森の調査なんかするんですかー?」



桃は翼を責めるつもりはなかったので、気まずくなって話題を逸らした。



「あの森でなんか不穏な動きがあるらしい。普段は人の出入りがほとんどない森らしいんだが、最近は頻繁に出入りしている連中がいるらしい。その原因を突き止めろって任務だ。」



「そういうことなら、俺たちが適任でしょう。サーチは調査に最適ですし、シングがあればその連中と遭遇したとき眠らせて穏便に事を運べる。いざとなれば、俺とこいつのメイクで戦闘もなんとかなる。」



「能力だけでいうとおまえらほどバランスが取れてて、臨機応変に対応できる隊はないな。」



「先生、『能力だけでいうと』って本音が漏れてますよ。」



翼が冷静に突っ込む。しかし、翼も否定はしない。


担任は目を逸らして話題を変える。



「あー、あと、八代、おまえの資金だ。」



担任は鈴香に封筒を渡した。



「今回は初回費ってことでとりあえずこんだけ渡しとくが、今度からは領収書の金額分の支払いってことになるから。」



鈴香は封筒をもらったばかりのときは無表情であったが、徐々ににやけ顏になってきた。



「ありがとうございます。」




宝物を握りしめるように鈴香は封筒を両手で抱えていた。

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